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幻想戦記  作者: 竜影
第3章
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第134話 因縁の対決⑱‐譲れぬ覚悟を貫くために






~―回想―~


昔から私たち姉妹は、かわいいことで有名だった。私も妹も大きくなるに連れて体付きもよくなり、男子の間ではちょっとばかり話題になっていた。ちょっと頼めば、なんでも言うことをきいてくれる。男なんてちょろいものね。まるで女王さま。他の女子には、疎まれていたけど。

「せっかくちやほやしてくれるんだから、あなたも色々とこき使えばいいのよ」

引っ込み思案の妹にもそう言ったけど、彼女はそんなことが言えるようなタイプじゃなかった。でも、それならそれでよかった。だって、私を脅かす存在がいないってこと。私にとって一番警戒するべき相手は、私を頼っている。そう思って安心したのが間違いだった。





ある日、学校に来ると、廊下にいる生徒たちの視線が冷たかった。訳もわからず教室に入ると、『教室の女王は、吸血鬼の姉』と黒板に書かれていた。ここでも視線が冷たい。

「・・・・・・私に何か?」

「これ、あなたのことでしょ?」

クラスの女子の一人が、冷たく言う。

「関係ないわ・・・・・・」

しかし、自身に向けられ続けている視線に、ミリリィは不快感を覚え、思わず叫ぶ。

「誰か黒板の字、消しなさいよ!」

だが、誰も聞こうとしない。

「・・・・・・な、何よ!」

「・・・・・・もう誰も、あんたの言うことなんて聞きやしないわ」

「そういうことだ」と後ろで男性の声がする。

「新しくこの学校に入ったウロギートだ。と言っても、あんたにはもう関係のないことだ」

その後、教室にやって来た男性教師に追い出され、ミリリィは町の人にも冷たい目で見られながら家に帰った。それから、警察が来て家を追われるまで、そう時間はかからなった。


~―回想終わり―~




「妹が・・・・・・吸血鬼だった」

呟いたミリリィの爪とルルカの水の刃がぶつかり合う。

「そのせいで・・・・・・私はぁぁぁぁぁぁああああ!!」

叫ぶミリリィの振った左腕に飛ばれさたルルカは、目を見張っている。吹き飛ばされたからではなく、彼女の話に思わぬ名前が出たから。

「ちょっと待って。そいつの名前、聞き覚えある・・・・・・」

「デモス・ゼルガンクの仲間だったんでしょ?知ってるわ、それくらい。でも、もう関係ない!!」

狂気の笑みを浮かべて天を仰ぎ、爪が生えた手を顔の前に持ってくる。

「リリナのせいで、私や家族は地獄を味わった!その報い、受けさせてやるわ!!」

大きく目を見開き、翼を広げ、憎しみを込めて叫び向かって来る。迎え撃つ裏ルルカは左手をかざして高圧水流を放つ。かわして襲いかかるミリリィの尻尾を、水の刃を作り出した蛇腹剣で切り飛ばす。

「ふざけるな・・・・・・」

「なんですって―――!?」

眉間に深いシワを寄せるミリリィの声を遮り、「ふざけるな!!」と再び吼える。

「あんたの境遇には同情する。けど・・・・・・それでリリナを憎む理由っていうのが気にくわない」

「『苦労することになった』・・・・・・じゃあ、納得できないっていうの!?」

背中のいたるところから、新たな尻尾が生える。翼の付け根からも生えているため、羽ばたきによる移動や姿勢制御はできない。そう読んだ裏ルルカは高圧水流を飛ばすが、尻尾がその身代わりになって水流を防ぐ。

「厄介者として扱われ、追いやられ、駆除に来たハンターからも逃げなければならない。私は人間なのに、おかしいでしょ!?」

次々と伸びる尻尾を、裏ルルカは容赦なく切り飛ばす。正確には触手と同等の物だったのだが、切り飛ばされた時の痛みはミリリィ本体にも伝わる。

「ええ、そうね。でも・・・・・・それならなぜ、あんたの両親はリリナと一緒に逃げたの?」

「吸血鬼に関係ある者は、吸血鬼として処理する。それがあいつらのやり方よ」

それは、ルルカにも心当たりがある。クトーレについて旧首都のモクルスレイに行った時、無茶苦茶な理屈でヴァンパイア・ハンターに殺されそうになって、クトーレに助けられたこともあった。

「・・・・・・確かにあれはひどい。でも、だからってリリナを憎んでいいという理由にはならない!」

「あんたには私たちの苦しみがわからない!だから、そんなことが言えるのよ!」

「・・・・・・耳が痛い・・・・・・けど!あんたは間違ってる!」

接近戦を挑んできたミリリィの爪を、剣で何度も防ぐ。

「両親がリリナを見捨てなかったのは・・・・・・」

「(―――言うな)」

より激しさを増した攻撃を剣で弾き続けるが、頬を一撃がかすめ、血が流れる。

「両親があなたとリリナを連れて逃げた理由は・・・・・・」

「(―――言わないで)」

顔をしかめたミリリィが伸ばした爪を振り下ろすと、裏ルルカはとっさに水のカーテンを作り出す。

「あなたを一人にして・・・・・・孤独な日々を送らないで済むようにするため・・・・・・」

「黙れ・・・・・・」

ミリリィがそのカーテンを切り裂くと、そこにルルカの姿はなかった。その直後、後ろの斜め上に気配を感じ迷わず爪を振り、ルルカの剣とミリリィの爪が激突した。

「毎日続く不安を少しでも和らげるため・・・・・・」

「黙れ・・・・・・」

「わかるでしょう?」

表情を険しくし、裏ルルカは辛そうに語りかける。

「―――あなたもリリナも、大切な娘だったからよ!!」

「―――黙れ!!」

裏ルルカの言葉を否定するため、吼えたミリリィが両腕を振り上げる。背中から生えた尻尾が襲いかかるが、内面世界のルルカの補助を受け、水の刃をムチにしてそれらを弾き、チャンスを見て切り飛ばす。

「本当はわかってるんじゃないの!?でも認められなくて、その苛立ちをぶつけている!」

「―――ッ・・・・・・!!」

裏ルルカが叫んだ瞬間ミリリィは目を見開き、動きが止まる。わかったような口を、否定することができたにも拘らず。彼女は何も言わない。そのチャンスを逃す裏ルルカではなく、一気に接近して剣を振り下ろす。とっさに構えたミリリィの爪が折れて水の刃が炸裂した。

「・・・・・・っ!!」

最後の足掻きか、左手を槍のような形に変化させ突き出すが、それをも切り裂いてミリリィにもう一撃を与えた。崩れ落ちるミリリィはわずかに瞳が潤み、膝を突くと共に眉を寄せる。

「・・・・・・わかってたわよ・・・・・・そんな・・・・・・こと・・・・・・」

胸から血が吹き出し、ミリリィは仰向けに倒れる。哀しそうな目でそれを見ている裏ルルカは、剣を下ろす。

「・・・・・・な・・・・・・んで・・・・・・」

消えそうな声で呻くミリリィは、ルルカのほうに目をやる。

「なんであんたは・・・・・・そんなことが・・・・・・言えるの・・・・・・」

「・・・・・・私も、似たようなものだから」と、裏ルルカは呟く。

「ルサールカの血が流れてるって知られた時、一部の人に嫌がらせを受けた。その度に私が出て行って嫌がらせした連中に仕返ししてたけど、みんなは離れるばかり。どうしてって思ってたけど・・・・・・ある日、主人格に言われたの」



『あなたが暴れるから、みんな離れて行くんじゃない』



「その言葉で・・・・・・目の前が開けた、っていうか気付いたの・・・・・・主人格がいくらがんばっても、私が力で訴えて遠ざけていた。でも・・・・・・離れていく人々の中で、残ってくれた人もいた。なぜって聞いたら・・・・・・」

思わず言葉が切れる。

「私が・・・・・・大好きだと、言ってくれた・・・・・・」

そう言ってくれた友達の顔を思い出し、思わず口を覆って泣き出す。

「・・・・・・本当に好きなら・・・・・・わたしがどんな人でも関係・・・・・・ない・・・・・・そう言ってくれたの」

「・・・・・・そっか」

しばらく黙っていたミリリィは静かに呟いた。その後、起き上がったリリナが近付いてきて、ミリリィを覗き込む。

「・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・」

「こんな私を・・・・・・まだ『お姉ちゃん』と呼んでくれる・・・・・・の?」

涙を溜めてリリナが頷く。今の彼女には色々な感情が渦巻いていて、何も言うことができない。

「・・・・・・私が・・・・・・不意打ちするかも・・・・・・知れない・・・・・・のに・・・・・・?」

再び頷くリリナにミリリィは目を見張り、今まで見せたことのない柔らかな笑みを浮かべた。

「やっぱり・・・・・・優しい・・・・・・ね」

そう小さく呟き、ミリリィは目を閉じた。

「・・・・・・・・・今度こそ、おやすみ・・・・・・なさい・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・」

うつむくリリナの目からは、大粒の涙が流れていた。



                      ―※*※―



左腕を振って発生させた衝撃波でクルスとクドラを吹き飛ばし、ミリリィたちのほうに目を向けたバーレンダートがぼやく。

「やはり、屍は役に立たなかったか・・・・・・」

「いいように利用しておいて、何を言ってる!!」

死者を蘇らせ、再びリリナとミリリィを戦わせたバーレンダートに、クルスとクドラは怒りを爆発させた。特にクルスの怒りは、とても大きかった。

「元々この術は、死体を戦わせるために人間が作ったものだろ!俺に怒るなんておかしいぜ!」

「確かに人間が作り出した。だからこそ、人間は責任を取らなければならない!」

クドラが飛ばした羽を叩き落とし、直後に切りかかったクルスの剣をかわす。

「そうだ!その方法はただ一つ!滅びることだ!!」

「「違う!!」」と二人が飛びかかる。

「俺たちは、術の危険性と非合法性を認識し―――」

「―――根絶させる!!」

同じ箇所へ同時に攻撃するが、バーレンダートの装甲は砕けず、後ろに押し飛ばしただけだった。

「クドラ、もう一度だ!」

「わかった!でやあっ!!」

再び仕掛けた攻撃が一度目と同じ所に当たるが、また突き飛ばしただけ。防御体勢をとったまま押されているバーレンダートは、驚きよりも強い関心を抱いていた。

「同じタイミングで同じ箇所に当てる攻撃を、二度もやってくるとは。なかなかやるな・・・・・・」

「貴様に褒められる筋合いはない!」

「そうか!」

叫んだクルスに砂嵐をぶつける。腕で顔を庇って耐えるクルスとクドラだが、バーレンダートは動けない二人に攻撃を仕掛けようと向かってくる。

「(―――この気配・・・・・・)」

「(仕掛けるつもりか・・・・・・)」

目を瞑っていた二人だが、バーレンダートの気配は確かに掴んでいた。そうとも知らず、土の槍を生やした右手を突き出すが、

「はああああああっ!!!」

思い切り両腕を振ったクドラが砂嵐を吹き飛ばし、その風圧で舞った砂から顔を庇ってバーレンダートは腕を引っ込めてしまう。

「チャンスだ!!」

「バカめ!」

突っ込むクルスを迎え撃とうとするが、飛び越えたクドラが羽を飛ばして牽制する。

「ぬっ・・・・・・!!」

左腕で防御するが、そこにクルスが一気に突っ込む。

「シッ!!」

クルスの剣がバーレンダートの腕の装甲を砕き、クドラの翼が腕ごとバーレンダートを切り伏せた。切られたバーレンダートの体は土のような色になって崩れると、本体がクドラの後ろで上半身を再生させ襲いかかろうとする。だがクドラの姿が消え、振り下ろした腕が空を切る。土の中から全身を出すと、クドラは上から急降下して仕掛けてくる。そして同時に、クルスもサーベルを構えて距離を詰める。バーレンダートが周囲に土の槍を作り出そうとするが、それよりも速く二人の刃が交差して一撃を与えた。

「な・・・・・・」

バーレンダートの開いた口から血が吐き出され、サーベルを振り切ったクルスと翼を振り下ろしたクドラが着地する。

「これで・・・・・・終わりか・・・・・・?」

クルスとクドラが着地すると、床に落ちたバーレンダートは皮肉そうに笑う。

「・・・・・・ちくしょう・・・・・・が・・・・・・」

それを最後に、バーレンダートの体は本当に崩れ去った。



                      ―※*※―



周囲の人工物の木々で構成された林が破壊され、剥き出しの大地が砕けている。そんな戦場に落ちる黒い落雷の中、白い光を放つ槍と剣を持ってルーグが戦っていた。両者の戦いは地上と空中に度々移り、今は空中での激突に移っていた。

「デス・ディザスト・ガイスト!!」

「でやあっ!!」

両手から発射された黒いエネルギーを、ブリューナクの白い光が弾く。

「どうした!?以前よりパワーアップした私の攻撃に、手も足も出ないか!!」

「そうか?俺から見れば、以前とどこも変わらんぞ!」

「減らず口を!」と黒い雷、ノワール・ボルテを放つが、アンサラーの一太刀でかき消す。

「なっ・・・・・・!?」

「言っただろ?俺から見れば、以前と変わらん、ってな!!」

アンサラーから放った斬撃が、デズモルートを切り裂いた。瞬間、体を黒いモヤにしてかわすが、再び実体化したところにルーグが切りつける。実体化の途中では、再びモヤになることはできない。ルーグがそれを知ってて狙ったわけではない。偶然か、それとも戦士としての勘か。どちらにしてもルーグが自覚するほどのものではない。

「ぐっ・・・・・・うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

意地で放ったノワール・ボルテが周囲に広がり、マントで身を包んだルーグに襲いかかる。雷撃の出力で押され、しばらく下がったルーグはマントを翻して雷を弾く。すかさずブリューナクを構えるが、同時にヴォルグラードが両手に黒い雷撃を溜める。両者が動いたのはそのすぐ後。白と黒のエネルギーがぶつかり、閃光と衝撃が発生する。

モヤから実体に戻ったばかりのデズモルートは対応できず突風に煽られるが、それを逃さないルーグは爆風と閃光の中を突っ切る。突き出したブリューナクの、五本に分かれた穂先が首を挟み、そのままアンサラーを振り下ろし仕留めようとした。

だがデズモルートは左足でルーグの腕を蹴り上げ、弾かれた拍子に体勢を崩しがら空きになった腹に曲げた足の一撃を食らう。地上に落とされる中、ルーグは歯を食い縛りその左足を切り飛ばす。押さえる物がなくなりすぐ離脱したが、デズモルートは切られた自身と足をモヤに変えすぐ自分の体につなげ再生させる。

「(部位を切り落とされても、自身をモヤにすることでいくらでも再生できるのか・・・・・・厄介だな)」

想定内だったとはいえ、相手の対応に顔をしかめる。だが、対抗策も思いつく。自身が攻撃もしくは行動中の時は自身をモヤにすることはできない。ゆえに敵の攻撃をかわしてのカウンターが主な攻め方になるが、それはデズモルートも理解しており敵がそのような行動を取れないように対応している。

「(カウンター狙いで無闇に突っ込めば、そこを狙い撃ち・・・・・・)」

それが、ルーグが読んだデズモルートの対カウンター策。今までそれを確信付ける展開にはなってないが、それは当たりだった。もっとも、互いにそれを知るよしはない。

「(なら、俺が取るべき手は・・・・・・)」

かざした手に収まったアンサラーを握り、接近しての一撃が、デズモルートの腕とぶつかる。あらゆる物質を簡単にきる神の剣。それを受けたデズモルートの腕はあっさり切り離されるが、モヤになると共に即再生する。しかしその直後、振り返ると共にアンサラーを振る。輝く刀身はモヤを切り、それが再び集まると共にデズモルートが実体化する。

「(早すぎたか!)」

体をモヤに変える時間、モヤから戻る時間、それらを計ってなかったわけではない。だが、その開始時間の始まりは相手に依存する。それを読みきるほど規格外の観察力を持つ者など早々いない。それ以前に、ルーグは攻め方を誤った。

「我がモヤから戻る瞬間を狙っていたか・・・・・・」

「っ!!」

とっさにとび退き、振り下ろされた拳を交わす。あそこで少しでも後ろに下がっていたら、看破される確率は低かった。デズモルート相手に数少ない勝機がよぎった一瞬、行動の選択を誤ってしまい、狙いを読まれた。それでも救いは、アンサラーの持つ魔力でモヤの状態でもわずかながらダメージを与えられること。

「(魔力で・・・・・・ダメージ・・・・・・?)」

別段、おかしな話ではなかった。幽霊などの精神体相手には、魔法攻撃が有効とされており、事実ダメージは発生する。

「(あ~~、すっかり忘れてた・・・・・・)」

自分に呆れながら頭をかく。妖精に近い神であり、太陽神という比較的強力な部類に入っているため持てる力は強力で、大概の敵には勝てる。そんな存在ゆえ、深層心理にある油断が招いた戦場で取るには迂闊すぎる行動。無論、逃す敵などいない。

「隙だらけだ!!」

あざ笑う声で我に返り、直後に飛んできた黒い光弾を屈んでかわす。デズモルートの得意攻撃を応用した小技。その目的はダメージではなく、注意を逸らすため。接近して黒い雷を溜めた左手を構えるデズモルートは、ルーグの後頭部目掛けてそれを突き出す。が、自身のこめかみに踵が叩きつけられたのは、その直後。

地面に手を着けてすぐルーグは体を低くしてそこから離れ、破れかぶれで放たれた蹴りが頭を掠める。体勢を崩したデズモルート向けて踏み込み、アンサラーですばやく切る。手応えはあったが、モヤに変わられ再生を許す。

「―――!?」

周囲を囲まれようとした時、とっさに呼吸を止めて離脱。集まったモヤが実体化したデズモルートは、かなり体力を消費したか息を切らしていた。

「自分をモヤにするのは体力を使うか・・・・・・それとも、こいつが効いてるか?」

おもむろにアンサラーを上げて言ってみる。しばらく回答はなかったが、息を切らすデズモルートは忌々しげに舌を打つ。

「どうやら・・・・・・その通りのようだ・・・・・・」

「(ウソだろ・・・・・・)」

適当言ったつもりがまさかの当たり。そういえばアンサラーには、受けた傷が治りにくくなる効果があった。現在では神界や妖精界の技術で克服可能だが。思わぬ攻略法が見つかったルーグだが、しめたなどと思ってはいない。

「(なぜ明かした?ごまかしてもいいはずだ・・・・・・)」

罠かと警戒しつつ睨むルーグに、「そういえば」と呟く。

「貴様の所の新兵が、ソウセツさまの所へ行ったらしいな・・・・・・」

「それがどうした」

「そいつ・・・・・・消されるぞ」

「・・・・・・まあ、不安はある。はっきり言って、勝てるのかとな」

戦闘しながらだったため全て聞いたわけではないが、ここまでで三年前にディステリアたちを叩きのめした、ヴォルグラードを倒したという報告は受けていない。恐らく重要拠点を守っていると推測するが、ディステリアたちが進んでいるのはその重要拠点。

「ほぼ確実に遭遇するだろうな」

「何に・・・・・・いや、わかった。確かに三年前、辛抱の知らぬ将が立場もわきまえずでしゃばったが・・・・・・」

「なら、あいつらにとって好都合だ。今度は、負けない」

「確証などない。我が将が最強だ」

「わからないぜ。その『最強』っていうのは・・・・・・」

笑みを浮かべてアンサラーを上げ、横を薙ぐ。地面の土が吹き飛ばされ、中にあった黒い手が掻き消された。

「日々更新されてるみたいだからよ」

「くっ・・・・・・俺が仕込んでいることに気付いていたか・・・・・・」

「戦闘中にも拘らず長い話をしてるんだ。仕掛ける奴もいるだろう」

もっとも、それが合わない武人肌の敵がいることもルーグは知っているが。そして両者は、決着に向けて動き出した。






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