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―伝―
◇
私の足元にはペコが居る。ああ、また夢を見ている。
ペコが長いフワフワとした被毛の奥の、まるで黒飴のように黒くて丸い目を向ける。
「ペコ、なあに?」
そのままペコは視線を川の向こうへ移した。
そこには父が居た。
「明日香、だから云ったじゃないか。思い出さ無くても良かったのに」
父は悲しげに云う。
「でも私……」
そう、まだ私は何かを忘れているような気がしてならない。
ここまで思い出したのなら、全部思い出してしまいたい。楽になりたい。
「全部思い出しても楽になどなりはしない、逆に苦しむ事になるかもしれない」
それでもいい。私の記憶だ。忘れてしまいたいと思ってのが私なら、思い出したいと思ったのも私だ。
「お父さん……」
何故夢の中の父は、私の記憶が戻るのを阻止しようとするのだろう?
もう、この世には居ないもの達は何を私に伝えたいのだろう?




