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レーテの川の水  作者: 鮎川 了
Μνημοσύνη
19/26

―脅―





 「おい最近帰りが遅いな」


 あの男が云った。


 「俺知ってる。隣の兄ちゃんと付き合ってるんだ」


 ゲーム画面から目を離さずに男の子供が云う。


 「へぇー、色気付きやがって」


 気味の悪い笑顔を浮かべて私の身体を舐め回すように見る。


 「やったのか?」 


 自分の子供が居る前で、なんて下品な事を云うのだろうか、この男は。

 父なら絶対にこんな事は云わない。


 黙っていると、急に頬が熱くなった。そして衝撃。


 「何とか云えよ!」


 ほら、始まった。理由など何でもいいのだ。

 

 反抗的な態度

 生意気な目

 歩き方がうるさい


 その都度違う理由だが、それはこの男が“暴力”を正当化する為の口実だ。


 誰が見ても正当な暴力とは云えないが。


 母は黙っている。庇えば母も殴られる。庇わなくても殴られるが。


 「服を脱げ」 


 次は腹を蹴られるか、火のついた煙草を押し付けられると思っていたから一瞬、何を云っているのか解らなかった。


 が、言葉の意味が解って来ると、絶望が重くのし掛かって来る。  

 殴られたり、蹴られたり、煙草の火を押し付けられる方がましだ。


 厭だ。


 母は相変わらず呆けた顔で何も無い虚空を見ていた。


 私が立ち尽くしていると、男は勝手口から家の外へ出て行く。


 諦めたのか?そんな筈は無い。 


 程なくして、ペコの吠える声がして、男は勝手口から、ペコの首を掴んで戻って来た。


 「云う事を聞かないとこの犬の首を折るぞ」


 苦しそうに身を捩るペコを見て、私は制服のボタンに手をかけた。









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