恋愛四季 ~春~
〜春〜
あの日、桜舞う木の下で君を見つけた。真新しい制服に身を包んだ君の顔は上気していて、舞い散る桜の美しさと相まっていた。
あの制服はどこかの高校のものだろう。おそらく君はこれから入学式に向かうのだろう。
俺も恥ずかしながら真新しい学ランを着ている。同じ道を歩いているということは行く先は同じ高校なのだろうか。
一瞬、目の前に桜吹雪が起こった。途端に言い様のない切なさを感じた。
思いきって君に話し掛けてみた。
「君は、これから入学式?」
「はい、そうですけど。」
「俺もなんだ。どこの学校?」
君から学校名を聞いた。俺が行く学校と同じだった。俺が女の制服に疎かっただけで、君もあの学校の制服着てたんだな。それだけでなぜか親近感を持った。
君と話せたことで有頂天になってた俺には、入学式の長ったらしい校長の話なんてろくに耳に入って来なかった。
同じ学校の同じ学年、顔は知ってるものの、名前すら知らない。何組かなんて知るよしもない。
ただ、一つだけ言えることは君と同じクラスになれなかったことだ。
それでも、君のことが気になってしょうがない。
そんな俺に偶然の巡り合わせが━━━━
なんて甘い出来事は何も起こらず、ただ毎日退屈な授業を受け、休み時間は仲間とはしゃぎ、部活で汗を流しクタクタになって帰るだけだった。
高校デビューとかリア充みたいな薄っぺらくも華やかなモノとは無縁のごくごく普通の男子高校生として過ごしていた。
そうして君のことも幻像に変わり、記憶の隅に追いやられ思い出せなくなっていった。
思い出せなくなっただけで、忘れた訳じゃない。
この物語は作中で四季が一巡するまで続きます。




