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挽歌
大幅改稿しました。
よろしくお願いいたします。
夕星が昇る頃、ひとり丘を登るのが奈保の日課だった。
闇が光を覆い、赤と紫紺の混じりあう刻、奈保はひとり丘の頂上に立つ。
「来られませ…」
奈保は抱えてきた白い男物の衣を風になびかせる。
「来られませ…」
魂召ばいの呪を唱える。
来て、欲しい。
たとえ現身を持たない魂であっても。
一筋、涙が頬を伝った。
古、この丘にて魂召ばいの儀式を行った妃は死にゆく王の霊に出逢ったらしい。
しかし奈保には彼の人の魂に逢うことはない。
ー彼の一族でないからか、それとも彼が奈保など顧みることがないからか。
だが奈保は試みることをやめれなかった。
ーしかしそれも今日が最期。
「来られませ…」
貴方は方はいつもほほえんでいらした。
嘲りと、敵意との中で。
それが、貴方のなすべきことで、なすべく貴方は
お生まれになったから。
その貴い血、この私たち(そう言うことを貴方が許して下さるなら)の国で最も尊貴な神々の血を引く貴方はしかし贄であられた。
平和のための贄であられた。