第131話 因縁の対決⑮‐戦女神、最大発揮
「フヒヒヒ・・・・・・」
アガムメノンは不気味な笑い声を漏らす。彼の鎧には、いくつもの傷が刻み込まれていた。だが、いずれも致命傷には程遠い。対峙するスカアハは息も切れてないしダメージもない。にも拘らず手が出せないでいるのは、アガムメノンの周囲に生えている触手のせいだった。
「・・・・・・・・・」
「どうした?手も足も出なのか?」
「くそっ、離せ!」
触手に捕まったオイフェは逃れようともがくが、どう暴れても解くことができない。
「そういえば・・・・・・妖精を精神操作して給仕にしていた領主がいたな。そいつと同じように行かないものだな」
「私たちは妖精から派生した神族だが、だからと言って同じと思われても困る」
いやらしい笑みを浮かべるアガムメノンにスカアハが返す。槍を構えるが、仕掛けるチャンスは見つからない。
「・・・・・・ぎゃ、そこを動くな!」
捕まっているオイフェの足や体に巻きついている触手は蛇のようにうごめき、その感触に顔色を青くしている。が、アガムメノンは反対に不気味に笑みを浮かべている。
「うごめく触手にあえぐ女、か。聞いていた通りそそるものがあるな」
「なるほど。貴様のような奴が巷で言う、なんとかというものか」
若干の嫌悪感を持ちつつ、スカアハは攻撃のチャンスを探る。
「『なんとか』ではわかりませんよ。しかし、そうですね・・・・・・私のような者をなんというか、私自身も知らない・・・・・・」
余裕を見せ付けるように、目を閉じてあごに指を当てて考える。傍から見れば攻めるチャンスだが、触手の不意討ちがあったとはいえオイフェはそれで掴まった。先端には三本の爪が付いており、稼動するので相手を掴むこともできるし爪を束ねて刺突も可能。刃物に近い形なので切りつけることもできる。
「(魔術なら一掃できる。だが、今撃てば確実にオイフェを巻き込む。大きな魔術を使えば仕留められるだろうが、オイフェもそうなれば荷物になる・・・・・・)」
仲間ごと敵を討つことは、下手すれば自ら戦力の数を減らしこちらを不利にする。やるしかないならともかく、今はそこまで追い込まれていない。だがそれ以前に、スカアハにはオイフェを失いたくない理由があった。
「(私が使える属性は風、水、氷。さて、それでどう組み立てるか・・・・・・とりあえず)」
槍を強く握り、回して穂先で地面を刺す。地面を掘り進んでいた触手が貫かれ、流していた風属性の魔力を一気に開放して足元ごと吹き飛ばした。
「―――不意打ちなんてなめたマネをして、捕まえられると思ってのか!この三下!」
「効率的、と言って欲しいね!」
吹き飛んだわずかな地面を足場にして近付き、アガムメノンに切りかかる。振られた剣を槍で流し柄を脇腹に向けて振るが、横に跳んでかわされる。振り下ろし、突き、切り払いもかわされ、着地した所に潜んでいた触手が巻きつこうとする。
「ストームエッジ!」
自身を中心に竜巻を発生させ、周囲に発生させた真空の刃で触手を切り刻む。術の形を考慮した応用により戦略の幅が広がるのはスカアハの経験則であり、同時に素質ゆえ。
「ククク。見えたぞ!」
「何!?」
笑いを漏らすアガムメノンに、攻め方を見切られたのかとスカアハは一瞬だけ焦った。
「ストームエッジを使った時、貴様のマントがたなびいた。その時に見えたぞ。形のいい、貴様の胸が!!」
言い切ったアガムメノンに、スカアハもオイフェも呆れて黙り込む。
「そうだな。目測ではつまらんし、スリーサイズは触手でじかに測ればいい」
下劣な笑みを浮かべるアガムメノンに、スカアハは先ほど焦りを抱いた自分を情けなく思う。こちらの隙を作るための小芝居だとしても、突けるはずの隙を突いてこないのでそう思えない。
「そうだ、先にこいつを・・・・・・」
体に巻きついている触手がうごめき、「ひっ!」とオイフェが声を上げる。
「や・・・・・・やめんか、こら!」
「この痴れ者がああああああああっ!!」
仲間を貶められる怒りより、自分の感情を叫び突撃する。戦いの女神としてさらし者にされるのは耐えがたい屈辱。それを知ってる上で、アガムメノンはわざと挑発的なことを言った。といっても戦術要素は一つもなく、ただ自分の欲望に従っただけ。それにスカアハが突っ込んできたため、揚げ足取りの要領で触手を伸ばして対応する。
「ヒヒヒ!触手に絡まった美人女神、二人目一丁上がり!!」
もっとも、欲望に溺れたため戦場の鉄則など頭になかった。『敵を侮ってはならない』という鉄則を。ゆえに、スカアハの槍の一振りで触手が一掃された時、理解が遅れた。
「なっ・・・・・・!?」
「貴様は・・・・・・簡単に死ねると思うなよ」
槍を振り下ろし、吹き荒れた風の刃がアガムメノンの体を切り刻む。ついでにオイフェに巻きついていく触手も切り刻んだが、彼女のマントにも切れ込みが入った。
「あっ・・・・・・スカアハ、お前!」
「文句は後で聞いてやる!その痴れ者を叩き潰した後に、な・・・・・・」
「あっ。それ、同感」
凶悪な笑みになったスカアハとオイフェに、「ひぃっ」と息を呑んだアガムメノンは、気圧されて後ずさりする。触手を生やして襲わせるが、ジャンプしたスカアハが消えオイフェが剣で切り刻む。彼女が消えると上から槍を構えたスカアハが落ちてきて、右肩の鎧を貫く。寸前でかわしたアガムメノンだったが、穂先の先端が肩に触れたので血が噴き出し、構え直した槍の柄であごを打ち上げられる。そこにオイフェの剣が腹を割く。回されたスカアハの槍が反対の横腹に突き刺さり、そのまま後ろの木に叩きつけられた。
「ぐはっ!」
「よくも・・・・・・さっきは好き勝手やってくれたな!!」
スカアハの肩を踏み、飛び上がったオイフェが切りかかる。アガムメノンの触手がそんな彼女を阻むが、下のスカアハは槍に風の魔力を集めている。それを見たアガムメノンは、表情を引きつらせると共に青ざめた。
「ま、待て、待て、待て!お前ら、正義の味方だろ!こんな戦い方でいいのか!?」
「正義の味方?人間が定めたそんな都合、我らに当てはまらんぞ」
溜めた魔力を一気に放ち、アガムメノンを内側から切り刻んだ。呻き声を漏らしたアガムメノンだったが、全身から噴き出した血が空中で静止する。
「・・・・・・!?」
眉を動かしたスカアハが後ろに飛び、触手を捌いたオイフェの足を掴んでさらに下がる。いきなり引っ張られたオイフェの体は前に倒れ、前髪の先端が何かに切られた。その何かの正体を掴む前にスカアハが停止し、オイフェの体は地面に打ちつけられた。
「いだっ!・・・・・・おい、こら!スカアハ!」
「しぶとい・・・・・・」
顔をしかめたスカアハの言葉に眉を寄せつつ、アガムメノンのほうを振り返ると目を見張った。切り刻まれた体から噴き出した血が爪のようになって生えていて、口から血を流したアガムメノンがこちらを睨んでいる。
「き・・・・・・さまら・・・・・・」
声は怒りに震えている。周りの足元から生える触手がうねり、先端の爪が開閉する。
「―――真っ先にしつけてくれる!!」
「弱い女性を捻じ伏せる奴は嫌われるぞ!!」
叫び突撃するスカアハを追い抜き、オイフェはもう一つの剣を抜く。両腕を振り、体を回し、片方を振り上げもう片方を振り下ろす。向かって来る触手をかわしながら切り伏せていくが、迫る爪が掠り服やマントが破れていく。
「そらそら!身包みはがれていくぜ!」
「まったく・・・・・・そんなことしか頭にないのか!?」オイフェのほうにだけ向き、攻撃を集中させる。そのため左右と後ろががら空き。そこを付いて槍を突き出すスカアハだが、その槍が血の固まった爪に弾かれる。
「ぬっ!?」
「なめるなよ!」
右側の爪が回り、スカアハのほうに伸びる。槍を回して弾くが、その後にカギ爪が付いた左腕を振る。かわせない速度ではなかったため回避は難しくなかったが、爪がかかった腹部の服が破れる。
「ヒヒヒ・・・・・・」
「!?」
その後も攻め立てるアガムメノン。攻撃が外れ続けてるにも拘らず笑みを絶やさない様子に、スカアハとオイフェは不気味な者を感じる。
「(こいつのこの様子・・・・・・)」
「(攻撃以外に目的が!?)」
攻撃をかわしながら警戒を強める。いつしかスカアハとオイフェの服はボロボロになり、破れ目から白い肌が覗いている。
「ヒャハハ!いいねえ、いいねえええええええええええええっ!破れた服に隠れた女の肌ってのは!」
何か企んでいると思っていたスカアハとオイフェは、戦闘中にも拘らずずっこける。
「そうか、これが『チラリズム』って言うのか。ネクロにはいいことを教えてもらったな」
「冗談だろ・・・・・・」
どんなことかと警戒していればただの肩透かし。いや、戦いに生きる女神として、どこか楽しみにしていたのかもしれない。
「つまらん・・・・・・終わらせるぞ!」
「できるものなら!!」
距離を詰めるスカアハの周囲に触手が生える。攻撃の合間や高笑いしている間に仕込んでいた。そう考えるオイフェだが、アガムメノンの態度からありえないと一瞬思う。
「(これが狙いか?)」
わざと道化を演じることで戦況と敵の思考にギャップを持たせ、自分たちの予測に疑念を持たせる。そうやって自分にとって有利な状況を来させる、相手の油断を突いた心理戦法。しかし、オイフェとスカアハには通じない。
「(敵が馬鹿だろうが、道化だろうが・・・・・・)」
「(油断など・・・・・・しない!!)」
オイフェが剣を振り上げ衝撃波を放つ。折り重なった触手が盾になるが、衝撃波の威力に耐え切れず破壊される。それでもアガムメノンに届かない。続けてスカアハは槍を降り、風の刃をいくつも飛ばす。血の爪で全身を覆い防ぎきるが、そこに冷気が吹き付け一瞬で凍結する。
「なっ―――!?」
「それで爪を振ることはできまい・・・・・・」
血の爪の強度は低い。槍を弾かれた時、爪も欠けていることをスカアハは見逃していなかった。そんな爪で氷を割ろうとすれば、逆に爪のほうが折れる。
「だが・・・・・・こんなもので捕らえたところで、お前たちの腕力では俺は倒せない」
「ふん、お前・・・・・・」
必死に平静を保とうとして嘲笑うアガムメノンに、スカアハは笑みを浮かべて答える。
「オイフェの力を、なめるなよ・・・・・・?」
意味を理解できないアガムメノンに、両腕を交差させて双剣を構えたオイフェが迫る。それを見て、アガムメノンは焦りとそれ以上の嘲りを込めて嘲笑した。
「バカめ!本気で切れると思ってるのか!?」
目の前に踏み込んだオイフェが双剣を振り上げ、氷解ごとアガムメノンを切りつける。砕ける氷の欠片、舞い散る血の爪の欠片、流れる血。さらに血の爪を生成しようとするが、すでにその体力は残されていなかった。
「おのれ・・・・・・我が野望も、ここまでか・・・・・・」
残っていた氷が砕けると共にアガムメノンの体も消えていく。剣を振り上げた両腕を下ろしたオイフェに、左手を上げたスカアハが話しかける。
「よっ。お疲れ」
「何がお疲れだ。人に汚れ役をさせて」
「何が汚れ役だ。戦場ではそれくらい当たり前だろ」
「それもそうだな・・・・・・」
と納得するが、すぐ言い包められたように感じる。そこに、翼が羽ばたく音が聞こえる。
「終わったみたいね」
「ああ、モリガンか」
見上げると、大きなカラスが降りてきていた。
「敵の主力は、あらかた片付いたようね。でも、東の戦場が劣勢みたい。いける?」
「当然だ。少々暴れ足りない気がしていてな」
「そうだな。口直しというわけではないが・・・・・・奴らに悪いが、思いっきり憂さ晴らしさせてもらおうか」
表情を引きつらせる二人の様子に、「何かあったの?」と戸惑いつつ聞く。
「何。私たちを慰みの道具にしようとした奴を、叩きのめした所だ。そいつが気持ち悪いのなんのって・・・・・・」
「うっわ~~、なんっ~命知らず・・・・・・」
一方で、モリガンは「(そして物好き)」と顔を逸らして思った。
「さて、さっさと行くぞ。オイフェ、さっきのように捕まったりやられたりするなよ」
「同じ失敗は繰り返さない」
「そうか。お前には生き残ってもらわないとな。ケンカができなくなっては、この先つまらん」
「その言葉、そっくりそのまま返してもいいか?」
物騒な雰囲気を漂わせながら歩く二人に、モリガンは帰りたいと思った。
―※*※―
スカアハとオイフェがアガムメノンを倒した頃。同時に、アテナとヘイムダルと戦っていたラオコーンとプレギュアスと戦い、ヴリトラがイクシオンとサルモネウスを追い詰めていた頃。同時進行していたそれらの戦いが終結に向かっていた時、ペイリトスと戦うブリュンヒルドの剣戟が激突している。だが、グナテルとの戦いで消耗が激しかったブリュンヒルドは押されている。
「加勢するぞ!!」
隙を見つけて援護に入ったマナナン・マク・リールの剣とペイリトスの振る短剣が火花を散らす。剣の強度が同じで破壊できない。あらかじめ呼んでいたことなのでさほど動揺もせず、突き出された短剣を仰け反ってかわす。左手に持っていた槍を振るが、もう一本の短剣に柄を切り落とされる。切り口が斜めなのでそのまま突き出したが、鋼鉄の鎧に阻まれ折れる。ブリュンヒルドとの剣の打ち合いは中断されたが、最後の左腕を振り下ろした一撃が彼女を吹き飛ばした。
「うあっ!!」
とっさに剣でガードしたが体勢は崩れており、そのまま地面に叩きつけられる。好機と思ったペイリトスが距離を詰めるが、同時にマナナン・マク・リールも向かって来ていた。互いの剣がぶつかり、弾くと同時に後ろに飛ぶ。
「次は貴様か」
「悪いな。疲労に付け入った連戦で・・・・・・」
「構わないさ。卑怯な強者が生き残るのは―――戦場の常だ!!」
飛びかかってくるペイリトスの剣を防ぎながら、マナナン・マク・リールは後ろに下がる。左右四本の長剣と短剣の剣戟だが、マナナン・マク・リールは受けきっている。
「仲間に被害が及ばないように誘導してるのか!?」
「それもあるが・・・・・・俺が戦いやすいように・・・・・・!」
ある程度まで離れると、剣を思い切り弾いてわずかな隙に踏み込む。
「―――するためだ!!」
脇腹目掛けて剣を振る。刀身は脇腹のスーツに切り込んだが、金属音と共に剣が止まる。二つの短剣がペイリオスの前後からマナナン・マク・リールの剣を止めていた。
「ウソだろ・・・・・・」
思わず呟く。笑みを浮かべたペイリオスが両腕の剣を振り下ろすが、寸前に後ろに飛んでかわす。地面に足が着くと、深く息をついて自分を落ち着かせた。
「(危ねぇ~~・・・・・・)」
冷や汗を流し弾ナナン・マク・リールは、拭いもせず剣を構えてペイリトスを見据える。
「(奴は双剣使いだが、二本の短剣は奴の望むとおり動くから実質四本の腕を持つ四刀流。透明な腕で動いてるのかどうかわからないが、あれを無視していたら確実にやられる・・・・・・)」
とはいえ、剣戟の打ち合いではどうしてもペイリトスが持つ剣に集中してしまい、短剣を見失いがちになってしまう。
「(どうしたものか・・・・・・)」
「どおおおおおおおおおおおおおお!!」
攻めあぐねているマナナン・マク・リールの耳に誰かの声が届く。ペイリトスの後ろから、剣を振り被ったアレスが飛びかかっていた。
「りゃあああああああああああああああああっ!!」
「はん!」
鼻で笑ったペイリトスが振り向くことなく、彼の後ろで交差された短剣がアレスの剣を受け止める。衝撃の強さにアレスの剣は亀裂が入るが、それはペイリトスの短剣も同じ。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「うるさい」
空中にも拘らずさらに踏み込んで短剣を破壊しようとするが、振り返ったペイリトスが剣に柄でアレスの腹を打つ。切ってもよかったはずだが、アレスの呆気ないほどの弱さを知っているペイリトスはそれで十分だと判断していた。
「げほっ・・・・・・!」
咳き込んだアレスが地面に叩きつけられ、盛り上がった土の中で体を起こす。それを見てペイリトスは嘲りを込めて鼻で笑い、切りかかってきたマナナン・マク・リールの剣を捌く。柄を切られて短くなった槍も振るが攻めきれず、左右の剣で弾かれてアレスの近くに着地した。
「くそっ、強い・・・・・・」
「わかってるなら、なんで大声を出して切りかかった?」
「そんなん、それで決まったほうがかっこいいからに決まってるだろうが!!」
どや顔で言ったアレスにうな垂れる。力を込めやすくするため。せめてそう答えてくれたほうがまだマシだった。
「あれで終わりか?つまらんな」
「へっ。言ってろよ」
不適な笑みを浮かべて立ち上がったアレスに、不安を覚えたマナナン・マク・リールが武器を構えながら声をかける。
「挑発に乗るなよ」
「はっ、誰に言ってやがる」
長い年月でのエインヘリヤルとの鍛錬や〈影の国〉での修行により学習し、成長している。それを知っているマナナン・マク・リールは、無闇に突っ込まないだろうと考えていた。
「挑発される前にぶっ飛ばしてやらぁ!!」
「そうくると思ったよ!」
真正面から突っ込むアレスに、マナナン・マク・リールはまたも唖然とし、ペイリトスは嘲笑う。アレスが振った剣はペイリトスの剣の片方に止められ、弾かれると共にもう片方の剣が振られる。
「突っ込み攻め続けるしか能がない戦神は愚かしい!!」
半ば無理矢理体を伏せてかわし、ぶつかった剣が地面すれすれに下ろされる。アレスが離さなかったため、すぐ反撃に移る。
「俺が勝てば、そうは言ってられないだろ!!」
弾かれた勢いのままに剣を振り上げる。それを体に食らいつつ、ペイリトスは両腕を振り下ろしてアレスを弾き飛ばす。
「そうだな。ただし、勝てばの話だ!」
続けてペイリトスが突っ込み、両腕の剣を振って畳み掛ける。剣を振って反撃するアレスだが、防御を視野に入れない攻撃一変で対応してるため、簡単に剣を弾かれてがら空きの懐に剣戟を食らう。鎧ごと体を切られ当然血が出るが、アレスは構わず剣を振りペイリトスを切りつける。よろめいた所にもう一撃放つが、それは構えた剣で防がれる。
「そういえば、貴様は血みどろの戦いを好むのだったな・・・・・・だから弱いんだよ」
「戦い方に『強い』も『弱い』もねえよ」
アレスの回答に眉を寄せる。
「それよりさっき何かしたか?痒すぎて気にかける必要すらないぜ」
「ほざけ!!」
傷を狙って蹴飛ばし、放り出されたアレスに接近する。剣を振り下ろそうとした時、割り込んだマナナン・マク・リールが槍を突き出す。穂先はペイリトスの胴鎧を貫いたが、無理矢理起動を変えた剣がマナナン・マク・リールを切りつける。左肩から二の腕を切られて血が流れ、顔をしかめながらも剣を叩きつける。振り下ろしていた腕は左腕だったため、その剣を止めることはできず、体に直撃を受けた。
アガムメノンの性格をもっとひどいものにしようと思ったのだけど・・・・・・ダメだ、自分じゃこれが限界だ・・・・・・