これっぽちの小銭の為に
「彼女はイカした女。ファストフード店で買ったハンバーガーを歩きながら頬張る。ヒールの音は聞こえてこない。彼女はスニーカー派だから。皮ジャンの立てた襟が排気ガスから彼女の首元を守る。そのおかげもあって彼女のほっそりとした白い首は街行くどのギャルたちよりも美しい。そしてその美しさはデニム地のホットパンツから伸びる脚も同じ。だから街行く雄どもは皆彼女のウォーキング姿に見惚れてしまう。その視線を浴びて彼女はますます輝きを放つ。
彼女はハンバーガーを食べ終えると包みをくしゃくしゃに丸めてポイッ、と後ろへ放る。それを餌だと勘違いした野良がハァハァ涎を垂らしながら咥えて持って行く。だがその野良は道路を横断しようとしたところで車に撥ねられてしまった。突然のことに騒然とする有象無象をものともせず、彼女は黙々と歩き続ける。その姿はさならがらオシャレの本場ミラノでランウェイを歩くトップモデル。だからそのカッコ良さには同性さえも息を呑む。
彼女は喉が渇いたらしく途中その絵になる歩みを止め自販機を物色する。とにかく潤いを最短で実感したい時には炭酸だと、彼女は経験則から知っていた。彼女はココシャネルの財布を取り出しそこから百二十円取り出すと、コインを一枚一枚投入口へと運び入れた。狙うはちょうど目線の高さにあった世界で一番売れてる例の炭酸飲料。
しかし早く喉を潤したいという焦りからか、彼女は十円玉を投入仕損じてしまう。
チャリン―と音を立て地面へと落下した十円玉。
そのままアスファルトの上を転がっていく十円玉を彼女は前屈みの状態で追っかける。そうして彼女は無事十円玉を手の内に取り戻す。彼女は安堵からほっ、と息を漏らす。続いてそんな彼女の横を通り過ぎ様男がふっ、と笑みをこぼす。
男は前屈みとなった彼女の空いた胸元から、見事ブラチラを拝むことに成功していたのであった」




