第132話 因縁の対決⑯‐戦場に立つ者、その覚悟
「情けない・・・・・・」
落胆したかのような表情でバーレンダートが呟く。目の前では、片膝を突いた信玄とそれに付き添うアオイが彼を睨んでいた。
「我ら八幹部ともあろう者が、脆弱な人間の軍隊にてこずるとは・・・・・・」
「俺たちの力・・・・・・なめないほうがいい・・・・・・」
「説得力が皆無だな・・・・・・」と呟いて右手を上げると、床を突き破って土の体を持つ人形が現れる。
「またか・・・・・・キリがない・・・・・・」
「もう歯向かう力も残っていまい。潔く・・・・・・散れ!」
襲いかかる土人形の群れに信玄とアオイが向かおうとした時、光と闇の弾丸が二人の脇を抜け、群れに直撃した。
「今の攻撃は!?」
「ディステリアじゃなかったら、あの二人しかいない!」
群れの前の煙が晴れると、白く輝く剣を持ったクルスと黒い翼を持った姿に変化したクドラが立っていた。
「信玄さん、アオイさん!大丈夫ですか!?」
あとから来たルルカとリリナが二人に駆け寄る。
「クトーレは?一緒じゃないの!?」
心配そうなリリナに、「一緒だったんだが・・・・・・」とバツが悪そうに信玄が答える。
「まさか・・・・・・はぐれたの!?」
「違う!彼が単独行動を取ったんだ!」
信玄の言葉に全員が驚く。その隙を突いて土人形が襲いかかるが、アオイが仕掛けていた結界トラップにはまって動きを止められる。その音に気付いたクドラが黒い羽を飛ばしてしとめた。
「こうも簡単に到着を許すとは・・・・・・。後続の部隊は何をやっていたのだ」
崩れた土人形の後ろから、バーレンダートが歩いてくる。
「貴様らが応援を要請した部隊は総崩れ。トゥレン家三兄弟もブレスも降伏したぞ!」
「そのような情けない裏切り者、デズモルートが確実に始末する」
「どうかな?」と笑みを浮かべる。
―※*※―
「ちぃっ・・・・・・ここまでか・・・・・・」
マナナン・マク・リールの一撃を受け、口から血を流すペイリトスは後ろによろめく。
「結局この様。ネクロは俺たちに復讐のチャンスを与えたのか・・・・・・それとも、単なる気まぐれか・・・・・・」
傷を押さえて呟き、倒れたペイリトスは消滅する。それを見届け、マナナン・マク・リールは武器を下ろした。
「おい、余計なことを・・・・・・」
「助けてやったのにそんなこと言うか。まあ、いいが・・・・・・」
「頼んでねぇ・・・・・・」
不機嫌そうにアレスが言う。その時、遠くで白と黒の落雷が激突する。その衝撃波に木々が吹き飛び、その欠片がアレスとマナナン・マク・リールに襲いかかった。
「なっ―――!?」
「これは―――!?」
吹き飛ばされた二人は残ったエインヘリヤルたちと共に、壊れた人工林の下に埋もれてしまった。
―※*※―
空中を自在に飛びまわる白と黒の光。エネルギー体のような体をしているデズモルートの両腕から放たれる雷が空を覆い尽くす。対するルーグはブリューナクを握った左腕を引き、突き出すと共に雷光を放ちそれらを薙ぎ払う。貫通した白い雷光をかわしたところにアンサラーで切りかかり、激突した両者は落下しながら互いに攻め続ける。全力同士のぶつかり合いの余波で、周囲に生えている人工物の木々は砕け、欠片が吹き飛ばされていた。
「退避ぃぃ!緊急退避ぃぃ!巻き込まれるぞ!」
「動ける者は動けない負傷者を連れて行け!」
「相手はダーナ神族の一員を洗脳した奴だぞ!加勢しなくていいのか!?」
「バカ、ルーグさまの全力だぞ!下手に手を出したら返って邪魔になる!」
地上ではエインヘリヤルやダーナ神族の兵士、妖精の騎士ディナ・シーたちが撤退していた。ここまで続いた消耗戦とも言うべき長期戦により疲労が溜まっていたため、ほとんどの者はディゼアの物量に押され始めていた。そのため負傷者も多く、撤退も滞っていた。
「(味方がいる場所に誘導し、こちらが全力で戦えないようにしてるのか)」
聞こえてくる悲鳴に気付かないルーグではない。だがここで力を抑えれば、敵の思う壺。それは下の味方も知っており、撤退に徹している。急いで退くことが、ルーグへの一番の援護だと。
「それに、自分の身は自分で守ることが、戦場の鉄則だし・・・・・・」
身を呈して味方を守りながら戦う。聞こえこそいいが、それは味方を『同じ場所に立つ仲間』として認めてないに過ぎない。味方の受ける危険を自分の身一つで被って守った気でいる。それは覚悟を持って戦う仲間への侮辱に等しい。
「近くに仲間がいても力を抑えないか。とんだリーダーさまだ!」
「仲間を流れ弾に巻き込まないようにはしている。全く被害が及ばないようにすれば、それは仲間の力を『信じてない』証になりかねん!」
ゆえにルーグは手を緩めない。攻撃の余波も、地上の味方が回避可能なほどの規模に抑えてはいるが、デズモルート相手に押されるレベルではない。同時に倒せる攻撃でもないが。
「そんな奇麗事が、いつまで持つかな!?」放たれた雷をアンサラーで切り払い、一瞬でデズモルートの懐に飛び込む。
「奇麗事では終わらせないさ!」
一閃がデズモルートを捉える。しかしその瞬間に体を霧に変換し剣をかわす。だがアンサラーが持っていた魔力がデズモルートにダメージを与えた。それでもわずかなダメージだが。
「ぐっ・・・・・・」
隙を作り出すには十分だったらしく、実体化すると共によろける。
「(ここだ!!)」
すぐに踏み込みアンサラーを振る。今度は高速移動で後ろに回りこまれたがそれも想定内。ブリューナクで薙ぎ払って吹き飛ばす。
「ぐっ、おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「(来るか!)」
一瞬危険を感じ、ブリューナクに魔力を溜めて構えなおす。
「デス・ディザスト・ガイスト!!」
「ブリューナク!!」
両者が放った二つの雷光が衝突した。
―※*※―
鳴り響く轟音、遠くで聞こえる金属音、兵士たちの叫び声。それらはバーレンダートがいる場所まで届いていた。
「向こうは向こうで派手にやってるか」
ルーグとデズモルートが戦っている方角を一瞥し、すぐ視線をクルスとクドラのほうに戻す。鉄の木々でわずかに開けた場所で、そこ一杯に敷き詰められている土人形を相手に二人が応戦していた。状況は有利を超えて押している。
「(最上級クラスのはずだが、こうも簡単に圧倒されるとは・・・・・・)」
ブレイティアがこちらの魔導変化を打ち消し、ディゼアを弱体化させる結界を張っていることは聞いている。それでも土人形の動かし方で優位に立つ自身はあった。だがそれは、目の前で呆気なく引っくり返されている。
「(奴らのほうが上だというのか・・・・・・)」
それでも驚きも焦りもない。土人形の実力などたかが知れる程度。はっきり言ってディゼアより下だ。有利な点は材料が土ゆえ量産が簡単という一点のみ。ディゼアの力が抑えられている現状では、その結界の効果を受けないという思わぬ利点が生まれたが、だからといって土人形のスペックが上がる訳ではない。
「(なら、この結果も当然か・・・・・・)」
ただし忘れていることもある。目の前を埋め尽くし、押されている土人形は長い時間をかけて作りだした『最上級レベル』と呼べるもの。同じ年月をかけて作った上級ディゼアより出力が下であることは変わりないが、それでも並みの兵士よりかは強い。それにも拘らずクルスとクドラの連携の前に土人形の群れは次々と崩れている。なので、クルスたちの実力は『並みより上』と窺い知ることができる。その時点で、主といえるバーレンダートにとって有益な情報を与えたという意味では役目を果たしたといえる。
「まあいい・・・・・・」
静かにたたずんでいるバーレンダートが達した答えは、『気にすることはない』。そんな中、土人形の最後の一体が崩れ、クルスとクドラが降り立つ。
「残りはお前だけだ!!」
勇ましく叫ぶクドラに対し、「クククククク・・・・・・」と笑う。
「何がおかしい・・・・・・」
「まさか・・・・・・気付いてないわけではあるまい・・・・・・」
バーレンダートが両手を上げると同時に二人が飛び出すが、攻撃が届く前に土人形が復活する。
「(こんなに―――!?)」
「(―――早く・・・・・・!?)」
バーレンダートは高い能力を秘めた魔術師。しかも、先ほどクルスとクドラが戦っていた土人形の製作者。材料は周囲にムゲンと言っていいほどあるので、一瞬で大量に作り出すことなど造作もないこと。だが、それは今日初めて対面したクルスたちには知りえないこと。そしてそれによって生じた隙をバーレンダートが逃すはずもなく、すぐ指差して進軍を命じる。
「「(しまった!!)」」
二人が驚いている隙に土人形の一体が、退却中の信玄とアオイに襲いかかる。他の土人形に足止めされている二人が間に合わないと思った瞬間、飛び出したリリナが回し蹴りで人形の腕を砕いた。
「リリナ!?」
驚いたクルスが声を上げ、その間もリリナは拳や蹴りで土人形を砕いていく。
「こんなこともあろうかと、格闘技を習らってたんだもんね!」
「格闘技!?」
得意そうなリリナの言葉にクルスが叫ぶ。その様子は、まさに寝耳に水といった状態。
「知ってたか!?」
「い、いや・・・・・・」
気まずそうに顔を逸らすクドラだが、その様子から知ってて隠していたと察する。
「今の内に、信玄さんとアオイさんは撤退を!」
半壊した蛇腹剣を抜いてルルカがリリナの側に立つ。ギミックは破壊されているが武器としての使用は可能で、他にも左手から水を発射して応戦する。
「・・・・・・すまない」
アオイに肩を担がれた信玄は後退し、それを追おうとする土人形にルルカが水を被せる。水分を吸収して脆くなった土の体を、ルルカの剣が砕いていった。格闘技で応戦するリリナもほぼ同じ。土埃や泥を服や足に被っていたが、気にしてはいない様子だった。
「ここは私たちが死守するから、クドラとクルスは術者をお願い!!」
一瞬躊躇したが、クルスとクドラは二人を信じ、バーレンダートに向かって行った。
「貴様らごときが俺と戦うか。やってみろ!」
「そうやって侮ってたら、足を掬われるぜ!」
手を振って土の壁を召喚するバーレンダートだが、クドラは闇の魔力で作られた黒い羽で簡単に貫く。すぐ土を操ろうと手をかざすバーレンダートに、クドラを飛び越えたクルスが光の刃を伸ばした剣を振り下ろす。それを弾くと同時に土の槍が盛り上がり、その先にいるクドラは身を翻してかわす。クルスはその槍の先端を踏み台にして飛び切りかかるが、バーレンダートは回転しながらクルスの剣をかわし、周りこんだクドラが振る翼もかわす。クルスとクドラに挟まれているバーレンダートは不利に立たされるどころか、二人と互角に渡り合っている。
「二人がかりとは言え、私と互角か。これは驚いた!」
「お前らが思っているほど、俺たちは弱くない!」
「テメエらの首領が世界にいろいろ文句を言っててもな・・・・・・俺たちはそれを、変えられると信じてんだよ!」
「「俺たちがそうだったように!!」」
クルスとクドラの同時攻撃がバーレンダートを打つ。しかし、その刃は彼の右腕にまとわりついていた土が受け止めていた。表面が砕けるものの、左手に反応して突き上がった土の槍をかわすため二人が飛んだため届くことはなかった。
「貴様らが変わったから、世界も変わるか・・・・・・保障も確実性も何もないな・・・・・・」
「お互い様だろ。世界を壊して作り直す?その世界が今の世界よりいいって言い切れるのか?」
クルスの指摘に、何も言い返す要素はないバーレンダートは黙り込む。まさに痛いところを突かれた。答えることができないバーレンダートは、何も言わず笑みを浮かべた。
「おもしろい!なら私はお前たちを叩き潰し、その先を見ることにしよう」
やはり言い負かすことなどできない。それだけソウセツの理想に共感し、同調しているのだ。説得ができるはずもない。
「(ならば倒すのみ!!)」
すでに抱いていた覚悟を再認識し、クルスとクドラはバーレンダートに向かっていく。それを愚かといわんばかりにバーレンダートは土爆弾を投げ、土煙を起こして視界を覆う。続けて左右に生やした土の槍を手刀で切り離し、念力で操るように飛ばす。だが、すでにそこに二人はおらず、巨大な黒い鳥の姿になったクドラと彼の足に捕まったクルスが上を飛んでいる。
気付いたバーレンダートが顔を上げるのとクルスが切りかかるのはほぼ同時。右手に掴んだ細めの土の槍とクルスのサーベルが交差し、回避を試みた両者の頬を掠める。横向きに振ったサーベルを、仰け反った体を回すことでかわし、勢いそのままに振ろうとした土の槍は上空から強襲したクドラの爪が止める。そのままへし折り、バーレンダートが身を引くと共に踏み込んだクルスがサーベルを振る。
後ろに飛ぶと共に腰を引いたため、剣先は腹を掠めた。バーレンダートはそのまま両手に土を集めて槍を生成し、クルスを貫こうとする。
「テネブラエ・シュナイド!」
クルスが下がると同時に、クドラが闇の魔力の刃を翼から放ち槍を粉砕。翼を振ると同時に接近し蹴り飛ばし、鋭い爪を連続で突き立て畳み掛けるが、バーレンダートは踏みとどまる。押されている間に足が触れていた地面から土の槍が生え、気付いたクドラはすぐ飛び退く。サーベルに光の魔力を溜めたクルスがその槍を切り払い切りかかるが、その間に刀身が広い剣を作っていたバーレンダートはその攻撃を防ぎきる。
「くっ・・・・・・」
「どうした?俺を倒すのだろ?」
挑発するバーレンダートが力を込め押し倒そうとするが、クルスは後ろに飛び退いてわざと飛ばされる。着地すると、近くにクドラが降りて半人半鳥の姿になる。
「クルス、同時にいくぞ!」
「おう!」
頷くと共に二人同時に動く。クルスは地面を駆け、クドラは空を行く。クルスを止めればクドラが攻めると呼んでいたバーレンダートは、足元に生やしたトゲをクドラに向けて飛ばす。翼で弾いたクドラに飛び上がったバーレンダートが切りかかり、地上に落とす。それを見たクルスはすぐ飛び立ち、横に差し掛かったところでクドラが彼の足に翼を当て、勢いよく投げ飛ばした。
「(そう来るか!?)」
幅広い光の刃が付いたサーベルを振るクルス。バーレンダートが構えた土の剣を切り飛ばし、剣を回して振り下ろす。刀身の折れた土の剣で防御するバーレンダートだが、防ぎきれずに落下。突っ込んだクドラが闇の刃を飛ばして追撃した。いくつもの黒い刃がバーレンダートを貫くが、色を失ったそれは土塊に変わる。
「「(―――!?)」」
目を見張る二人を地上から見ていたバーレンダートは、木の陰で地面に手を付いて新たな土人形を作り出していた。信玄とアオイの撤退を支援しているルルカとリリナに向かう土人形たちを見下ろし、顔を見合わせたクルスとクドラは頷きあう。
「テネブラエ・シュナイド!!」
クドラが闇の刃を飛ばして土人形を牽制、落下しているクルスを背に乗せて地上に向かう。しかしそれこそバーレンダートの狙い通り。
「(今撃ち落とせば、速度そのままに地上に叩きつけられる!)」
木陰から出てきて土のトゲを飛ばす。遂げはまっすぐクルスとクドラに向かっていくが、背に乗っているクルスはそちらに鋭い視線を向ける。
「―――!?」
振り被ったサーベルに溜められた光属性の魔力が解放され、先ほどの刀身を形成する。体をひねって振りきり、向かってきたトゲを打ち返す。帰ってきたトゲは鉄の木に激突、破壊し、飛び出したバーレンダートにクルスが切りかかる。真剣白羽取りで止めるが、足場のない空中で耐えられるはずがなく地面に叩き落とされる。地面が砕けて土煙が舞う。
それが晴れて姿を見せたバーレンダートは、左肩に切り傷を負っていた。クルスは地面に降りると、光の刀身を消したサーベルを構える。クドラは高速ターンで土人形たちを引っ掻き回し、その隙を付いてルルカが水をかけたり切ったり、リリナがかかと落としで砕いたりした。追加分の土人形があらかた片付くと、クドラはクルスの横に降り立つ。
「思った以上にやるな。だが、私を倒すには足りないようだ」
余裕を込めてせせら笑う。二人とも挑発とわかっているのでのることはない。身構えて様子を伺う二人に、バーレンダートはつまらなそうな顔で鼻を鳴らす。
「まあいい・・・・・・それと、後ろで私の土人形を倒している小娘」
急にクドラとクルスから視線を外し、信玄とアオイを守って土人形と戦っているリリナとルルカに目を向ける。仕掛けるチャンスだったが、バーレンダートが指を動かすと彼の周囲に土の槍が生える。正面から攻撃はできないし、飛び越えても槍が伸びれば貫かれる。
「貴様には選別をしてやろう!」
バーレンダートが指を鳴らすと、中程にいる土人形の体が崩れ、中から長髪の少女が現れる。クルスたちは戦慄を覚える。
「人間を取り込んでいた!?なんてこと・・・・・・」
「そ、そんな・・・・・・」
とさえぎったリリナの声に、ルルカは一瞬疑問を感じた。だが、その疑問は割りとすぐに消えさった。
「ちょ・・・・・・これ、なんの冗談・・・・・・?」
ルルカは冷や汗を流し、リリナは目を見張って両手で口を覆っている。それを嘲笑うかのように、その少女は口元に笑みを浮かべる。
「ミリリィ・・・・・・」
バーレンダートと対峙しているクルスとクドラ。聞こえてきたリリナの言葉に、思わず振り返ってしまった。
「なんだって!?」
「あれはいったい・・・・・・」
「よそ見する余裕が・・・・・・」
二人の懐に飛び込むバーレンダート。それに気付いた時はすでに遅く、魔力を溜めた両腕が振られた後だった。
「―――あるのかな!?」
「「うわあああああああああああああああっ!!」」
引き寄せられた槌が集まって槍を作り出し、二人を吹き飛ばす。地面に叩きつけられ、体を起こすと共にリリナとルルカのほうに目をやる。
「あの女・・・・・・確か、クトーレが・・・・・・」
「どういうことだ・・・・・・ネクロマンシーか!?」
「あちらを気にする暇があるのかな!?」
バーレンダートが風属性中級魔法のサイクロンで巻き起こした竜巻が、二人を襲う。
「うあああああっ!!」
「サイクロンだと!?奴は土の属性を持つ術師じゃ・・・・・・」
「そう勘違いしたのは貴様らだろ!!」
巻き込まれた鉄の木々の欠片が、竜巻の中のクルスとクドラを襲う。竜巻から逃れられない二人は向かって来る鉄を弾いたが、それが収束した直後地面から生えた土の槍が肩や脇腹を貫く。
「ぐあっ!!」
「がはっ!!」
槍が崩れて地面に落ちた二人を近づいて来たバーレンダートが見下すように目を細めて見る。
「さあ、世界を変えるどころか私に勝てると思っている愚か者よ。少々現実の厳しさを教えてやろう」
周りの土を操作して数体の土人形と自らの装備を作り四肢にまとう。
「あと・・・・・・経験者の説得力も、な」