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レーテの川の水  作者: 鮎川 了
Μνημοσύνη
20/26

―悪―





 気持ちが悪い。

 何て臭い息なのだろう。

   

 下腹の不快感を必死で無かった事にしようとしたが、顔中を、否、身体中を舐め回されて着いたあの男の唾液の匂いで吐き気がした。


 ……お母さん……


 母に助けを求めるだけ無駄だ。

 

 事を済ませた男は、さっさと服を着て何処かへ行ったと思ったが、ペコの首を掴んでニタニタと笑っている。


 甲高い鳴き声を上げ、身をくねらせ抵抗するペコ。


 何で私はこの時、こう思ってしまったのだろう。

 ―男は約束を守って、ペコを物置に返しに行くところだ―


 と。


 自分の娘程歳の離れた私に、こんな事をする奴が約束など守る筈などない。

 人間ですらないのだ、この男は。


 凌辱されて余りのショックと不快感で頭がどうかしていたのだ。


 ペコが一層高い声で鳴き、何か硬いものが折れる様な厭な音がしてそれきり動かなくなった。


 「ペコ!」


 男が放り投げたペコは、もう、鳴き声ひとつ上げない。

 濡れた黒飴の様な目が白眼を剥いていた。


 私にはもう何も無いんだ。 


 母は壊れ、幸治さんには裏切られ、その上ペコまで殺された。




 何を支えに生きていけばいい?

 

 裸のままふらふらと、台所へ向かった。


 ―死のう―


 苦しみと悲しみ以外何も無い世界で生きて行くより、父の側に行こう。 











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