馬鹿につける薬はない
薄暗く狭い通路にカツンと足音が響く。
私はスニーカーなのであんまり音はしないのだけどユーゼルくんは革靴なので響くんだよね。
カツン、カツンと一定のリズムで響く音は投獄されている人達にも聞こえているので、投獄されている人達は息を殺している。
そんな中で不自然に明るい声が聞こえる牢があり、ユーゼルくんの足はそこの前で止まった。
「あっ!隊長!!」
「本当だ!隊長だ!!
やったー!やっと出れるぞー!!」
「早く出して下さいよー!ココ、暗いしジメジメしてるし、魔力封じの結界のせいで何も出来なくて最悪なんですよ!」
わいわいと話していた彼等はユーゼルくんを見つけると嬉しそうに騒ぎ出した。
その顔には“ああ、やっと出れる”と安堵の表情が浮かんでいて、薄闇に紛れて見つめる私のことなど気付きもしていない。
「今から問うことに正直に答えよ。」
嬉しそうな彼等に比べてユーゼルくんの表情は固い。
ここにつく前にユーゼルくんに私はいくつかお願いをした。その結果如何では彼等を半殺しに済ませても良いと言ってある。
そんな条件を出されてユーゼルくんが飲まない訳がないよね。一応部下だし。
私がユーゼルくんを部下の失態は上司の責任!!ってしないのはユーゼルくんが今回の件に全く、一片も関与してないからだ。
知っていたら全力で彼等を止めていただろう。
筆頭魔術師の名前は飾りでは無いのだから。
「今回の件を発案したのは誰だ?
何故、何のために“勇者”を召喚するなどという暴挙に出たのだ?」
固い声で問うユーゼルくんをみて彼等は戸惑ったように顔を見合わせ、コソコソと相談すると、リーダーだろう1人の男が立ち上がった。
「発案者は私です。私は“勇者様”に憧れていました。
あの方のお陰で我が国はマモノ達からだけでなく外敵からも護られています。そんな素晴らしい行いをした“勇者様”はこの世界にいるのが当然です。なのにあの方は元の世界に帰ってしまわれた…そんな事が許されて良い訳がありません!あの方は我が国で我々を護って下さるお方!!きっと帰られたのも何か不可抗力があったのでしょう。きっと戻ってきたいと思ってらっしゃる筈です!!
我々はあの方に戻ってきて頂く為に失われていた“召喚”の魔法陣を復元し、儀式を行ったのです!!」
リーダーの言葉に私はポカーン(゜o゜;)としてしまった。
え?何?マジでそんな理由なの???そんな下らない思い込みで私は召喚????
物陰から牢をみるとユーゼルくんも頭を抱えている。
…うん、気持ちはすっごい解る。
「ならば魔法陣はどうやって復元した!?
アレに関する物は全て処分されているはずだ!!」
「それは、言えません。」
「何故だ!?」
「出所を漏洩しないことが魔法陣を知るための条件です。
私がソレを口に出した瞬間に一族郎党皆殺しになるように呪いがかけられています。」
再びポカーン(゜o゜;)
何なんだこいつは。
あーだめだ理解したくない。こんな馬鹿に召喚されたとかマジやってらんない。
ごめんね、ユーゼルくん。
このお馬鹿さんが言ってる事が本当なのは解析を使っているので間違いはない。
と、なるとだ。
彼らに生存権はない。
本当にごめんね、ユーゼル。変な期待を持たせちゃって。
心の中で謝って、私は彼等に見えるようにユーゼルくんの隣に移動した。
さぁ!虐殺タイムの始まりだ!!




