ナメクジのナメちゃん
☆☆☆
ご機嫌よう。ナメクジのナメちゃんです。
まんまなネーミングセンスはともかくとして、女子高生がナメクジ飼うってどうなんだろう?
当たり前に指に乗せられて連れ帰られた彼女の自室で、空っぽの水槽に放り込まれて3ヶ月。当初は水槽って……とも思いましたが、今では感謝しています。
感謝したのはつい先日の恐怖の出来事に由来する。水槽に突進してきた黒いイキモノがおりましたよ。
ゴの付くイキモノです。ヤツは飛ぶんですよ。素早いんですよ。ギューンと飛んできた黒いのがパシッと水槽の硝子の壁に張り付いて、カサカサカサッと這いずり回った。つうか駆け回った。ヒイイイィ!!!!!
多分。私に声帯がアレバ大絶叫間違いナシですね。超怖かった。ほら、わたしナメクジだから。逃げられないの。トロいの。
しかも、わたし、ナメクジだからゴッキーも巨大化して見えるって云うね。もうホラーだから。有り得ないから。
もしも、私のオウチが水槽ではなく虫カゴだったらどうなってたと思います?それはモハヤホラー以前の問題だよね。
ヤツは水槽には入ってこれなかったんだ。水槽の蓋がキッチリ閉まってて万歳三唱。しかしタッパーみたいに封印された水槽は私の知る水槽とは違う。もしかしたら巨大なタッパーかも知れない。水槽でナメクジ飼う女子高生もどうかと思うけど、タッパーでナメクジ飼うのもアレだよね。
まあ、そんな恐怖の出来事に遭遇しつつも、概ね平和に生きてます。
何て云うか、慣れって怖いよね。飼い主のご両親。最初は微妙な顔をしていたけど、最近はナメちゃんナメちゃんと可愛がってくれます。
食卓にナメクジが同席するのってどうなの?同席とは云っても、椅子に座れる筈も無いから、テーブルに直接乗せられてるんだけど。
非常食としても微妙なナメクジを食卓に乗せるのは、当たり前だけど食べる為では無いよ?一緒にご飯食べる為なんだよね。
食器こそ大皿一枚に盛られてるけど、メニュー的には特に変わらない。汁物は流石に分けてあるし、やっぱり背の低い食器にしてくれてるけど、本当に同じメニューなんだよね。
ナメクジの扱いとして、どうなんだろう?
つうか、わたし……本当にナメクジなのかな?
でも自分の目で見下ろす限りはナメクジっぽい。ちょっと銀色っぽい色合いが微妙と云えば微妙だけど、歩いた後には濡れた様な跡が付くし、キラキラツヤツヤ濡れた感じの銀色っぽい体も、ナメクジと云えばナメクジだろう。
いつも私を指に乗せて移動する飼い主たる女子高生が鏡に向かう時には、わたしも鏡の前に置かれる訳で……全身を鏡に写しても、やっぱりナメクジっぽいと思うんだ。
ただ、ナメクジだ……と断定できず、っぽい、と云っちゃう辺りが我乍ら情けないけど。
いや、だってさあ。
ナメクジって、こんなにモノ食べないと思うんだよね。
物思いに耽りつつも、ペロリと食べきった夕食一人前。大きなお皿が巨人のお母さんによって取り除かれて、デザートだろうリンゴがデンと目の前におろされた。
取り敢えず食べるけど、と口を開けてパクりとリンゴを頬張りシャクシャクと咀嚼する。うん。ナメクジって………多分こんなに口が開かないと思うんだよね。
リンゴ丸ごと、口に入れてから咀嚼とか……それ以前に咀嚼する牙が有るのか?やっぱりナメクジじゃ無いよね。ではナニか?と聞かれたら、メッチャ困るんだけど。
ナメクジの生態調べたいなあ。調べて自分と比べたい。そもそも外見が一致してるのかも微妙だしね。
角出せ槍出せ目玉出せ?カタツムリだっけ。ナメクジにも角有るのかな。私には有るっぽいんだけど。角って云うか、触角?目を閉じてても、触角立てれば、何か周りの状況判る。因みに角部分より長い?触角の先っぽに目が有るんだけど。目の触角も出し入れ自由で、目を閉じる時には触角にくるまれた感じです。その目の間に小さめの触角がふたつ。これが角かな?と思うんだ。あれ?じゃあ槍は?
あ、頭出せだったかな?んん?じゃあ目玉は?うああ、もう。インターネット検索したい。
いやまあ、歌なんかどうでも良いけど。
こう、わからない事が有るときに、調べられないのが地味にツラい。
ツラいんだけど、逆を云えば、ツラいのってそれくらいなんだよね。
生まれ変わって3ヶ月。ナメクジ人生……じゃなくて、ナメクジ生?
食っちゃ寝生活にスッカリ順応した今日この頃。
☆☆☆