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幻想戦記  作者: 竜影
第3章
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第122話 因縁の対決⑦‐内に秘め、貫くもの






睦月はヘイルに剣をぶつけていた。かつて共に戦った上司の戦い方を見ていた睦月だったが、本性を現し、魔導変化したヘイルの戦い方に圧倒されていた。

「(くっ・・・・・・戦い方が全く違う・・・・・・)」

訓練、および共同任務の際には剣を主体とした戦法を取っていたが、今のヘイルは高質化した四肢で相手を攻撃する格闘戦をとっている。蹴り、ジャブ、フェイントをランダムに組み合わせた攻撃に、なす術なく吹き飛ばされる。

「がっ・・・・・・」

壁に叩きつけられた睦月の声に、ユウが顔を上げる。彼女は戦いの空気に押されており、床に座り込んで震えていた。

「がはっ・・・・・・くっ・・・・・・」

「睦月、君を鍛えたのは、この私だ。君の動きや癖などは全て把握してある。・・・・・・上司として、な」

腕で床を突き、起き上がろうとするが、体の痛みに中々起き上がれなかった。

「・・・・・・私が言ったことが気になるかね?まあ、無理もあるまい。君の故郷、『弧訓町こよみちょう』襲われた事件についてのことだから、ね」

「・・・・・・あれには・・・・・・裏がある、とでも言うのか・・・・・・」

「裏も何も、君の故郷を襲ったのは他でもない。我々、デモス・ゼルガンクだ」

「なっ・・・・・・」と騒然とした睦月を、ヘイルは見下すような目で見た。

「あれ?てっきり見当がついていると思っていたよ・・・・・・」

「だが、あれは・・・・・・確かに妖怪の仕業だと・・・・・・」

「確かに、目撃者は『妖怪の仕業』と言った。だが・・・・・・」

含み笑いの後、自らの左手を肩まで上げる。

「ここまで人間からかけ離れていれば、誰だって妖怪だと勘違いする。半妖だって、これほどではない」

「貴様はいったい・・・・・・」

一瞬、睦月を見た後、ヘイルは余裕からか視線を外して遠くを向いた。

「・・・・・・我々デモス・ゼルガンクは、人間が発する『負の感情』より形作られしもの。部下の中には、負の感情が強い人間を改造した者もいる」

ただし近年、ブレイティアの活動もあってかその『負の感情』エネルギーの回収が滞り、その上アポリュオンの魔導変化のコア消失などのアクシデントでデモス・ゼルガンクは弱体傾向にあった。

「貴様らの・・・・・・目的は・・・・・・なんだ・・・・・・」

息を切らせる睦月に、「残念ながら、答える義理はもはやない」と歩を進める。

「・・・・・・そろそろ、終わらせよう」

右腕の一撃を剣で防ぐものの、耐え切れずに吹き飛ばされる。

「お前らは我々には勝てない。なぜなら、我々はお前たち人間の真実の姿だからだ・・・・・・」

次の一撃を止め、「どういうことだ」と睨む睦月をヘイルが蹴飛ばす。

「(このままじゃ、ムーが・・・・・・でも、何もできない・・・・・・)」

ヘイルに向かおうとしても、体が震えて動くことすらできなかった。

「(怖い・・・・・・何もできない・・・・・・ムーはユウを助けてくれたのに・・・・・・ユウは・・・・・・何もできない・・・・・・)」

カティニヤスでディゼアと戦った時とは違う。動物の本能が感じ取る恐怖で体がすくみ、ユウは何もできない自分を恨めしく思った。

「(どうしたらいいの・・・・・・?)」

通路に叩きつけられた睦月が、呻き声を上げながらうつぶせになる。

「終わりだ・・・・・・」

「ムー!!」

起き上がろうとしている睦月に止めを刺そうとした時、ユウが思いっきり叫んだ。思わずヘイルは攻撃の手を止めユウのほうに目をやる。有利とはいえ敵から目を逸らす。それはヘイルといえども危険な行為で、睦月にとって大きなチャンス。

「食らえ!!」

爆発性の弾丸を込めた銃を向け、ほぼゼロ距離から発射する。至近距離からの発砲をかわしきれず受けるが、ヘイルにとっては少し熱い程度。高質化した足の蹴りを防ぐが、代わりに銃を潰される。衝撃で飛ばされた睦月が転がると、ユウがヘイルに跳びかかる。

「お荷物ごときが!!」

突き立てられた爪を腕の装甲で受け止め、反対の手で殴り飛ばす。腹を打ったユウは睦月のほうに転がり、咳き込んだ彼女に睦月が駆け寄る。

「・・・・・・ユウ・・・・・・なんでこんな無茶をしたんだ?」

「・・・・・・・・・」

睦月がユウを抱きかかえると、ヘイルは首を傾げる。

「ユウは・・・・・・ユウは、ムーのことが好き・・・・・・・・・これからも、ずっと一緒にいたい。お荷物なんかじゃなくて・・・・・・一緒に、同じ場所に立っていたい・・・・・・」

息をきらせながらもちに両手をつけ、ヘイルに飛びかかれるよう身構える。

「だから・・・・・・負けないで!ユウも、一緒に戦うから!」

睦月に向かって思いをぶつけるユウを見て、ヘイルが笑う。

「ククククク・・・・・・アハハハハハハ・・・・・・美談だな、睦月。よもや、お前らの仲がそこまで進展しているとは・・・・・・でも・・・・・・」

冷たく笑ったヘイルは、睦月に腕の爪を向ける。

「そんなもので変わるほど、現実は甘くない」

「確かにそうだ・・・・・・だがな・・・・・・」

睦月は腕に力を込めてゆっくりと立ち上がり、ヘイルを見据える。

「気休め以上には・・・・・・なるぜ・・・・・・!」

まだしっかりとした表情で、睦月はヘイルに剣を向けた。

「フン。空元気なのが・・・・・・丸わかりだ!!」

ほぼ同時に切りかかった睦月とヘイル。何度も剣と硬質化した手足がぶつかり、よろめいたヘイルをユウが爪で切りつける。胴体は四肢と違い硬質化しておらず、彼女の爪で裂けた胸から血が噴き出す。すぐ体に力を込めて傷口を圧迫するが、その隙を逃す睦月ではない。すぐ銃を抜き、その音を聞いたユウが離れると共に早撃ちの要領で高速連射した。

「ぐあっ!?」

被弾を信じられず、目を見張ったヘイルは膝を突く。常に神経を尖らせ、敵が作る隙を逃すな。それがヘイルの教えであり、彼を尊敬していたころ睦月は言われるままにしていた。

「(だが、今は違う!)」

ヘイルのやり方では脳にかかる負荷が大きい。睦月を始めとした部下にそう教えていたのは、万が一自分に反逆された時に倒しやすくするため。だが、ブレイティアに移ってから睦月は、無駄な力を抜いての状況判断力を磨いた。常に脱力した状態ではなく、神経を尖らせた状態でもなく、余計なことは一切考えない。睦月には、そのやり方があっていたらしい。

「(ぬかった・・・・・・彼が私の元から離れて三年。戦い方を変えていても不思議ではない)」

長年やって来た戦い方は癖にもなっている。それを三年程度の短い年月で変えられるはずがない。それを踏んで徹底的に教え込んだ。だが、目の前に立つ元教え子はそれを覆している。それが信じられず目を見張っているヘイルに銃撃を叩き込む。弾のリロードをしている間、飛びかかったユウが周りを高速で動きながら爪で引っ掻きまくる。

「ちぃっ!!」

再び両腕を硬質化し、それを盾にして耐える。マガジンラックに弾を込め、音を鳴らして銃口を向けると、ユウが瓦礫を蹴って離れる。しかしそこにヘイルが手を伸ばし、ユウの首を掴んだ。

「しま―――!」

声を漏らすユウを盾にして睦月に向ける。これでは睦月はヘイルを撃てない。

「こうなった場合、仲間ごと撃つように教えたはずだが・・・・・・ブレイティアに移って考えを変えたか?」

嘲笑い、開いている左腕を横にかざすと、後ろの空間が揺れ紫の光の矢がいくつも生える。左手の指を鳴らすと槍が飛び、睦月がそれをかわすと床や崩れた壁を砕いていく。回り込んでヘイルに銃を向けるが、即座にユウを盾にされて撃てなくなる。

「弱くなったものだ、睦月。かつての上官として悲しくなるよ・・・・・・」

「いいんですか?俺ばかりに気を取られて・・・・・・」

「何?」

ヘイルは眉を寄せるとその瞬間、腕に痛みが走る。硬質化が解けた右腕にユウの爪が突き刺さっている。腕を高質化すれば、その先の手も同じように硬くなる。彼女の首を閉めるためには、腕の硬質化を解かざるを得なかった。

「まさか貴様、これを狙って・・・・・・」

「それこそまさか。腕だけを硬くできないなんて、思いもよりませんよ・・・・・・」

それが、自分たちに想像の上を行くデモス・ゼルガンクならなおのこと。ヘイルのことも想像を裏切ってはいるが、別の意味で思いもよらないことでもある。そんなことお構いなく、ユウは何かを呟き続ける。爪を立てた箇所から魔方陣がいくつも現れ、それを見てヘイルは目を見張る。

「魔術だと!?獣人に魔術素養が・・・・・・」

「『一般論ほど当てにならない決め付けはない』。そう言ったあなたが一般論を口にするなんて、皮肉ですね・・・・・・」

驚くヘイルに銃を下ろして膝を突いている睦月が静かに言う。

「それに、それは魔術を放つためではなく、技を強化するためのマナを集めているだけです」

「何を強化すると言うんだ!?」

「吼えろ、冥府の真狼・・・・・・」

最後の一節を唱え、ヘイルに向けたユウの瞳が一瞬紫の光を放つ。

「ヘルズハウリング!!」

思い切り叫び、紫のエネルギーが獣の咆哮のような音を上げヘイルに襲いかかる。精神攻撃を食らったような頭痛がし、よろめいたヘイルからユウが離れると共に睦月が高速六連射で銃撃を叩き込む。

「ちぃっ・・・・・・!」

舌打ちしたヘイルが右腕に視線を向け、硬質化した腕がさらに肥大化して刀剣の形を取る。目を見張る睦月に迫るヘイルに、慣れない魔術の反動とヘイルの迫力に飲まれて体がすくむユウはその前に飛び出すことができない。睦月は使い切った銃弾をリロードする時間はなく、銃身の下に仕込まれた刀剣を展開した。

「そうだ、お前はそうするしかない!そしてこの切り合いでは、お前は勝てない!」

質量も鋭さもある刀身の前では、睦月が持つ銃剣は勝ち目が薄い。避けた所でヘイルは剣を振って睦月を捉える。それなら、睦月には打って出るしかない。銃剣を構え飛び出した睦月に、ヘイルは叫んだ。

「そうだ、それでいい!神道睦月!」

最も愚かで、最も気にかけた弟子にヘイルは心から賛辞を送った。

「ムー!!」

二人の剣が交差し、ズバッと音が響いた。この音がしたということは、どちらかが確実に切られたと言うこと。場を沈黙が支配し、やがて地面に血が滴り落ちた。



                      ―※*※―



屋根の一部が砕け、立ち昇った煙の中に一人の影が映る。煙が晴れてそこに現れたのは、先端が槍のように尖ったツインテールに、同じく先端が尖った爪を持つ、まだ年端も行かない少女。妖力を解放して変化したサツキだった。

「ククク・・・・・・」

含み笑いをする声と共に、彼女の前にギバ・ゲルグが現れる。

「その姿。魔導変化した我らと、なんら変わりはないな・・・・・・」

「黙れ・・・・・・」とサツキが睨みつける。

「お前の仲間以外の者が見たら、どんな反応を示すだろうね?」

笑みを浮かべたギバ・ゲルグを、サツキが殴りつけた。

「黙れ・・・・・・と言っている・・・・・・」

後ろの塔の壁に叩きつけられたギバ・ゲルグは、「ククク」と笑いながら立ち上がり、口元の血を拭う。

「赤い血・・・・・・お前たちは、人間の証とかほざいていたな・・・・・・」

「だから、何?」

冷たい声で聞いたサツキの頬を、伸びた腕の爪が掠めた。切れた箇所から、赤い血が流れる。

「半妖ですら血が赤いというのか・・・・・・ふざけるな」

「・・・・・・・・・あんたは、何が言いたいの?」

「ククク」と笑い、ギバ・ゲルグはあらかじめ潜めていた触手を、サツキに巻きつけた。

「しまっ・・・・・・」

「半妖だとばれてからの日々は、色々と因縁をつけられて辛かっただろう!!」

触手が首を絞め、「かっ・・・・・・」と息が詰まる。

「もう二度と思い出せないように、楽にしてやるよ・・・・・・」

「死が楽になれるなど、ただの押しつけだ!」

声の後に触手が切られ、サツキを締め付けていた力が緩む。彼女の前には刀を振り上げた光輝がおり、屋根の上で咳き込んでいるサツキの側には弥生が付き添っていた。

「大丈夫?」

「弥生、光輝・・・・・・ごめん、先走っちゃって・・・・・・」

「過ぎたことは気にするな」

刀を構えている光輝に、「貴様」とギバ・ゲルグが呟く。

「その女・・・・・・半妖だぞ」

「だから?」

「怖くはないのか?」

「彼女を恐れる理由が、どこにある・・・・・・」

光輝の答えに、「なるほど」と呟く。

「その女が、自分を迫害していたはずの人間を守ろうとする理由は、貴様らか・・・・・・」

「だったら、何?」と弥生が睨みつける。

「その二人が死ねば、半妖の女が人間側に執着する理由がなくなる・・・・・・」

「させないよ、そんなこと」と立ちあがったサツキが睨みつける。

「二人は殺させない。私にとって、初めてできた友達だから!!」

「ちっ」と忌々しげに舌打ちすると、八本の触手を引き寄せ、切られた箇所を再生させる。

「その虚勢、砕いてやるよ・・・・・・」

ギバ・ゲルグが左手で指差し、八本の触手が伸びる。屋根というバランスの取りづらい足場に、戦う前から弥生と光輝は不利に立たされている状態。そんな中、触手を弾いたのはサツキが伸ばしている髪の槍でガードする。

「来ないなら、さらにこちらから行くぞ」

仕掛けて来たギバ・ゲルグの攻撃を、弥生が投げたいくつもの札が壁を作って防ぐ。まさか神である札に防がれると思わなかったのかギバ・ゲルグが目を見張り、その札の壁をサツキが突っ切る。

「はぁっ!!」

弾き飛ばした直後、追い討ちを仕掛ける。右の髪の槍の攻撃を囮に攻撃を誘い、狙い通りギバ・ゲルグはその攻撃を左腕で牽制する。そこを突いて懐に飛び込み、左腕の爪を突き出す。フリーだった右腕で弾かれたもののそれ自体も囮で、サツキの本命である右腕の攻撃がギバ・ゲルグの体に直撃した。

「がぁっ・・・・・・!!」

口の辺りまで出た血を目潰しにしようと吹き出したが、サツキはそれを後ろに下がってかわす。その隙に、ギバ・ゲルグは屋根を転がり落ちた。

「(下に逃げる気!?)」

すぐに追おうとしたが、ギバ・ゲルグは途中で止まると迎撃体勢をとる。屋根を転がり落ちたのは、サツキを迎え撃つための罠だった。

「くっ・・・・・・!」

直撃をくらうと思ったその時、急にギバ・ゲルグの体が落下し始めた。自分が叩きつけられた塔の頂点に巻きつけていた触手が、途中から焼き切れていた。

「(これは―――協力組織の報告にあった、視界に作用させる術か!?)」

報告があった数日後に、悪路王の部隊が裏切ったという報告があったので、ギバ・ゲルグは対して気にしていなかった。術を放った相手を見ると、刀を振り上げた光輝が屋根の上を駆けて突っ込んだ。

「(速い・・・・・・しかもっ!!)」

「だぁあああああああっ!!」

光輝の刀は、ギバ・ゲルグの腹部に命中する。

「(踏み込みが・・・・・・深い!!)」

屋根から落ちたギバ・ゲルグは庭に落下し、光輝はギリギリ、サツキの髪の槍に引っ掛けられて落下を免れた。必死な表情で引き上げ、サツキは息を切らせながら光輝を屋根の上に下ろす。

「・・・・・・ナイス」

親指を立てる光輝に、「「ナイスじゃない!!」」とサツキと弥生が怒鳴る。

「落ちたらどうするの!?」

「そうなる前に、サツキが助けてくれただろ」

「そういう問題じゃ・・・・・・」

サツキを見た光輝と苦い表情で言う弥生をさえぎり、「それより・・・・・・」と庭を見下ろす。落下でくぼんだ地面のギバ・ゲルグは、立ち上がってこちらを見ていた。

「屋根から落ちたくらいで、死ぬと思ったか・・・・・・?」

「打ち所が悪ければ、人間でも死ぬよ」

「愚かな」と笑い、ギバ・ゲルグは体を大きく前に倒した。

「来るぞ・・・・・・」

光輝の予測どおり、ギバ・ゲルグが飛びかかってくる。左に離れた弥生はポケットから出した札を投げ、札の周りに発生した透明な壁がギバ・ゲルグの爪を阻む。

「―――!?結界・・・・・・」

「でやぁっ!!」

髪の槍を柱に巻きつけたサツキが振り子の要領で攻撃を仕掛ける。爪で防ぐが、足場に足がついていなかったので簡単に飛ばされる。その先で待ち構えていた光輝が居合い抜きで切りかかるが、瞬時に判断して振り返り、刀を捌く。右から、左から繰り出される斬撃を、ギバ・ゲルグはことごとく防いでいた。

「こ・・・・・・のっ!!」

光輝の攻撃を余裕で捌くギバ・ゲルグに、サツキが突っ込む。背中の触手を突き出すが、髪の槍で貫かれた後に、両腕の爪で両断される。逃れようと横に飛ぶが、見えない壁に阻まれる。一瞬、周りを見ると無数の札が浮いていた。

「また・・・・・・結界・・・・・・」

その結界は弥生が援護のために張ったもの。アイコンタクトを受け取ったサツキと光輝が仕掛けた。

「ちいっ!!」

サツキと光輝を再生した左右の触手で迎え撃つ。しかし、光輝の刀は簡単に両断し、サツキに至っては話しにもなっていなかった。

「貴様ら!!本当にお互いが必要だって思っているのか!?利用し、利用される関係。便利な存在として使ってるんじゃないのか!?」

「そんなことは―――ない!!」

叫んだ光輝の刀が触手を切り裂く。しかし、切られた側から再生して、再び襲いかかる。

「理解できない力を持った奴に、嫉妬と恐怖を向ける・・・・・・それだけの奴らがああああああああああああああっ!!」

「確かに人間は、恐ろしいものから逃げようとするし、目を背けようとする。だけど、それは!身を守るために感じる感情なのよ!!」

「その感情の行き過ぎのせいで!いったい何人、力に目覚めた者が犠牲になったと思ってる!!」

「―――っ!それは・・・・・・」

攻撃が止まったサツキに触手が襲いかかるが、弥生の投げた札が張った結界がそれを防いだ。

「庇うか?友達だからか?・・・・・・ぬるい!うそ臭い!!どうせ、利用してるだけのくせによぉ!!」

「違う!」と叫ぶ弥生に、「違うものか!」とギバ・ゲルグはあざ笑う。

「特異なものを恐れ、抹殺する。でなければ、いいように利用する!貴様らも、一瞬でも思ったことはあるだろ!!」

それを聞いて、弥生は目を見張り、光輝は歯軋りをする。それを見てギバ・ゲルグは、口元に笑みを浮かべる。

「ほら、見ろ・・・・・・偽善者どもが!!!」

光輝と弥生に攻撃を集中させるが、弥生は数枚の札で作りだした結界で止め、光輝は瞳術の力で止めた後、魔力で刀身を伸ばした刀で弥生のほうに伸びている触手もろとも切り飛ばした。

「・・・・・・あんたが何を言いたいかは、よくわかる」

「わかるものか!」と叫んだギバ・ゲルグに、「わかる!!」と光輝が吼える。

「全部・・・・・・言われたことだから、な」

驚きに目を見張る隙を突き、光輝はメガネをずらして、触手の切り口それぞれに視線を集中させる。傷口から煙が上がり、ギバ・ゲルグは激しい痛みに顔をしかめた。

「(しまった。これでは再生が・・・・・・)」

一方、光輝のほうも激しい頭痛に頭を押さえる。

「(仕掛けるなら・・・・・・今だ!!)」

光輝が目を見開くと同時に、サツキが屋根の上を走って突っ込む。ギバ・ゲルグの気がそっちに逸れた瞬間、光輝も刀を下段に構えて走った。

「はああああああああっ!!」

「だぁあああああああっ!!」

サツキの両方の槍と右腕の爪と光輝の刀が、ギバ・ゲルグを前後から直撃した。

「がああああああっ!!!」

二人がすれ違うと、ギバ・ゲルグは再び庭に落ちる。致命傷とも言える傷を負っているため、今度は着地に失敗した。

「ク・・・・・・クククク・・・・・・クククククク・・・・・・」

含み笑いをしながら、ギバ・ゲルグは立ち上がる。

「お前たちは必要にしていようと・・・・・・全ての人間がそうとは限らない。お前たちがしていること・・・・・・信じること・・・・・・全てが無駄だと、いずれわかる!!!」

そう言い残し、ギバ・ゲルグは爆発した。






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