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幻想戦記  作者: 竜影
第3章
163/170

第140話 対峙する力






一方、セリュードたちは当然のごとく苦戦していた。

「今の世界を守る価値が本当にあると思っているのか!?ソウセツさまはこの醜き世界を変えようとしてくださっている!!それを妨げるか!!」

「醜いかどうか・・・・・・まだ判断しきれんだろ!!」

セリュードが真横に振った剣がカーモルの腕に当たった瞬間、当たった箇所から刀身が砕け散った。

「しまった・・・・・・」

「硬度で勝るオリハルコン製の剣に何度も打ち付けて、耐久度が落ちてない訳がないだろ!!」

折れた剣を引っ込めたセリュードを殴り飛ばす。鎧の所々が砕け、壁に叩きつけられた部分にもひびが入った。

「ぐあっ!!」

トドメを刺そうとカーモルが飛びかかるが、「クリス・ウォール!」とセルスが作り出した水晶の壁に阻まれる。

「ちっ・・・・・・クーリア、もう少し長く引きつけておけ!」

「わかってはいるが・・・・・・こいつ、しぶといんだよ!」

クーリアの爪とクウァルの剣がぶつかり合う。火花を散らした後、クーリアの爪が根元から折れた。

「なっ・・・・・・俺の爪が・・・・・・」

腕を引っ込めて驚いたクーリアは続けて放たれたクウァルの攻撃をかわし、彼が持つ剣に揺らめく炎を見て驚く。

「テメエの剣は・・・・・・!」

「そう・・・・・・魔神装具。使いこなせるようになったぜ!」

三年の修行を経てやっと操れるようになった力。その力が今、クーリアに向かっていく。

「ちっ。下がれ、クーリア!私が相手を・・・・・・!」

突然、何かを感じてカーモルが言葉を切る。後ろを振り向くと、折れた剣を鞘に戻したセリュードが立ち上がり、両手にマナを溜めていた。

「・・・・・・幹部相手に使わないで済むってことも、虫のいい話だったよな・・・・・・」

「(集中したマナが、何かの形に・・・・・・あれは・・・・・・!?)」

目を見張るカーモルの前で、セリュードの両手にそれぞれ一振りの剣が現れる。

「―――行くぜ・・・・・・」

突っ込んだセリュードが右の剣を振り下ろす。

「フォース・エクスカリバー!!」

「何!?」とかわしたのに合わせて、左の剣を振る。

「フォース・カリバーン!!」

「ぐおっ!!」

カーモルが吹き飛ばされた頃には、クウァルも突撃していた。

「行くぜ!魔装神具、紅蓮鳳凰牙!!」

剣を振ると共に舞い上がった炎の鳥が、クウァルの剣の動きに合わせて突撃する。

「炎の魔装神具か。だが、アースティックウォール!!」

クーリアの周りに土の壁が現れ、クウァルの前に現れる。激突して自滅かと思われたが、

「エアスラスト!!」

セルスが放った風の槍が中央の壁に刺さり、ひびを作る。

「崩さないのか!?」

「私が崩さなくても・・・・・・クウァルの力なら・・・・・・」

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

魔装神具を握り叫ぶクウァルは、ひびが入ってもろくなった土壁を剣で崩す。飛び上がり、それを振り下ろすと同時に炎の鳥がクーリアに突撃する。技は直撃した。だが。

「なぁんのこれしき~~~!!」

両方の炎の翼を受け止め、引きちぎった。

「アホぅが!これぐらいできんで、〈デモス・ゼルガンク〉の幹部になれるかぁぁ~~~!!」

投げ返された炎の鳥が爆発して、辺りが炎に包まれる。

「ふん・・・・・・ここはクリス・ウォールとやらで防いで・・・・・・」

後ろの炎を突き破った攻撃を、クーリアは見もせず腕で受け止める。

「裏をかいて後ろからの奇襲。読めなくはない・・・・・・」

だが、腕に付いている物を一瞥して驚く。そこにあったのは大きな土の塊で、突き破られた炎の先には杖を構えたセルスが立っていた。その直後に、セルスはセリュードの援護のために、その場から離れた。

「(何!?では・・・・・・)」

慌てて振り向いた時には、クウァルは目の前に迫っていた。

「―――紅蓮鳳凰牙!!」

「甘いと言っている!!」

再び翼を受け止める。クウァルは構えた剣をクーリアに突き出した。だが、肩から生えた腕がそれを受け止める。

「っ!?」

「だから、甘いと言っている。がら空きの胴体を狙うなどわかりきっている・・・・・・」

「この勝負、俺の勝ちだ」

驚いて目を見張ると、炎の鳥の体から炎の腕が生える。

「!?」

「剛炎の鳥獣。それこそが・・・・・・紅蓮鳳凰牙だ!!」

右、左と殴りつけ、解放された翼を交差させて振り下ろし、吹き飛ばす。その体勢を羽ばたいて整え、翼を上げるとその陰からクウァルが突っ込む。

「グラディウス・カリバー!!!」

「ぬぉおおおおおおおおおおおおっ!!」

雄叫びを上げたクーリアは、魔力で作りだされた刀身を四本の腕で受け止める。

「―――せめて・・・・・・へし折る!!」

「させるかああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

腕に力を入れた途端、クウァルの剣が途中から折れた。折れた剣を振り上げ、それを目で追うクーリア。だが、折れた箇所から新たに刀身が生え、振り下ろした一撃がクーリアに直撃する。

「・・・・・・っ!!」

衝撃でクーリアの後ろの床が一直線にえぐれた。うつぶせに倒れると、クウァルも着地した。

「・・・・・・ハア・・・・・・ハア・・・・・・ハア・・・・・・」

激しく息が切れており、一息すると剣を握ったまま尻餅をついた。

「(・・・・・・思わず・・・・・・魔力の刃を再生したが・・・・・・無理・・・・・・しすぎた・・・・・・)」

そのまま仰向けに、「ふえ~~~~~~」と間抜けな大声を出して大の字に倒れた。

「間抜けな大声を出して倒れた愚か者は・・・・・・誰かな!!」

クウァルに襲いかかるカーモルの前に、セルスが飛び出す。

「ファイアボール!!」

「なんのっ!!」

紙一重でかわしたカーモルは、先端近くの一回り大きな部分が開いて筒状の物が出るのを見た。

「んっ?」

移動しながらでわかりづらかったが、ポケットから取り出した筒を開いた部分にセットした。

「(風属性のマナを込めたカートリッジは使い果たした。なんとか、他の属性で・・・・・・)」

「(なるほど、カートリッジか・・・・・・)」

止まったセルスに攻撃しようとしたが、後ろから追っていたセリュードの剣を受け止めた。

「わざと気付かれるような動きでは、我は倒せんぞ!」

「前を向いている時に倒せばいいだけだ!」

「よく言った!!」と弾き、お互い近くに着地する。

「ならば・・・・・・絶対にかなわないという絶望を与えて、倒してくれる」

「そんな絶望、とっくに味わってるんだよ!!」

セリュードとカーモルが激突する。

「なら、さらなる絶望を・・・・・・仲間を討たれた我の怒りを―――受けてみよ!!!!」



                      ―※*※―



一方、城の一角。ソウセツと対面した広間は見る無残な姿に変わっている。そして激闘を繰り広げているソウセツとディステリアは、場所を通路に移していた。

「天界の連中も魔界の連中も、お前が言ってるような奴じゃない!」

「本心を出してると思っているのか?特に天使は信用ならん。神罰と称してどんな非常にも手を染められるのだからな」

「そんなこと・・・・・・」

否定しようとしても仕切れない。それを読みきったのか、ソウセツは笑みを浮かべて天魔剣を弾く。両腕を広げて、高らかに笑うように叫ぶ。

「我々が生き証人だ!いや、その生き証人も私一人!バカな天使の連中が後で真相に気付き、自分たちのことを棚に上げて襲ってきたからな」

傍から見れば自業自得、と言い切れるのか。今はその判断をする暇などない。ただ、天魔界の事件を天界と魔界の住人がどう思っているのか。ディステリアは三年前、そして修行の三年間で垣間見ている。

「生き残りであり、天魔界侵攻の全てを知る私は逃亡生活と平行して旅を続けた。自分が正しかったかどうか知るための・・・・・・まあ、思いもよらないことが起こったがな」

得意になっているソウセツの体に、左右の天魔剣を交差させて切り込む。後ろに下がって着地し、ソウセツを睨み、手の甲で口元を拭う。そんなディステリアに嘲笑の笑みを向け、ソウセツは続ける。

「偶然か必然か、ある存在との契約で不死者にも匹敵する再生能力と、永遠ともいえる永き時を生きる体を手に入れた私は、世界の真理を探し旅に出た。その中で私はその一端、この世界の創造に関する真実に触れた」

「『創造に関する真実』だと!?」

ディステリアが睨むと、先ほど与えた傷口が煙を上げて塞がっていく。だがそのペースは遅い。

「そうだ。この世界は、神の気まぐれにより生み出された〈十二の世界〉。その中で最も望まれ、かつ最も嫌われた『十三番目の世界』なのだよ!!」

「どういうことだ!?」

「わからんか?全ての種族が共に存在し、それらがわかり合うことなど絶対にありえない。種族間で永久に不毛な争いが続くのが、この呪われた世界なのだよ!!」

一瞬で近づき、拳を叩きつける。例のごとく衝撃波を発生させ、ディステリアを吹き飛ばす。

「それが真実だと思っているのか?」

「真実だ!そして私は決めた。この世界への復讐を!」

ソウセツが指先から発射したビームを天魔剣で弾き距離を詰めるが、同じように距離を詰めたソウセツの蹴りをくらう。しかし、鎧のおかげでダメージは小さく、すぐに反撃に転じる。しかし、天魔剣を振るものの簡単に避けられてしまった。

「醜い世界の再生を!そのための力と拠点を、契約した存在より与えられた!」

「そして、デモス・ゼルガンクを作ったってのかよ・・・・・・ふざけんな!要はただの八つ当たりかよ!!」

「そうだ、八つ当たりだ!」

近くの壁を叩き、衝撃波で砕いて瓦礫を吹き飛ばす。天魔剣を振って弾き、もう片方で攻めてくるであろうソウセツに対応しようとするが、それを呼んでいたソウセツは魔力のビームで吹き飛ばす。

「がっ!!」

「だが、こんな『誰にも優しくない世界』を・・・・・・守る価値があるとでも思っているのか、君は!?」

「っ!!そ・・・・・・れ・・・・・・でも・・・・・・っ!!」

歯を食い縛り、天魔剣を握り締めディステリアは立ち上がる。

「(まだ立ち上がるのか!?)」

驚きつつも一瞬で近付いて、ディステリアの腹に手刀を叩きつける。

「がはっ・・・・・・」

息を吐いた隙に体を上下反転させて蹴りつけた。

「ぐ・・・・・・あ・・・・・・」

頭から落下し視界が揺らぐ。だが、こちらを睨み立ち上がるディステリアに、ソウセツは目を見張る。

「なぜ・・・・・・立ち上がることができる。これほどの力の差があって、一人で勝てるとでも思っているのか・・・・・・」

「一人じゃ・・・・・・ない・・・・・・」とディステリアは呟く。

「何・・・・・・?」

「離れていても・・・・・・仲間の絆は常に共にある。俺は・・・・・・俺たちは、一人じゃない!!」

「そのような幻想で立ち上がるとは・・・・・・」

「幻想なもんかよ・・・・・・」

あざ笑うソウセツは、返ってきた言葉に眉を寄せる。

「確かに俺は、お前ほど世界を知らないかもしれない。それでも知ったつもりで全て否定したり、悲観したりはしたくない・・・・・・」

「私は事実を言っている」

「なら、これは知ってるか?てめえが嫌ってる神様連中の話聞いてたら、全盛期からかなり変わったって聞く。考え、強さ、性格・・・・・・不老不死の存在さえ、少しずつだけど変わるんだよ」

「だが、変わらないものもある。世界の醜さもその一つだ」

「永久なんてない。長い時間で神も変わるんだ、人間だって世代を超えて変わっていく・・・・・・」

「その変化が弱者だった場合、愚かな強者に握り潰される」

「一人なら、な。だが、仲間が一緒なら超えられる。俺はお前と違って、この世界につながっている絆を感じられる。だから・・・・・・」

深く息を吐き、ディステリアは決意を秘めた表情で、天魔剣の切っ先をソウセツに向ける。

「俺はこの世界が大好きだ!かつて神が創り、見守り、人間に託した、この世界が・・・・・・!」

「くだらん戯言を!!」

放った光弾を、ディステリアは天魔剣で叩き落とす。

「貴様の好きにはさせん!!」

「(雰囲気が変わった!)」

だがソウセツのやることは変わらない。くだらない理想論を口にするディステリアを否定すべく、屈服させるべく、彼に向けて衝撃波を撃ちだす。両腕の天魔剣でそれを防ぎ、振り切って掻き消すと、ソウセツが飛びかかってきた。

「貴様はこの世界が大好きとかほざいたな!だが、そう思えるのは知らないからだ!」

両腕から放った衝撃波に、闇の力をまとった天魔剣を突き出す。衝撃波を突っ切った剣先はソウセツの左手の平に突き刺去り、衝撃波が弱まる。追撃に左の天魔剣に光の力を溜めるが、攻撃を先読みしたソウセツのほうが早く動く。

「この世界の永劫消えぬ呪いを―――永劫変わらぬ醜さを!!」

「そんなことは―――ない!!」と

叫び、切りかかったディステリアの天魔剣をかわす。切り返した天魔剣をかわし、右手をつけた足元の床を衝撃波で吹き飛ばす。

「でたらめではない!!」

「ライジング・ルピナス!!」

ソウセツが叫び返すと共に飛んでくる瓦礫を、左の天魔剣を振り上げて放った光の柱で吹き飛ばす。あわよくばそのまま立ち上る光でソウセツを巻き込めればよかったのだが、

「甘い!!」

斜め後ろへ下がったソウセツに、光の柱の間を突っ切ったディステリアは大きく左の天魔剣を振り下ろす。

「ルーチェ・フリューゲル!!」

広がる光の刃を避けきれず、何本かが当たる。

「(よし!)」

そう思ったのも束の間、ソウセツは何事もなかったかのように着地し、刃を受けた腕や足の傷が塞がっていく。簡単に済むと思ってなかったディステリアはさほど驚きもせず、次の攻撃に入ろうとした。

「テネブラエ―――」

「遅い・・・・・・」

手から放った光弾でディステリアの頭上の天井を破壊し、降り注ぐ瓦礫をかわすため攻撃の中止を余儀なくされる。ディステリアが再攻撃に移る前に懐に飛び込み、至近距離から光弾と衝撃波を撃ち込む。

「ぐあっ!!」

叩きつけられた壁を貫通し、その先の部屋を転がる。しかし、鎧のおかげでダメージは低かった・・・・・・ともいかなかった。

「くっ・・・・・・衝撃波・・・・・・か・・・・・・」

ソウセツの繰り出す打撃攻撃は鎧に当たるたびに衝撃波を発生させ、ディステリアの体にダメージを溜めていく。どんな強固な装甲だろうとそれと身につけている者の体の間には空気が入っている場合が多く、衝撃はその空気で伝わる振動のため防ぐのは難しい。第一、その装甲すら打撃の衝撃で振動するのだ。衝撃吸収版でもあれば変わっただろうが、それで衝撃波を防げるかどうか。

「(これでは・・・・・・鎧の意味をなさない・・・・・・)」

顔をしかめて立ち上がるディステリアに、部屋に足を踏み入れたソウセツは容赦なく攻め立てる。周囲にばら撒いた魔力の弾。自身の右手の指から放った光弾に続いてディステリアに向かっていく。ルーチェ・フリューゲルで切り払うが、その光弾はソウセツが飛び込むための露払い。彼が突っ込むことを知ればディステリアがそこを狙って攻撃することを読んでいたので、目晦ましと技を相殺させる意味で放っていた。

「(だが―――!!)」

ディステリアもただ後手に回らない。左足を引きながら回り、右の天魔剣でソウセツの左肩を切り付ける。顔をしかめて膝を突くと左腕を振って天魔剣を弾き、右手から指で弾くように光弾を撃つ。壁とは反対側の右に世稀有が、伸ばしていた左手を向けられ衝撃波が襲う。そこまではソウセツの読みどおり。しかし、身を屈めて衝撃波をかわして突っ込んだディステリアが肩からぶつかる。そう来ると思わず大きくバランスを崩したが、次の攻撃―――左の天魔剣の一撃を防ぎ、蹴りを返す。頭を狙った蹴りは当たったかに見えたが、突然現れた盾に防がれる。

「(天魔の具足・・・・・・三つ目も出せたか・・・・・・)」

口元に笑みを浮かべ、床に着けた手で勢いをつけディステリアから放れる。いきなり現れた盾に驚きかけたディステリアだが、そんな彼の方鎧にそのたてがはまり、反対側にも同じ盾が付く。

「(なんなんだ、この〈天魔の具足〉ってのは・・・・・・わからないことだらけだが・・・・・・)」

そんなもの気にする余裕などない。目の前のソウセツは生身当然だが恐ろしい攻撃力と再生能力を持つ。剣と鎧、そして盾を装備したこちらが押されている。油断がないにも拘らず、だ。ただし、ソウセツの言葉に動揺している節はあるが。

「君も頑固だね。ここまで、君にとって衝撃の事実を明かしてもこちらになびかないとは・・・・・・」

呆れるようにいうと、わずかながら殺気が洩れる。

「いいだろう。もう少しばかり苦しみを与えてやろう。世界再生という偉大な目的のため、私は負けられない」

「何が偉大だ!関係ない人々を戦いに巻き込んで!」

天魔剣を振って飛ばす闇の刃を、ソウセツは両腕で叩き落とす。今までしなかった攻撃に驚くソウセツに、そんな自覚なしにディステリアが突っ込む。

「世界規模の大きな再生のためには、古き時代の産物全てを排除しなければならない。マナやエネルギーを無駄に浪費するだけのこの世界など、再生のための対価にしかならん」

「貴様は・・・・・・『温故知新』って言葉、知らないのかよ!!」

「キミこそ、『等価交換』という言葉を知らないか!!」

「うるせえ!!」

巨大な闇の刃を飛ばすが受け止められ、両手で砕かれて辺りに飛び散った。辺りを覆った闇にソウセツが目を見張った時、ディステリアが突っ込んだ。闇を突っ切り天魔剣を振ろうとするが、そこにソウセツの姿はなく、

「惜しいな・・・・・・」

後ろから声がしたかと思うと、首の後ろに衝撃を受ける。ディステリアの突撃を読んでいたソウセツは脇によって待ち構えていたのだった。ディステリアは飛びそうになる意識をつなぎとめ、天魔剣を振り上げる。体を退け反らしてかわし、踵落とし。さらに床に叩きつけられて跳ね返ったところに、蹴りを入れて飛ばす。

「くっ・・・・・・」

「『温故知新』と言ったね・・・・・・私の前でその言葉を吐いたことを後悔するといい」

意味が理解できず、ディステリアは眉を寄せる。そんな彼を嘲笑しながら、ソウセツが手をかざす。

いにしえの刃、今、現しうつしよに蘇り、交差せし十字の刃となれ!」

詠唱が進むディステリアの足元に交差した光の刃が現れる。

「―――エンシェント・クロス!」

交差した光の中心から十字架が生え、ディステリアを打ち上げる。それで終わらず、交差した光に合わせて刃が四階飛び、体勢を崩したディステリアに襲いかかった。最後に四つの刃に横木が生え、十字架となって背中から突き刺さり、床に叩きつける。

「ぐあああああああああああああああああっ!!」

凄まじい衝撃と共に床が砕ける。下の階に抜けることはなかったが、浅いクレーターの中に倒れたディステリアに、ソウセツは笑って手を下ろす。

「・・・・・・キミたちが正しいと言うのなら、まず私に勝つことだな・・・・・・」

「く・・・・・・そ・・・・・・」

口から血を流しながら起き上がり、ディステリアはソウセツを睨んだ。

「(・・・・・・まあ、天魔の具足に選ばれているんだ。俺よりも多くの知識を知ることができる・・・・・・はずだ)」

鋭い視線で睨むディステリアに対し、ソウセツは不気味に笑っていた。






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