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幻想戦記  作者: 竜影
第2章
133/170

第113話 絶望と『試練の時』の襲来






ブレイティアの本拠地〈名も無き島〉に、三十代後半の男性や若い女性といった十人ほどの団体が来訪しており、クトゥリアとパラケルが出迎えをしていた。

「お久しぶりです、クトゥリア殿」

その中の鎧を着た黒いいかつい髭の男性と、それに付き従う逆立った髪の男性がクトゥリアとパラケルのほうにやって来た。

「久しぶりだな。アシパトル・ジャック卿、ブルータス・コリネウス将軍。最後にお会いしたのは確か、巨人竜を討伐する時でしたね。あの時のブルータス将軍の勇士は、まだ昨日のことのように覚えていますよ」

「あなたが言うと、嫌味にしか聞こえないのだが・・・・・・」

ブルータスが苦笑いすると、その後ろからマントを身に着けた三人の男性がやって来た。三人は右から青、群青、深緑色をしており、年齢は全員、二十代後半から三十代前半のようだった。

「ああ、これは、これは。右からモリス・バークレー卿、ラリストン・ウォード卿、ウォーン・クリフト卿。邪竜を倒した『三勇卿さんゆうきょう』がそろいましたな」

底抜けに明るいクトゥリアの言葉にモリスら五人が暗くなると、パラケルは首を傾げた。

「あれ・・・・・・?皆さん、どうかした・・・・・・」

言いかけると、その理由を思い出したパラケルは口を押さえた。

「ああ、すみません。あれに触れるのは禁止でしたね。どうも、すみま・・・・・・」

「いまさら遅~~~~~い!!」と五人が叫ぶと、「静かにしろ!!」と女性の一喝が飛んだ。

「つまらない言い争いをする暇があるのか!?」

腰の辺りまで伸びた黒髪の女性が一喝する。軽装形態なのか、まとっている鎧は見る者に軽い印象を与え、肩や胸元からは白いレース状の布が覗いていた。

「来るのが遅くなってすまなかった。国内の情勢を整えるのに、思った以上に手間取ってしまって・・・・・・」

「ベルフォード卿、来てくださったのですね。お忙しい中、感謝します」

「・・・・・・別に忙しくはない。だが、元老院のほとんどの連中は、私がしばらく離れることをむしろ喜んでいた・・・・・・」

忌々しげな表情のベルフォードに、「ヘイズリック卿」と近くにいた鋭い目つきの男性が話しかけてきた。

「クトゥリア殿。こういう場では、名字で呼び合うことが礼儀であろう」

「別にいいではないか。我らは共に戦った仲であろう、ウェント・ガーランド将軍」

軽い言葉のクトゥリアに、「『親しき仲にも礼儀あり』と言うだろう」とウェントは溜め息をつく。

「ああ、それもそうだ。しかし、私はちゃんと名字で呼んだが?」

「何をとぼけている。馴れ馴れしく『ベルフォード卿』と呼んでいただろう」

「あれ、そうだっけ?」ととぼけるクトゥリアに、「やはり、食えない男だ」と呟いた。

「まあまあ。それと、あなたがパラケル殿ですね。お話は常々、クトゥリア殿から聞いていました」

右手を差し出すアシパトルに、「聞いていた?」と眉をよせる。

「クトゥリアがあなた方に出会ったのは、確か18年前。とある巨大竜を討伐するために、エウロッパ各地から名のある将軍たちが集まった時と聞きましたが・・・・・・」

不審がるパラケルに「知らなくて仕方ないか」と、裾の長い外套のようなマントを着た男性は、二人の横を通り過ぎた。

「フェルナン卿、いつもおられるお連れの方は?」

クトゥリアの問いに、立ち止まったフェルナンはクトゥリアとパラケルのほうを向いた。

「彼女には、別件で動いてもらっている。エスパニャ国の情勢の後処理以上に厄介だが、な・・・・・・」

「ああ、あれには弱った」と、ほぼ同じような格好の白髪の男性が歩いて来た。

「・・・・・・まあ、立ち話もなんですから、部屋へ行きましょう。長旅で疲れているところですまないが・・・・・・」

「会議だろう?わかっている。気にするな。我々は十分に慣れている」

そう言って横を通った、髪が横にはねているマントの男性に「シャロマ卿」と、オレンジと間違うほど明るい茶髪をしたマントの男性が呼び止めようとした。

「相変わらずだね、シャロマ・スカメリアル卿・・・・・・」

クトゥリアが溜め息をつくと同時に全員が歩き出すと、先程の男性が彼に話しかけてきた。

「先程の続きだが、ほとんどの者・・・・・・特に頭の堅い貴族連中は、『奴隷』の解放を頑なに拒否している」

その言葉に、「ちっ」と忌々しげにベルフォードが舌打ちをする。

「―――いつ聞いても忌々しい。同じ人間同士でそのようなこと・・・・・・。全く理解できない・・・・・・」

「理解する価値もないのでは」と、ウェントがすまし顔で答える。

「しかし、貴族たちへの説得のおかげで、思ったより時間が掛かってしまった。理解してくれた一部の者に後を任せて来たが・・・・・・」

「敵は・・・・・・やっぱり、こうなることを見越していたのか・・・・・・」

「おそらく、クリフ卿の読み通りだ」と、青い髪の男性が呟く。

「ウィラトンの読みはよく当たるからな」

「お褒めに預かり光栄です、ブリフォア・マリバトレート卿」

ウィラトンはそう答えると、焦げ茶の長髪の男性に少し後ろを振り返る。

「・・・・・・また髪が伸びましたか?」

「そうだ」とブリフォアは肩を落とした。

「このところ、また一段と忙しくなってな。余計、髪を切る時間が・・・・・・」

落ち込むブリフォアに廊下の空気が暗くなると、「そういえば」とウィラトンが声を出す。

「フェルナン卿が彼女に命じた別件ってなんですか?自分お付きの部下をわざわざ派遣するんだから、よほどのことじゃないんですか?」

「その通りだ・・・・・・が、そこから先は会議の席で・・・・・・」

「いや、構わない。ここで言ってくれ」と言うクトゥリアの言葉に、全員が驚いた。

「どうせ話すかもしれないんだ。噂程度に広がって、ある程度、準備されていたほうがいい」

「クトゥリア殿・・・・・・危機管理のなさは相変わらず・・・・・・」

シャロマの言葉に他の面々は、「この組織は大丈夫だろうか」と不安を隠せなかった。



                      ―※*※―



「まあ、クトゥリア殿の危機管理能力の低さはさておき・・・・・・」

会議室内の丸いテーブルにクトゥリア、空いている椅子を挟んでパラケル、その横からシャロマ、フェルナン、ベルフォード、ラリストン、モリス、ウォーン、アシパトル、ウィラトン、ブリフォアが座っており、その近くにブルータスとウェントが立っていた。

「デモス・ゼルガンクの宣戦布告があってから、エウロッパでは連日会議尽くしだ。おそらく、どこの国でも同じだろう」

そう言うシャロマに、「いや、そうとも言えない」とラリストンが言う。

「国内で多発する謎の魔物・・・・・・我々がディゼアと呼んでいるものだが、それらによる被害の対処に追われている・・・・・・」

「それだけならまだしも・・・・・・軍の上層部は別の大陸にある国のほとんど、特にハルミアの政府を疑ってる・・・・・・」

「かつて、スヴェロニアにしたことで疑われるのなら、自業自得だな」

ウォーンの後に皮肉を言ったシャロマに、「いや・・・・・・」とアシパトルが呟く。

「各国の政府の疑いの目を、ハルミアに向けるために仕組んだのでは・・・・・・?」

「なんのために」とベルフォードが聞きかけたが、すぐに「もしや・・・・・・」と呟いた。

「自らがことを起こした時、世界中の国々を互いに疑わせて動きやすくするため・・・・・・」

「・・・・・・さらに各国の連携を防ぐためか。なんて用意周到なんだ」

苦虫を噛み潰したような顔で、ブリフォアとモリスが言った。

「・・・・・・用意周到・・・・・・というより、元々あった世界の不信感を利用しているのだろう」

フェルナンの耳が痛い言葉に、会議室の誰もが黙り込む。

「・・・・・・ただ、全世界が疑心暗鬼に陥っている一方で、不穏な動きをしている国もある。特にオルバラートは、『マリア』というものを血眼になって探している・・・・・・」

「『マリア』・・・・・・人名か?」と聞くブリフォアに、「おそらくな」と答えた。

「ただ、なぜオルバラートを初めとしたいくつかの国がそこまでして探しているのか。『マリア』とは人名なのか、象徴なのか・・・・・・」

「わからないことだらけだな。だが、一つだけハッキリした」

ウィラトンの言葉に、全員が彼のほうを向く。

「・・・・・・君が彼女に命じた別件とは、その『マリア』に関する任務だね」

「ああ」と答えるフェルナンに、「理由は?」とベルフォードが聞く。

「・・・・・・その理由は二つ。一つは、『マリア』なる人物の居場所がある国だったこと。もう一つは、彼女の知り合いがその国に留学するため、その子の保護者をかねて一緒に行くことになったから・・・・・・」

腕を組んで説明したパラケルに「その国とは?」とアシパトルが聞く。

「東洋の島国、シャニアク」

パラケルが答えると、部屋の中で大きな溜め息がつかれる。

「あの国も、よくよく惨事に巻き込まれるね・・・・・・」

「哀れだな・・・・・・」と、シャロマとブルータスが心痛な面持ちで溜め息をついた。

「・・・・・・ところで、会議の始めから誰かがいないと思ったら・・・・・・アウグス殿は?」

「サウサリカ大陸・・・・・・襲撃を受けた現場に行っている。デモス・ゼルガンクによる被害は少ないが・・・・・・その後のハルミア軍の攻撃による被害のほうが大きい・・・・・・」

クトゥリアの答えに、聞いてきたブルータスも「うーむ」と考えた。

「・・・・・・圧倒的な力を見せつけられて心が折れかけているところに、防衛対象である人間に攻撃された。自分たちがなんのために戦っているのか、戸惑いを持たせるには十分すぎる・・・・・・」

苦虫を噛み潰したような顔のベルフォードに、誰もが黙り込んだ。



                      ―※*※―



ガストロープニル内の病室の中のベッドの上で、ディステリアは体を起こしていた。ヴォルグラードの実力を生で感じ、圧倒的なまでの実力差を知らされた。悔しさのあまり、歯軋りをした。

「怖いか・・・・・・?」

様子を見に来たアウグスがディステリアに聞く。

「戦いで負けて生き残っても、それは恥じゃない。自分の命を簡単に捨てることが本当の恥なんだ」

「わかってる」と、ディステリアは強く握った右手を、目の前まで上げた。

「・・・・・・もう一度、聞く・・・・・・怖いか・・・・・・?」

アウグスの問いからしばらくの間、部屋の中を静寂が包み込む。

「ああ・・・・・・怖い・・・・・・だがそれは、あのヴォルグラードという奴じゃない。奴の実力を思い出し、戦いに行くことに恐怖する自分だ」

ディステリアは静かにそう言うと、自分の右手を握り締める。戦いたいという『意思』を、敗北の恐怖を知る『心』が阻む。それは、一度、敗北を経験した『戦士』に必ず訪れる試練。戦う者にとって、絶対に避けられない道だった。

「そうか。それがよいかどうかは別として、セリュードはもう訓練に復帰してるぞ」

病室に入ってきたアウグスに、「何?」とディステリアが聞き返す。

「『守りたい、大切な人がいる世界を守るため、負けっぱなしにする訳にはいかない』って言ってたぞ。お前はどうなんだ?」

すると、ディステリアは「聞かれるまでもない!!」と叫ぶ。

「―――俺も強くなる。自分を鍛えて、もっともっと強くなって、みんなを・・・・・・大切な人がいるこの世界を守って見せる!!」

アウグスのほうを向いて叫んだディステリアに、「うん、いい返事だ」と笑顔で返す。

「そのためにも、ちゃんと体を直しておかなくては、な」

「お・・・・・・おい」

無理矢理に近い形でベッドに寝かせるアウグスに、ディステリアが抵抗する。

「実は、さっきもセリュードを叱った所なんだ。『無理をする暇があったら、その時間で傷を治せ!』ってね」

「そ・・・・・・そうなのか・・・・・・」

修行時代、アウグスの怖さを知っているディステリアは、セリュードのことを哀れに思いながらそう言った。

「・・・・・・他のみんなは・・・・・・」

ディステリアにアウグスは言うべきか迷ったが、彼の鋭い目を見て答えることにした。

「・・・・・・セルスはメリスの死を知って、完全に戦意を喪失している。クウァルも同じようなものだが、あちらは己の無力から落ち込んでいる。クウァルにはゼウスが、セルスにはアテナがついている・・・・・・」

「いいのか・・・・・・?」

「ゼウスはともかく、アテナのほうは問題ないだろう・・・・・・」

しかし、アウグス自身、心の傷がそう簡単に済む問題ではないと思っていた。

「・・・・・・勝てるのか・・・・・・俺たちは・・・・・・」

虚ろな声で聞くディステリアに、「正直、わからん」と溜め息をつく。

「だが・・・・・・―――諦めればそこで全てが終わる・・・・・・」

どこか悟ったような目をしているアウグスに、ディステリアは首をかしげる。

「おまえも無理せずに、ちゃんと傷を治してから修行するんだぞ?わかったな?」

そう言ってアウグスは、医務室を後にした。しばらく歩くと、廊下のわかれ道にクトゥリアが立っていた。

「想像以上にやられたようだな」

「ええ。しかし全員、精神的には大丈夫なようです。戦いから逃げようとする者は、誰もいない」

「『アルカナカード』を使った占いで出た未来か。だが、占いで見られる未来は、変えられる場合が多い」

歩きながら話すクトゥリアに、「ええ」と答える。

「しかし事実、恐怖に負けている者は少ない・・・・・・。一般兵のほうもそうだ。みんな・・・・・・心が強い。さすが、あなたが選んだだけはあります」

しかし、アウグスは厳しい面持ちのままで歩き続ける。

「しかし・・・・・・戦いの補助や一般市民の避難を行なう一般兵も含めて、機動部隊の実力不足感が否めません。一部隊が敗れ、なおかつその相手が幹部クラスとはいえ、それは全ての機動部隊に言えることです」

クトゥリアは「そうだな」と呟いた。しばらく頭をかいていたが、やがて決心をしたような厳しい面持ちになった。

「少しばかりか、とても苦しいかも知れんが・・・・・・彼らには『アレ』を受けてもらおうか」



                      ―※*※―



その頃。名も無き島にある屋敷の一室。カーテンが閉め切られて光が全く差さず、物が無茶苦茶に散乱した部屋の中に、ユウがうずくまって鳴いていた。

「・・・・・・ううっ・・・・・・メリス・・・・・・ロウガ・・・・・・」



~―回想―~


ロウガの所属部隊が出発する数日前。

「ロウガ・・・・・・本当に行っちゃうの?メリスも・・・・・・」

ユウは不安が混ざったような、寂しそうな顔をしていた。

「そんな顔するなよ。少なくとも、来月には戻って来る」

「それまでは、同じ居残り組みの飛天に遊んでもらって」

「居残り組みというのは余計だ」と、飛天が文句を言う。

「―――それに、拙者は修行中の身。ゆえに、あまりおぬしの相手はできない。睦月殿にしてもらえ」

「ええ~~」と、ユウが不満そうな声を出す。

「そうだな。俺なんかよりも、あいつのほうがよさそうだしな」

「それって卑屈?」

メリスが嫌味を込めて言うと、「そんなことない」とユウが呟いた。

「・・・・・・メリスは優しいお姉ちゃん、ロウガは大好きなお兄ちゃん・・・・・・。ムーのことも好きだけど・・・・・・ユウはロウガも大好き」

ユウの笑顔を見てロウガは一瞬、顔を赤くしたが、誰にも悟られない内に顔を背けた。

「せ・・・・・・せいぜい、俺たちが帰ってくるまで、いい子にしていろ。わがまま言って、困らせたりするなよ」

「うん」とユウが頷くと、ロウガは部屋から出て行った。廊下に出たところで、飛天が耳打ちをするように話しかけてきた。

「・・・・・・さっき、顔を赤くしていただろう・・・・・・」

「なぁっ!!」とロウガは、恥ずかしさのあまり絶叫した。



                      ―※*※―



アウグスが操縦する小型スキーズブラズニルが戻った時、真っ先に出迎えたのはユウだった。しかし、いつもと違う様子のユーリとミリア、さらに慌しい雰囲気にユウは強い不安を覚えた。

「ねえ・・・・・・ロウガとメリスは・・・・・・どこ・・・・・・?」

その途端、場の空気が重苦しいものになる。ミリアは涙を流しながら、「ごめん・・・・・・ごめんなさい」と謝り続けていた。次の瞬間、ユウの目に入ってきた、シートをかけられたストレッチャー。その端から見えている魚の尾ビレを見て、ユウは全てを悟った。

「ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい、ユウちゃん・・・・・・」

「なんで・・・・・・なんで間に合ってくれなかったの!なんで、メリスを助けてくれなかったの!どうしてよ!!」

暴れるユウを何人かで取り押さえて彼女の部屋につれて行ったが、部屋の中でユウは暴れ続けた。さらに、ことの次第を全て知ったフレイアにより、ユウを取り押さえたほとんどの男性陣がお仕置きを受けたらしい。


~―回想終わり―~




数日後。部屋の前には、一人の烏天狗が立っていた。そこに一人の男性がやって来る。

「・・・・・・ユウ、今日もこもりっきりか・・・・・・」

声の主の睦月に、「ああ」と飛天が返す。

「『あの時、どうしてもっと早く行かなかった』・・・・・・って、責められたよ。確かに、もっと早く現場に着いていたら、ロウガもメリスも死なずに済んだかも知れない・・・・・・。そんなことを考えても無駄だというのに、どうしても考えてしまう・・・・・・修行不足だな・・・・・・」

「そんなことはない。飛天は必死になって受け止めようとして、さらに乗り越えようとしている・・・・・・。ダメなのは俺のほうだ」

「どういうことだ?」と聞く飛天に、「実感がないんだ」と睦月が答える。

「長い間、江戸守護部隊に所属していた頃は、仲間の負傷や殉職を当然のことだと感じていた。だが・・・・・・最近、そんな俺自身に腹が立ってきた・・・・・・」

「いいことじゃないか。それは、自分を変えようと、葛藤してるんだ」

「ところが違うんだ」と頭を振る睦月に、「どういうことだ?」と飛天が聞いた。

「仲間の死に慣れたせいで、何も感じない。例え、昔以上に親しい仲間が死んでも、自分への怒りしか感じない・・・・・・最低な自分勝手だ・・・・・・」

「睦月・・・・・・」と呟いた時、「そんなことない!!」とユウが部屋のドアを開けた。

「最低なのはユウのほうだよ!飛天もユーリもミリアもがんばったのに・・・・・・メリスとロウガを助けようとしてくれたのに・・・・・・!!!」

涙目で自分を責めるユウに睦月は、「大丈夫だよ」と静かに言う。

「二人とも、あれがユウの本心じゃないってわかってる・・・・・・それに・・・・・・ユウは自分の過ちを認めて、それを乗り越えようとしている。俺なんかよりずっと立派だよ・・・・・・」

「違うよ・・・・・・ユウなんか・・・・・・ユウなんか・・・・・・」

両手で涙を拭うユウを、睦月が優しく抱きしめた。

「・・・・・・!?」

「お前が落ち着くまでこうしていてやる。泣きたければ、泣ける時にしておけ」

ユウが睦月の胸に顔をうずめて泣いていると、飛天が冷たい視線を向けている。

「仲間の不幸をだしに、なんと不埒な・・・・・・」

「おい待て、こら」と、怒りを抑えた笑顔で飛天のほうを向いた。






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