第121話 因縁の激突⑥‐否定するもの、肯定されるもの
建物に振動が起こる。壁に大きな穴が開き、崩れた箇所からは土煙が立っていた。衝撃で叩きつけられた睦月とユウも、体を起こした。
「う・・・・・・大丈夫か?ユウ」
「・・・・・・うん、平気。ムーこそ、大丈夫?」
「何やってんだよ・・・・・・」
そこに、文句を言う男の声が聞こえてきた。振り返る睦月だが、辺りを覆う埃に映った影は、自分に文句を行ったのではないとすぐわかることになる。
「・・・・・・仕方ないでしょ。それに、男がグチグチと文句を言ったりしない」
「それにしても・・・・・・静かすぎますね。罠でしょうか・・・・・・」
煙の向こう側からした声に、睦月は聞き覚えがあった。そこに、
「まったく、何をしてくれるんですか」
さらに聞き覚えのある声が、奥から聞こえて来た。
「・・・・・・特攻で刺し違える、なんて愚かな真似をするかと思ったら・・・・・・違ったようですね。失礼致しました」
煙が晴れた向こう側にいたのは、信玄、アオイ、弥生、光輝、サツキの五人。さらにその奥に、ヘイル、ギバ・ゲルグ、リバ・ゲルグの三人がいた。
「あんたは・・・・・・あの時の・・・・・・」
「・・・・・・ヘイル・・・・・・!!」
サツキと睦月の顔が厳しくなる。
「・・・・・・あの時の生け贄ちゃんか。ここまで来たことを後悔させてやるよ・・・・・・」
ギバ・ゲルグが腕を構えた瞬間、力を解放したサツキが飛びかかり、自らと共に壁の向こうに飛び出していった。
「サツキ!!」
後を追いかけようとした弥生の前に、リバ・ゲルグが立ちはだかる。
「・・・・・・ヘイル、残りの奴ら、みんなくれよ」
「ダメだ」と、ヘイルは腰の剣を抜き、睦月に剣先を向ける。
「―――『部下の不始末は上司がつける』・・・・・・そう言ったはずだ。お前の力試しの時に仕留められなかったこいつは、悪いが俺が始末する」
その会話に違和感を覚えた睦月は、「どういうことだ!?」と叫ぶ。
「さあな。私に勝てば教えてやろう!!」
「―――!?」
一瞬で現れたヘイルの一撃で、睦月は後ろの床に叩きつけられる。
「ぐあっ!」
「ムー!」
睦月を追いかけて行ったユウを、「待って!!」と追いかけようとした弥生の前をリバ・ゲルグの攻撃が掠める。
「・・・・・・残り物の相手は俺だ」
その場に残された信玄、アオイ、弥生、光輝は、リバ・ゲルグを睨む。
「・・・・・・こいつの相手は俺だけで十分だ。二人はサツキと睦月たちを追ってくれ」
「わかった」と弥生とアオイが駆け出そうとした時、リバ・ゲルグが爪を振りかざして襲いかかる。
「させるか!!」
しかし、アオイの前に現れた信玄の刀が、その爪を受け止める。
「・・・・・・貴様の相手は俺たちなんだろ?だが、お前の相手は俺一人がしてやる・・・・・・」
金属音が鳴り響くと、二人はお互いに距離をとる。その間にアオイは睦月とユウを、弥生と光輝はサツキをそれぞれ追って行った。
「・・・・・・愚かな。お前一人で、この俺に勝てると思っているのか?」
「・・・・・・少なくとも、お前には勝てると思っている・・・・・・」
肩幅に足を開いた信玄は、刀を下段に構え心を静める。心なしか彼の周りに風が巻き起こり、リバ・ゲルグは目を細めた。
「・・・・・・疾きこと、風の如し」
刀を横に構えると、残像を残すほどのスピードでリバ・ゲルグの目の前に現れる。しかし、刀が当たる直前にリバ・ゲルグは遥か後ろに下がっていたので、信玄の刀は空を切った。
「―――!?」
「・・・・・・誰が、お前一人で十分だって・・・・・・?」
頭を手で押さえてこちらを向いたリバ・ゲルグの目は、基地のエントランスに入った時と同じように大きくなっていた。
「・・・・・・貴様の剣技、『風林火山』については、こちらも調べがついている・・・・・・」
目の大きさを戻すと口元に笑みを浮かべ、リバ・ゲルグは自分の目を指差す。
「・・・・・・俺の目は、あらゆる生物の動きを捉えることができる。どんなに早く動こうと、な」
余裕の表情のリバ・ゲルグに、信玄は黙って刀を構える。
「お前自慢の『風林火山』、俺には効かないぞ!!」
―※*※―
建物の一角、ユーリとミリア。建物を揺らした揺れに立っていられず、通路の床に手をつけていた。
「今の・・・・・・揺れは・・・・・・?」
「お前らの仲間が、特攻を仕掛けてきたんだよ」
「誰だ!?」
ユーリが声のほうを見ると、前に自分を圧倒し、ミリアと引き分けたガレゼーレが二人の前に現れた。
「貴様が来たか!」
ユーリはすぐさまサーベルを抜き、魔力を解放したミリアの背中にヴィーヴル特有のコウモリの翼が生えた。
「・・・・・・ヴィーヴルの力・・・・・・しかも、どちらも魔術の素養がある。面白い・・・・・・」
ガレゼーレは少しジャンプすると、四肢を長く伸ばした。
「いきなり!?」
「飛ばしていくぞ!!」
驚いたミリアにガレゼーレが腕を振り下ろす。少し体を寄せてかわすと、ユーリのサーベルがその腕を切り飛ばす。
「ぐわぁああああああっ!!」
傷口を押さえて悲鳴を上げるガレゼーレにミリアが迫る。悲鳴を上げたのは動揺を誘うためで、その隙にムチを叩きつけようと思っていた。だが一方で、ユーリに腕を切り落とされるとは思っておらず、それが彼を苛立たせた。
「・・・・・・貴様・・・・・・いきなり、やってくれたなあああああああっ!!」
左腕を失って逆上したガレゼーレの攻撃の合間をぬい、ミリアとユーリは距離を詰める。
「ヒートバイト・・・・・・」
「はああっ・・・・・・」
赤く発光したミリアの右手とユーリのサーベルが、ガレゼーレの体に直撃した。だが、その攻撃を踏み止まり二人を睨みつけると、体全体をコマのように回転させてなぎ払った。
「・・・・・・簡単に終わると思ったか。ザコが!!」
「くそっ・・・・・・」
立ち直ったユーリにガレゼーレが足払いをかけるが、ジャンプでかわす。しかし、伸ばしていた左腕に巻きつかれ、そのまま床に叩きつけられる。
「がはっ・・・・・・」
「ユーリ!!」
駆けつけようとしたミリアに、「シャラアアアアッ!!」と両足を向け、攻撃してきた。
「このっ・・・・・・ヒート・バイト!!」
手に火属性の魔力を込めて捕まえようとしたが、高速で振られる上に威力も高いためミリアが捕まえることは容易ではなく、掠めるのが精一杯だった。
「くっ・・・・・・捕まえられない・・・・・・」
「高速で動く極太ムチ!簡単に捕らえられるものか!」
その隙に、ユーリは巻きついている腕をなんとかサーベルで斬りつけた。痛みで力が緩んだ一瞬を突いて脱出したユーリはすぐに斬りかかるが、ガレゼーレは腕のムチを振って近寄らせなかった。
「くそ・・・・・・」
サーベルに魔力を流して刃を形成するが、サーベルが振りづらくなり、逆にかわされやすくなった。
「(・・・・・・まずい。この状況が続けば、ますます不利に―――)」
その焦りをあざ笑うかのように、ガレゼーレは攻撃を潜り抜け、戻した足でユーリを踏みつける。
「魔術が使えるとはいえ、所詮は人間だ!」
「がはっ・・・・・・」
「ハハハ、死ぬがいい!愚かで脆弱な人間よ!」
胸元を踏みつけられ、「がはっ・・・・・・」と咳き込む。
「やらせない!!」
ユーリを助けるためミリアが突っ込むが、死角から突っ込んできた右腕の一撃で床に叩きつけられた。
「があっ・・・・・・!!」
「ミリア・・・・・・」
「―――貴様らが終われば、次はこの基地に侵入した愚か者ども!次は我らに逆らう者!その次は全世界の知性体を、根絶やしにしてくれる!」
上を仰いで「ハーハッハッハッハッハ!!」と高らかに笑い声を上げるガレゼーレから逃れ、彼を睨みつけてユーリが呟く。
「・・・・・・狂って・・・・・・やがる・・・・・・」
息を切らせるユーリをガレゼーレのムチが襲いかかる。なんとか立ち上がったミリアは、圧倒されるユーリを目の前にして呟く。
「どうして・・・・・・」
その小さな声が聞こえたガレゼーレは攻撃の手を止めた。それが隙にはならない。その時ユーリは、外側の壁に叩きつけられて床に崩れ落ちていた。
「どうしてそんなに、命を奪いたがるの!?」
耐え切れず叫んだミリアに、ガレゼーレは残虐な笑みを浮かべて顔を向ける。
「愚問だ。無意味に命を奪い、軽視するお前ら人間に、そんなことを言われたくないな」
「そんな・・・・・・そんな人間ばかりじゃないわ!私やユーリだって・・・・・・」
「ならなぜ戦う。貴様だって我らの多くの同胞から命を奪い、ここに立っているのだろう・・・・・・」
「私たちだって・・・・・・好きで奪ってるんじゃない!!」
「・・・・・・答えになってないな・・・・・・」と、ミリアに左腕を向ける。
「・・・・・・正義のためとか、世界のためとか言っておきながら、結局同じなんだよ。我々とお前らは・・・・・・」
ショックで固まったミリアに、ガレゼーレが溜めた魔力を打ち出そうとする。
「・・・・・・同じ穴の―――ムジナなんだよ!!俺たちはああああああああああああああああああっ!!」
目を見張ったミリアに攻撃が放たれると思った瞬間、ガレゼーレが口から血を吐く。下に目をやると、ユーリのサーベルが自分の胸元を貫いていた。息も絶え絶えのユーリに、ガレゼーレは笑みを浮かべた。
「・・・・・・ククク・・・・・・いい顔だ。そうだ・・・・・・そういうことだよ・・・・・・」
溜めていた魔力が消えると、ガレゼーレは「ククク・・・・・・」と笑いながら後ろに下がった。その拍子に、サーベルが胸から抜ける。
「ハハハハハハ・・・・・・肉を割き・・・・・・骨を砕く。相手が死ぬまで続ける・・・・・・。それが戦いだよ・・・・・・」
血が流れる胸を押さえ、起き上がろうとするユーリとミリアを見据える。
「・・・・・・そこに妥協などない。敵だろうが、味方だろうが・・・・・・善であろうが、悪であろうが・・・・・・変わることはない・・・・・・」
胸元を押さえて立ち上がったユーリに、ミリアが駆け寄る。
「―――お前らがやっていることも、否定していることも・・・・・・『命の取り合い』なんだよ!!ハ~ッハッハッハッハッハ!!」
大きく上を仰いで高笑いすると、ガレゼーレはユーリとミリアを睨みつけムチを振るう。防戦一方の中、ユーリが呟く。
「・・・・・・・・・違う」
「何が違う?」
「違う!!」
「何も違わんさ!」
「本質は同じだとしても、俺たちとお前たちでは違うとこがある!!」
叫ぶユーリにムチを振るのをやめ、ガレゼーレは忌々しそうな表情で彼を指差す。
「向いてる場所か?目指してるものか?そんな答え・・・・・・子供の言い訳に過ぎん!!」
「そうだろうな・・・・・・俺たちは言い訳で固めて自分を守っている。否定できない・・・・・・でも、こうやって戦ってる理由を考えたら・・・・・・」
「命の奪い合いも仕方ないと?」
「そうは思わない。思えば、貴様らと同じになる・・・・・・」
「・・・・・・お前たちはそうならない。それが違いだと?バカな・・・・・・」
その否定は嘲笑。ユーリの答えは愚もつかない、安っぽいと取られても仕方ないもの。だがなんにせよそれを答えとしたなら、心を砕くガレゼーレの狙いは外れた。
「くだらないな・・・・・・目を背けるガキが・・・・・・!」
「それは俺らのことか?それとも・・・・・・」
ムチを振り上げたガレゼーレにユーリはサーベルを構えて静かに問う。
「・・・・・・・・・お前自身のことか?」
「―――!?」
一瞬、ガレゼーレが動揺した。その瞬間にムチの動きがブレ、ミリアの火炎弾が起こした爆発で道が開ける。爆発の炎が消えぬ内から駆け出したユーリは、距離を詰めてサーベルを振り下ろした。飛び散る鮮血。仰向けに倒れ、そのまま息絶えた。
「・・・・・・・・・ユーリ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
黙り込んでいるユーリの顔を、心配そうにミリアが覗き込む。
「・・・・・・心配ないよ。ユーリも私も・・・・・・『力』の恐ろしさも、『戦い』の辛さも知ってる・・・・・・きっと・・・・・・」
「それが・・・・・・やつらとの違い・・・・・・か・・・・・・」
そう呟いたユーリを心配そうに見るが、「大丈夫だ」と答える。
「迷わない。今は・・・・・・そんな暇なんてない・・・・・・」
「ええ」とミリアが頷くと、近くの天井と壁を砕いて何かが落ちてきた。砕けた瓦礫と煙の隙間に、二人は人の顔を見つけた。
「えっ・・・・・・あれ・・・・・・」
「・・・・・・!?」
何かはさらに床を砕き、外に飛び出して行った。
「なんだ・・・・・・あれは?」
そこに、「ユーリ・・・・・・?ミリア!?」と声がした。二人が振り向くと、天井に開いた穴から弥生と光輝の姿が見えた。
「弥生・・・・・・と、誰だ?」
「何、言ってるの。文月光輝くんでしょ」
首を傾げるユーリにミリアが言うと、その間に弥生と光輝が瓦礫を伝って降りてきた。
「・・・・・・お前ら、なんで二人なんだ?確か、チームは四人一組だったはずじゃあ・・・・・・」
「敵の策略に乗せられて、分断されたんだ。まあ、あの状況だったら、全滅の危機もあった・・・・・・」
「・・・・・・全滅を回避するためには、あえて敵の手に乗るしかなかった、というわけか・・・・・・」
苦々しげな表情の光輝に、「ああ」とユーリも苦笑いした。
「早くサツキを追わないと。一人じゃ危ないわ」
「何!?さっきの人影はサツキだったのか」
目を丸くしたユーリが弥生を見た。頷いた弥生に、ユーリはわずかに違和感を覚える。
「(・・・・・・しかし、あの一瞬・・・・・・落ちる瓦礫の間から見えた目からは、何かを感じた。何か・・・・・・)」
穴から外を見ている、ミリアに視線を向ける。
「(・・・・・・ミリアと同じ力の気配を感じた・・・・・・)」
しかし、その気持ちは恐怖とは違う、好奇心のようなものだった。
「(こんな時に何考えているんだか・・・・・・)」
反省したユーリに「どうかしたの?」とミリアが話しかける。
「なんでもない。それより、そのサツキって奴、追えるか?」
ユーリも穴に駆け寄ると、そこから外を覗き込む。
「・・・・・・わからない。ただ、屋根の上を移動していることは確か見たい・・」
よく見ると、屋根の所々に壊された跡がある。
「・・・・・・俺たちも屋根の上を通るか・・・・・・」
「ええ~~~!」
ミリアが声を上げたが、弥生と光輝が屋根の上に飛び降りると、ユーリは促すような目でミリアを見た。
「・・・・・・わかったわよ・・・・・・」
ミリアは観念したようにうなだれると、二人を追って穴から屋根に飛び降り、ユーリもそれを追って屋根の上に飛び降りた。
―※*※―
一方。その中を進んでいたセリュードたちは、突如、立ちはだかったカルマに苦戦を強いられていた。いつものカルマの実力ならセリュードたちは食い下がるどころか押し勝てるが、今のカルマは今まで敵を倒すのにセリュードたちが使った技をコピーして使っているので、全員思わぬ苦戦をしていた。
「うおぉおおおっ!ライジング・ルピナス!!」
「無駄だよ!フォーリング・アビス!!」
ディステリアが天魔剣を振り上げて立ち昇らせた光の柱を、カルマが腕を振り下ろして放った闇の流星が打ち消す。技導師の激突の衝撃が走り、ディステリアが顔をしかめる。
「くっ・・・・・・」
「ハハハ、残念だったね。今までの君たちの戦いから、ばっちり技はコピーさせてもらったよ♪」
「ちぃっ!!」
クウァルが右拳を構えて突っ込むが、「無駄だよ!」と作り出したクリス・ウォールに阻まれた。
「これは・・・・・・セルスの・・・・・・」
「ご明答♪」
水晶の壁を消した後、カルマの右手が連続で突き出された。その鋭い突きはまるで、槍で突いているようだった。
「セリュードの連続突き・・・・・・普通の攻撃は、コピーできないんじゃなかったのか・・・・・・」
「三年の月日は、伊達じゃないんだよ!!」
剣のように振られた左腕に吹き飛ばされ、クウァルは後ろから突っ込んでいたセリュードにぶつかってしまった。
「・・・・・・くそっ・・・・・・」
「こんな奴に・・・・・・」
天魔剣を構えるディステリアだが、攻撃をコピーするカルマに打つ手がなかった。
「・・・・・・下手に攻撃すれば、その攻撃をコピーされる。でもこのままじゃあ・・・・・・」
「打つ手なし?手詰まり?だったらこっちから行っちゃうよ?」
まるで無邪気に遊んでいる子供のように笑い、カルマは肩の辺りまで上げた両腕に炎をまとう。
「俺のレイジングフィストを・・・・・・!」
三年かけて血の滲むような修業を経て手に入れた技を、見られただけであっさりコピーする。そんなカルマに怒りを覚えるが、真っ向から突っ込んだら技をコピーされるかコピーした技でカウンターを食らうかのどちらかということは目に見えていた。
「じゃあ、遠慮なく・・・・・・」
「ブリザード!!」
攻めようとしたカルマを冷気が吹きつけ、両腕の炎を消す。両腕で頭を庇って防御したカルマは、ブリザードが収まると杖を向けているセルスを見てせせら笑う。
「おいおい、優しいね~~。わざわざ僕に、新しい技を教えるなんて・・・・・・」
おかしそうに笑いながら腕に冷気を溜める。がその時、死角から飛び込むセリュードが鋭く槍を突き出す。気付いていたカルマはそれをかわし腕に溜めていたブリザードを叩き込むが、セリュードは左腕に持っていた何かでカルマの腕をいなし、それをかわす。
「(なんだ?あいつ、何を持っていた!?)」
動揺したカルマに、クウァルとディステリアはそのチャンスを見逃さなかった。
「今だ!!」
セリュードの声で即座に散開するディステリアたち。左右に別れたクウァルとディステリアの攻撃を、カルマはギリギリでかわした。
「うわぁあっ!あ・・・・・・危ないじゃないか!」
逃れたところにセルスがファイアボールを連発する。
「どひゃぁあっ!!」
コピーする暇もないのか、コピーした技を放つ暇もないのか、セリュードの槍とディステリアの剣、セルスの魔術とクウァルの拳を交わし、カルマはただ逃げ回るだけだった。
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!た、タイム、タイムううううううううううっ!!」
「この期に及んで・・・・・・」
逃げ回るカルマに容赦なく攻撃するのは気が引けるが、今まで人々を襲い恐怖に陥れたデモス・ゼルガンクなら話は別。いわゆる、年貢の納め時、に当たるかもしれない。
「ディステリア!!」
「おおおおおおおおおおっ!!」と突っ込んだディステリアの翼が、純白から漆黒に変わった。
「コピーなどさせずに決める!!テネブラエ・シュナイド!!」
闇の力で作り出された漆黒の刃が、カルマの体を一刀両断した。
「うわぁあっ!!僕の出番は、ここまでかあああっ!!」
明るい断末魔の後、カルマは爆炎の中に消えていった。漆黒の羽根が消えると、ディステリアは天魔剣を振る。
「さあ、次だ!」