おまけ
えー、完結済みの連載を何故かお気に入り登録してくれた方がいらっしゃったようです。
ありがとうございます!(現時点で消えてても驚きませんが……)
ひまじんは小心者なので、ご登録頂いたのにお気に機能が一度も役に立たないまま、というのが申し訳なく……なので更新して見ました!
どこのどなたかは存じませんが、暑苦しく鬱陶しい男達をあなたに差し上げますっ!
……返品不可。
*
『―――健全なぁああ 魔力はぁああ 健全なぁああ 肉体にこそぉおお―――』
「「「「「宿るでありますっ」」」」」
『健全なぁああ 肉体とはぁああ ―――即ちっ』
「「「「「筋肉でありますっ!」」」」」
一人のゴリラマッチョ…もとい海エルフの見た目青年、中身中年の掛け声の元、一糸乱れぬ見事な返答を返すのはやっぱり見た目青年、中身…不明なガチムキマッチョの男達。
彼らは決してフザケテいるわけでは無い。
むしろ真面目も真面目、大真面目に自らの信念を貫いているのだ。
彼らにとっての『魔力』、それは即ち『筋肉』
ならば逆もまた真理なり。
つまり『筋肉』とは『魔力』なのだっ!
―――異論は認めない!
部外者の目から見れば一見何の繋がりも無い、むしろ対極だろうと突っ込みを入れたくなるに違いないこの二つ。
だがそれを疑問に思うような海エルフなど存在しない!
……少なくともこの中にはいなかった。
エルフ―――
それはこの地に古より生きる長命なる種族。
彼らエルフと云う種族にとって、魔法とは神から与えられた聖なる力そのもの。
彼らはその源たる魔力には魔力信奉と言っても過言ではない程の、並々ならぬ強い拘りを持っていた。
エルフと名のつく二つの種族――森エルフと海エルフ――その拘りの強さは等しく熱く…重かった。
更にはこの二種族のエルフ達、困った事にその拘りの方向性が何と言うか……真逆であったのだ。
片や森エルフ。
彼らは神から与えられた魔法の源となる魔力を神からの大切な預かり物だと考えた。
ならば全ての魔力は神へとお返ししなければならない。
ゆえに森エルフは『世界』に向かって魔法を使う。
炎や風を魔法で生み出し、肉体という殻に閉じ込められている魔力を開放するのだ。
森エルフの使う魔法は強大ではあるが詠唱が必要なもの。
決して万能の力ではなく生み出す力が大きければ大きいほどその為に要する時間も長くなる。
それ故 接近されれば酷く脆い。
それがわかっていても森エルフは魔力を内に向けては使わない。
彼らは愚直なまでに己の信念を貫くのだ。
翻って海エルフはどうか。
彼らもまた森エルフ同様に、頑迷なまでに自らの信念に生きる種族であった。
彼らは神から与えられた聖なる力である大切な魔力を、ほんの僅かほども無駄にしてはいけないと考えたのだ。
彼らは考えた。
どうすれば肉体という殻に守られた大切な魔力を無駄にする事無く使う事が出来るのか。
彼らは考えた。
考える事が苦手な彼らはそれでも必死で考えた。
考える事が苦手だった彼らは……頭ではなく肉体言語で考えた。
その結果、ついに彼らは肉体の内にある魔力を全て己が肉体の中で循環させる、そうすれば魔力を一切外に漏らすことなく使える事に気が付いたのだ。
―――漏れないって素晴らしいっ!
そうして至ったのが海エルフにとっての究極魔法、肉体強化である。
彼らは己が肉体一つで全ての敵に立ち向かう。
鋭く空を切って飛来する矢を阻むのは『筋肉』と云う名の強靭な鎧。
全てを薙ぎ倒す強力な魔法を弾き返すのも『筋肉』と云う名の頑強な鎧。
剛腕を持って迫り来る刃を受け止めるのもやっぱり『筋肉』と云う名の鉄壁の鎧。
筋肉筋肉筋肉、筋肉筋肉筋肉、筋肉筋肉筋肉、筋肉筋肉筋肉、筋肉―――――。
筋肉に始まり、筋肉に終わる。
―――全ては筋肉っ!
それは不変の真理。
神が定めたもうた究極の理。
筋肉とは魔力を守る為の盾であり、魔力を活かす為の剣でもある。
彼らが求めるのは肉体強化の術がもっとも有効に使える強靭な筋肉。
ゆえに彼らは今日も愚直なまでに自らの肉体を鍛える。
―――更なる筋肉の高みを目指してっ!
「ホワッチャァー、アタタタタタタタタアッチャーっ!」
澄み渡った青空の下、奇声を発しながら巨大な岩石を突き刺し砕き蹂躙する褐色の何か。
「ホゥゥゥゥーアッター!」
深い溜めの後に空を舞ったのは別の、やはり褐色の何か。
その何かもまた巨大な岩石をその頂点から真っ二つにカチ割っていく。
地響きと共に降り立った褐色の何か、別の褐色の何かが無造作に歩み寄って行く。
そして―――。
「いやー今日も良い筋肉ですねーっ」
「いやいや~、そちらも中々に見事な筋肉で。素晴らしいですなー」
一見すると和やかな会話。
だがにこやかな笑顔を保ちつつも片やこれ以上ないほど見事に発達した上腕二頭筋をさり気無く見せつけ、もう片方もそれに負けじとこれまた見事に発達した大胸筋をビクビクと動かすことで牽制する。
褐色の何か、もとい海エルフにとっては筋肉での会話は当たり前、時として筋肉による肉体言語は言葉よりも深く雄弁に互いを語る。
海エルフ。
―――非常に傍迷惑な種族である。
※御連絡※
「おまけ」UPにともないタイトルを一部変更しました。
『海エルフの祭祀 ~恐怖の七日間~』 ⇒ 『海エルフ ~恐怖の七日間~』
多分ひまじん以外は誰も気にしないと思いますが……。
では最後までお付き合い頂きありがとうございました。
失礼致します。 ―――ひまじん