これを私にどうしろと?
ユーゼル視点です。
「や、こんにちわ。いや、こんばんわ。かな?
まぁ、どっちでも良いんだけど。」
馬鹿どもの大馬鹿な発言に頭を抱えていると、満面の笑みの優希様がいつの間にか私の横に立っていた。
怒っている。物凄く怒っている…笑顔の裏に隠しきれない怒気が漂っており、それが漏れ出た魔力に反応してパチン・パチンと背後の壁で小さな火花を散らしている程だ。
優希様は自分の感情に素直だ。貴族のように取り繕うことをせず、嬉しければ喜び楽しければ笑う。悲しければ泣くし腹立たしければ怒る。
ただ、怒るのが一周すると笑うのだと本人から伺った。“キレる”と言うことなのだそうだ。意味はよく分からなかったが前回優希様が“キレた”時はその時滞在していた領主の館が木っ端みじんになった上に首謀者は全員死んだ。
「えー私があんた達が召還しくさった“勇者(笑)”でぇっす。
あんた達の馬鹿で阿呆な言い分はさっきユーゼル君に語ってるの聞いたから
《喋らないでいいよ》」
どうせ喋れないでしょう?とにこやかにおっしゃっているが、今、確実に『言霊』を乗せてたよな。と突っ込みたい。突っ込みたいがそうすると怒りがこちらにまで飛び火する可能性があるので何も言わないことにする。
同時に馬鹿どもの命も諦めた。
優希様との約束は一つ。
召還が正当な理由だった場合は殺さない。
これだけだ。
だが、こいつらの語った理由は正当とは到底言えない自己満足の塊でしかなかった。
こんな理由では優希様を止めるとは出来ないし、そもそも勅命で行った召還陣の破棄を無視して復元した挙げ句、召還禁止要覧の一番はじめにある“勇者”の召還を行った時点でこいつらの処刑は決まっていた。生かしていたのは勝手に殺すと優希様の怒りの矛先か王家に向きかねない為。ただそれだけ。
《アナタに召還陣を与えた人間を言いなさい》
「じゅ…がはっ!」
優希様の『言霊』に誘導され首謀者の名前を言おうとした1人は名前を言う前に大量の血を吐いた。
何とか死んではいないようだが、これはかなり強力な呪いをかけられているようだ。
《アナタに召還陣を与えた人間の名前を地面に書きなさい》
血を吐いた者は放置して優希様は次の者に『言霊』を向けた。
『言霊』を受けた者は地面に文字を書こうとしたとたん、血を吐いて倒れた。
《名前を言いなさい》
《ニックネームを話しなさい》
《頭文字を言いなさい》
《地位を言いなさい》
全ての問に血反吐をもって答えた彼等の残りは後二人。
私に演説してきた馬鹿とその隣でうんうん頷きながら馬鹿を見下した目で見ていた彼。
恐らく首謀者の手駒であろう彼は馬鹿が周りが血の海になっていくのを蒼白な顔で見ているのにも関わらず、平然とした顔をしていた。
「ね~ユーゼル君~」
私の名前を呼んだ彼女の眼は爛々と光っていた。
楽しげなソレは何か企んでいる顔だ。
「今の追跡かけてたよね?何かわかった?」
「かけてはいましたが詳しくは分かりませんでした。
分かったのは方角は南。王都内で城に近いので南の貴族街辺りでしょうか。それ以上は分かりませんでした。」
“南の貴族街辺り”
その言葉に平然としていた方の男が小さく反応したのに気づいた。
私が気づいたのなら優希様も気づいているだろうと彼女を見やると、とても楽しそうな眼で男を見ていた。
さて、優希様がこれから何をなさるのか分からないが、取りあえず私の仕事は被害が拡大しないようにすることである。
頑張ろう…




