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幻想戦記  作者: 竜影
第3章
157/170

幕間8






通路を突き進むセリュードたちは並み居るディゼアトルーパーを倒して三階を突破していた。

「よし、このまま・・・・・・」

勢いに任せて進もうとするディステリアを、「待て!」とセリュードが止める。

「少し休憩だ・・・・・・」

「出てくる敵はあらかた片付けた。早々襲われることはないだろう」

深く息をついたセリュードが槍を地面に着け、肩に乗せてから後ろの壁にもたれる。

「ここまで戦い通しだったから、休めると気に休もう」

「・・・・・・わかった」

一度目を閉じたディステリアはセルスに同意する。敵の本拠地で十分休めるとは思ってないが、それでも休憩もなしに戦い続けてこの先を突破できると思えるほどうぬぼれていない。

「戦況報告。こちら第三小隊、セリュード。現在、デモス・ゼルガンク基地散開フロアにいる」敵基地での通信は逆探知により位置を掴まれる危険があるため、長くできない。手短に報告をすると、セリュードは通信機のスイッチを切って息をついた。

「戦況の応答は三分後。休憩はするが、警戒は怠るなよ」

「了解。っつうか、そんな間抜けな真似誰がするか」

「・・・・・・君の口の悪さは、いつまで経っても変わらんな」

天魔剣を床に刺したディステリアの答えに、セリュードは溜め息をついた。



                      ―※*※―



戦況報告

第一小隊

クーフーリン‐戦闘不能、収容済み。

ファーディア‐クーフーリンを医療部隊に引き渡し後、戦闘中の部隊に合流。引き続き戦闘。

ジークフリート‐グドホルムとの戦闘後、他の交戦中の部隊の元へ。

ブリュンヒルド‐第五小隊のアレスに加勢。


第十四小隊(文月 光輝、神崎 弥生、芽衣 皐)、第十五小隊(セイクリト・ガーランズ、ユーリ・ハンスヴルスト、ミリア、神童 睦月)、第十六小隊(如月 アオイ、鱒津 信玄、飛天)、第十七小隊クトーレ・ベオヴォルフ、第十九小隊、第三二小隊(フレイア、アプサラス、ウアタハ、オッタル)

‐全員消耗が激しく、これ以上の戦闘は不可能と判断。後退開始。なお、うち数人は報告がなく生死不明。

第十八小隊(エニュオ、ポレモス)、第三一小隊(スカアハ、オイフェ)、ルーグ‐戦闘中。


第二~第十三、第二十~第三十、第三三~四三小隊‐全員戦闘不能。エインヘリヤル及び生存者は現在、ダグダ及びディアン・ケヒトにより治療中。


なお、新たな増援としてヴリトラ、インドラ、ビビサナの三名が加勢。現在猛威を振るっている。



                      ―※*※―



三分後に回答を受け取ったセリュードたちは、唖然としていた。

「・・・・・・えっと。これはつまり?」

「戦況は極めて不利。神々の力で戦線を維持してはいるが、それもいずれ押し切られる・・・・・・んじゃないのか?」

掻い摘んで言えばディステリアのいう通りなのだろう。さらに現在も世界の各軍は他の国を疑い、実際に交戦しているところもある。相手は国同士とも限らず、神々の住む世界にまで広がってもいる。デモス・ゼルガンクが人々の〈負の思念〉でディゼアを作るのなら、憎悪や悲壮が満ちている今の世界は作りたい放題と言えかねない。元を絶てぬのであれば作り出す施設を壊せばいいが、そういった怪しい建物を壊していってもディゼアが減ったという報告も確信もない。

「いまだ、様々な国にディゼアの大群が向かっているのも、そういったことが関係してるんだろう・・・・・・」

「全ては奴らの思い通りかよ、くそっ!!」

険しい顔のセリュードの言葉に、クウァルが壁を殴る。思わず日々を入れるほどの力で殴ってしまったため音が響き、敵にばれたかもしれない。

「さっさと誤解を解かないと、手遅れになっちまうんじゃないか?」

「・・・・・・だな」

会話と休憩もそこそこ。万全とは言えないが、クウァルの失敗からそれまで待ってもいられない。ディステリアたちは進みだした。



                      ―※*※―



体力の温存を兼ねてペースは抑える。が、急がなくてもいいと思ってるわけではない。歩くスピードは速いほう。あらかた片付けたためか、外の部隊と公選しているためか、敵と会うこともなく四階への階段に差し掛かった。

「向こうに階段が見える」

セリュードの言葉に、「よっしゃ」とディステリアが呟く。

「さっさと突破しようぜ!分散されたチームがいる以上、早めにこの基地を押さえないと・・・・・・」

「退却する者が出れば、その分、他のチームの生存率が上がる」

クウァルが言った直後、階段の前に金髪の少女が姿を見せる。ディステリア、セリュード、セルスの三人は警戒したが、クウァルだけは何歩か前に進んだ。

「ヘスペリア・・・・・・だったかな」

「え?じゃあ、この子が・・・・・・」とセルスが呟くと、クウァルも黙って頷く。

「みんな、先に行っててくれ」

「なっ!?ば、バカ言うな。ここでの単独行動は・・・・・・」

止めようとするディステリアに、「わかってる」と呟く。

「だが、どうもこれは、俺が決着をつけなければならないんだ・・・・・・」

「わかった・・・・・・」

ためらいなく言ったセリュードに、「おい」とディステリアが言う。

「ここで逃げても、また追いかけてくるだろう」

ここまでの傷を治そうと、治癒魔法を使おうとしたセルスを無言で制し、クウァルは前に出る。

「・・・・・・・・・俺は残る。だが、仲間は通せ。それが逃げない条件だ」

「・・・・・・・・・」

ヘスペリアは沈黙しており、セリュードはそれを肯定と受け取った。

「行くぞ。こうしている間にも、時間は過ぎて行く」普通に頷いたディステリアとためらいがちに頷いたセルスは、セリュードを先頭にヘスペリアの側を通り過ぎていった。

「・・・・・・・・・逃げないの?」

「そう言ったはずだ」

「・・・・・・そういえば、逃げなかったもんね。今まで一度も・・・・・・」

うつむくヘスペリアに、「つけるんだろ?決着」と聞く。

「・・・・・・・・・私・・・・・・は・・・・・・」

ヘスペリアは顔を上げると、しっかりとした表情でクウァルに言った。

「つけたよ、決着」

「いや、だから、それを・・・・・・って、えっ?」

意外な言葉に、クウァルは目を丸くした。

「決着は・・・・・・つけたの。考えてみれば、あなたに戦いを挑むのは、ただの・・・・・・八つ当たりだったの・・・・・・」

戸惑いを隠せないクウァルに、「ごめんなさい」と謝る。

「今までのこと・・・・・・そして、今日まで・・・・・・謝りにも来なかったこと・・・・・・」

「いやいやいや、ちょっと待て。じゃあお前、どうやってここに・・・・・・?」

人差し指を向けるクウァルから、ヘスペリデスは顔を背けた。

「・・・・・・行って。あまり、時間は掛けられないんでしょ?」

「えっ・・・・・・だが・・・・・・わかった・・・・・・」

納得がいかなくて、訳がわからないクウァルが側を通っても、ヘスペリアは何もしなかった。

「(だまし討ち・・・・・・しようとしてたわけじゃないんだな・・・・・・)」

結局、クウァルは無事に階段を上って行った。



                      ―※*※―



「―――!?」

階段を上ったディステリアは目を見張った。続いて上ってきたセリュードとセルス、遅れてやって来たクウァルも驚いた。

「なんだ・・・・・・こりゃ・・・・・・」

なぜなら、その階には部屋らしいものはなく、代わりに辺り一面に草むらが広がっていた。プランターに入れられた実験用の植物が置かれてるわけでも、実験器具から溢れた植物が広がっているわけでもない。確かに草は、そこに根付いていた。

「なんだ、これは。室内庭園・・・・・・って訳でもなさそうだな」

注意をしながら奥へ進んでいくが、飛び出してくる敵はいなかった。

「気をつけろ・・・・・・何もいないとは限らんからな・・・・・・」

「わかってる」とディステリアがクウァルに答えた矢先、近くの草むらが揺れた。

「―――!!」

セルスが少し後ろに下がって杖を構え、クウァルがその前に立つと、ディステリアとセリュードがアイコンタクトをかわす。セリュードが槍の柄を握ると、相手が草むらから飛び出した。ほぼ同時に突き出したセリュードの槍と、相手の剣がぶつかった瞬間、お互いに相手の正体を知った。

「セイクリトさん!!」

二人は離れると、互いに武器を下ろした。

「セリュード・・・・・・お前たちも・・・・・・」

「どうして、セイクリトさんがここに?」と、セルスが聞く。

「敵を追っていたんだが、どうやら・・・・・・」

すると、周りの草むらのいたるところから、葉のこすれる音が聞こえてきた。

「誘い込まれたようだ・・・・・・」

「そんな・・・・・・」

セルスが息を呑むと、全身に禍々しい棘や爪が生えているディゼアと共に、限りなく人間に近い姿の人影が二人も現れた。

「・・・・・デモス・ゼルガンク八幹部、テレノグ。分身体のカルマが世話になったな」

「同じく八幹部・・・・・・ベノクレイン」

立ちはだかる二人に、大きなプレッシャーを感じる。

「八幹部?というと・・・・・・」

「ヴォルグラードと同格か」

『八幹部』と名乗っているのだ、八人いることくらい簡単に想像がつく。しかし遭遇するタイミングは最悪。ヴォルグラードやソウセツ相手と戦う前に、同クラスの実力を持つ者との戦闘はできるだけ回避すべき。だが、それは理想論。どれだけ甘い考えかわかっているつもりなので、誰も動揺しない。

「あれ。もっと戦慄するものかと思ってたよ」

「残念だったな。むしろ、こっちは自然だと思っている」

目を細めて意外そうに言うベノクレインに、眉を寄せてセリュードが返す。それに眉を動かしたベノクレインが右腕を動かすと、ディステリアたちも構えるが、それを抑えてセイクリトがセリュードたちの前に進み出る。

「・・・・・・ここは俺が引き受ける。先へ進め」

その言葉に、「「「「なっ!?」」」」と四人が驚く。

「何、言ってるんだ!こいつらは、神に重傷を負わせられる奴らの上に立ってるんだぞ!!」

「そうだろうな・・・・・・」

低くセイクリトが呟くと、「だったら、なぜ!」とディステリアが叫ぶ。

「全滅の可能性を、少しでも減らすためだ!神をも退ける力を持っているというのなら、俺一人では確実に役者不足だろう・・・・・・」

「なら、なおさら・・・・・・」

食い下がるディステリアをさえぎって、「だからこそ!」とセイクリトが叫ぶ。

「誰かが残って、食い止めなければならない。全員でかかっても勝てない可能性だってあるんだ・・・・・・そうなれば最悪、ここで全滅だ・・・・・・」

セイクリトの言葉を聞き、三人は息を呑み、ディステリアはロウガを失った時のことを思い出した。

「ダメだ・・・・・・やっぱり俺も残る。残って一緒に戦う!!」

「ダメだ・・・・・・」

「どうしてだ!?勝率のことを言うなら、全員で戦ったほうが―――」

「バカヤロウ!!!!」

ディステリアの申し出を一刀両断するセイクリトの大声に、四人全員が息を呑んだ。

「お前がここに留まれば、我々の勝率は上がるかも知れん。だが・・・・・・」

後ろを振り向き、真っ直ぐディステリアを睨みつける。

「―――ここで戦って消耗した貴様に、ソウセツが倒せるのか!?」

セイクリトの言葉に、ディステリアは衝撃を受けた。

「本当に俺のことを思っているのなら、早く行け。行って一分一秒でも早くソウセツを倒せ。それなら俺の生存確率も上がる」

ただ聞けばその通りだと思える理屈。だが、深く考えれば穴だらけ。勝てる確率があえて低いままで挑もうというのだ。無謀以外何者でもない。

「もっとわかりやすく言おうか?」

煮え切らない様子のディステリアの鼻先に、セイクリトが指を突きつける。

「俺とお前が一緒に戦って勝率が低いままなら、いようといまいと同じということだ」

「いや!理屈はそうだけど・・・・・・」

「仲間割れかい?いいのかな~?そっちにそんな時間があるのかな~?」

挑発的なベノクレインにディステリアたちは自分たちの置かれている状況を思い出す。依然、侵攻を続けるディゼア。倒されても湧き上がるのは増え続けているため。ならその元であるデモス・ゼルガンクを抑えることは重要。先ほど下で確認したことだ。

「だから・・・・・・早く行け!!」

黙り込むディステリアに叫ぶと、セイクリトはタリスマンから剣を取り出す。何か言おうとしたディステリアだが、それを彼の肩を掴んだセリュードが抑え、四人は振り切るように奥の部屋へ進んで行った。あえて横目で見逃したベノクレインは、呆れたような表情でセイクリトを見る。

「結構、酷なことさせたね。あれじゃあすぐに戻って来るよ・・・・・・」

「・・・・・・だったら、お前らに隙を作ってでも追いかえす。それにあいつらは、ベテランから見ればまだまだ未熟だが、大事な局面で判断を誤ったりしない」

剣を構えて戦闘体勢を取るとベノクレインも身構えるが、テレノグだけはただブラブラしているだけだった。

「・・・・・・そんな怖い顔で見ないでよ。どうせ・・・・・・すぐに終わるんだから」

その言葉に、セイクリトは気を引き締める。そして、剣の柄を握る音がした時、その場にいる全てのディゼア兵がセイクリトに突っ込んだ。

「・・・・・・・・・終わったな」

テレノグがそう呟いた次の瞬間、辺りに鮮血が飛び散った。



                      ―※*※―



島のほぼ中央、高い山の上に建った中世風の城。その中心部に向かう二つの影。片方はソウセツ、もう片方はカーモルだった。

「よろしかったのですか?」

「何が、だ?」

「バーレンダート、テレノグ、ベノクレイン。どれも相当の実力者。しかし、それ故に、前線に配置させたことが・・・・・・」

「納得できないか?」

「い、いえ・・・・・・」

思い声で聞くソウセツにカーモルは言葉を詰まらせる。が、すぐソウセツは笑みを浮かべ、軽い調子の声を出す。

「いいよ、気にしなくて。しかし、キミの懸念ももっともだ・・・・・・」

「では・・・・・・失礼ながら、理由をお聞かせください」

「・・・・・・沿岸に配置した部隊に召集をかけた。あの二人なら簡単にやられないだろうし、相当の時間を稼げるはずだ。その間に奴らを挟み撃ちにし、一気に殲滅する」

「あの二人を捨石に?」

「そんなことはしない。二人には、頃合を見て退くように言ってある。志を共にする同胞を、みすみす失うわけにはいかないからね」

立ち止まったカーモルは、ソウセツの背中を見て思った。

「(さすがだ。下らない自己保身のため、自分以外を道具以下にしか見ない人間とは、まるで天と地だ)」

ソウセツは立ち止まってカーモルの方を振り返り、「何をしている」と言う。

「―――戦況は常に変わる。現状を聞きながら作戦を練る。同行しろ」

「ハッ!ありがたき幸せ!!」

カーモルは頭を下げ、ソウセツと通路を歩いて行く。

「(さて、ディステリア。キミの力はどこまで上がったかな・・・・・・?)」

それこそがソウセツの望み。それを知ることができれば他の部下はいらない、などと思うソウセツではない。それこそ、もっとも忌み嫌う己自身であり、感情。

「(できれば八幹部全員にも生き残っててもらいたいけど・・・・・・そんなに甘くはないよね)」

忌々しく思う。世界を忌み嫌うソウセツと、そんな世界を守ろうとするクトゥリア。ソウセツにとっては理解し得ない。

「(必ず消し去ってやる!ブレイティアも、今の世界も、クトゥリア―――お前もだ!)」

無意識に歩を早め、創殺とカーモルは通路を進んで行った。



                      ―※*※―



「・・・・・・・・・よかったの?あの子、全然、納得してなかったんだけど・・・・・・」

曲がり角からした声にも、ヘスペリアは黙っている。

「また、だんまり?あの子、気になって集中できないんじゃない」

出てきた女性に、「私・・・・・・」と呟く。

「・・・・・・見えてなかった。私のこと・・・・・・心配してくれた仲間のこと。仇の子孫にすら・・・・・・心配されちゃってたのに・・・・・・」

溜め息をついた女性のほうに、ヘスペリアが向き直る。

「これで足りなかったら、また後で挨拶に行きます。フレイア」

「仕方ないわね」と、フレイアは頭をかいていた腕を下ろした。

「絶対よ」

「はい」




              「じゃないと・・・・・・彼女に申しわけがたたないから・・・・・・」






ヘスペリアの決着については、別の話で書く予定です。それが続編か、果てまた特別変化はまだ未定ですが。

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