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焔と星
闇は紅蓮に染まっていた。
奈保はただ呆然とそれを見上げている。
ー夢、だ。
奈保は思った。いつも見る夢。
結末すら知っている。なのに今日も奈保は泣いていた。
「かあさま…」
大粒の涙を流しながらただ、母を呼ぶ。
かあさまが来てくれたら、あの、円やかな膝に奈保を抱き止めてくれたら、悪夢は終わると奈保は信じていた。
「かあさま…どこ…」
気がつくと兄が奈保の隣にいた。
「にいさま?」
かあさまは?
「母上は来ない」
問いかける前に応えはあった。
「来ないんだ…奈保…」
焔はまだ燃え盛っている。
奈保の今までを消し炭にしようとしているそれを奈保はただただ見上げていた。