ゴールデン・タイムに執筆は進む
執筆をしていて、調子のいい時間帯があるでしょう?
書いていると、みるみる筆は進み、話は広がり、キャラは躍動して、あっという間に書き終えてしまう……。
驚異の全能感に包まれ、執筆者はこう思うでしょう。
自分に書けないものはない!
一方で、一文字も浮かんでこない、集中力ゼロの日もあります。
この違いは何に起因するのでしょうか?
人間には生体リズムに基づく、ゴールデンタイムというものが存在します。
特定の時間で、最も脳が働いて、集中力を発揮できるようになっているのですね。
このゴールデンタイムに執筆時間を持って行きたいものです。
調子のいいときと悪いときの差がすごい、ムラっ気人間である私は、安定した生産量を求めて、様々な生産向上系のハウツー本を読んできました。
当然のことですが、いろんな本が、いろんなことを言っていました。
朝がおすすめだという本が多かった気もします。
が、プロの作家では、夜中にこそ筆が進むなんていう方も多く、一概に何時がベストとは言えません。
人それぞれだという結論に落ち着きました。
どの時間が自分にとってもっともゴールデンなのか、試行錯誤して、いろいろ実験してみて、見つけていくしかないようです。
ところで、私は通勤の時にいつも気が重くなるたちのサラリーマンです。満員電車の中で、はあ、だりぃ、仕事したくねえ……そんなマントラを心の中で唱え続けています。
でも、一度職場に着くと、心は戦闘モードになり、ばりばりと働けるようになります。
どうやら、人間の心は、習慣づけによって特定の時間になると、戦闘モードに切り替わって、真の実力を発揮できるようになるようです。
このことから、最大の生産性を得るためにもある程度決まった時間に書くのは有効だと結論づけられます。
規則正しい執筆スケジュールで、執筆を習慣化します。
はじめは苦しくても、習慣化が進むにつれ、どんどん楽になります。しまいには、その時間帯には書かずにいいられなくなるものです。
はじめは苦しいのに、継続しているうちに中毒性が出てくる。
人間の脳のおもしろい特性です。
一流のスポーツ選手も、匠の職人も、同じ動作をひたすら繰り返すことによって技術を体得しています。
そういった人々と、執筆を比べることはナンセンスでしょうか?
私はそうは思いません。
自分のベストなコンディションで最大の成果を発揮するという点で、執筆も勉強もスポーツも同じだと思います。
執筆は、テストや試合のような、客観的に評価される頻度が低いのかもしれませんが、勉強・スポーツ同様、自分を律して自己を向上させ、完成した創作物という形で成果を出さないことには、二流以下です。
他のあらゆること同様、執筆でも成長したいのなら、なにがしかの努力をして、代価を払ってスキルを手にしなければならないのです。
執筆の習慣化をスムーズに行うための小技など付記しておきましょう。
儀式化というものがあります。
プロ・アスリートが試合の前に、毎回同じ動作をしているのを見たことがあるかもしれません。
プリショット・ルーチンなんていうようですが、要は儀式を行ってベストなコンディションを引き出そうと精神を統一しているのです。
ちょっとした動作で本気になるための『スイッチ』が入ります。
繰り返すことによって、儀式を行うことで本気になるという条件付けを行うことが可能です。
……脳はシンプルなのです。
私の儀式は、歩くことです。
執筆前には歩きます。
ちょいと五分十分歩くことで、スイッチが入ります。
歩くことで、心をリラックスさせる作用のある脳内物質セロトニンも分泌されるそうなので、それも私の精神に作用しているのでしょう。
歩きながら執筆スタートできるように、メモは常備しています。
儀式を発展させるために、ランニングマシーンを買って部屋においてありますが、これはあまり使っていないな……