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幻想戦記  作者: 竜影
第2章
123/170

幕間5

補足のようなもので、本編とはあまり関係ありません。あしからず。




ブレイティアの本拠地〈名も無き島〉。屋敷の一室では、クトゥリアが通信をしていた。

「・・・・・・で、ディステリアは己の出生のことは知ったのか?」

《悟りはしたでしょう。それに、私自身も驚いた》

「そうか。だったら、送った甲斐があったというものだよ」

意地悪そうな笑みを浮かべるクトゥリアに、画面向こうのミカエルは苦い顔をしていた。

《天魔界の少年・・・・・・我々へのあてつけですか?》

「そのようなつもりはない。ただ、君たちが天使と悪魔の子を見てどう思うか、その反応が見てみたかっただけだ。結果は私の期待通り」

《過去の過ちを再認識、ですか。神の名の元、あなたに罰を下すべきだと憤る者もいる》

ミカエルの声には若干の怒りが込められており、肘を突いたクトゥリアは口元を隠しながら目を細める。

「あなたがその一人ではないでしょうね、ミカエルどの?」

《そうであるなら、わざわざ話はしない。むしろ、有無を言わさず天罰を下す・・・・・・》

「私としては、天使はそこまで心が狭くないと思っています。ディステリアに対する反応も、『手を出さない』を期待していたもので」

《だが、下手をすれば汝と我々の間で戦闘が起こっていた。そうなったらどうするおつもりで?》

「その時は・・・・・・我々がこの世界を守ろうとするのは間違いだった、ということで」

《そのようなことは断じてない、と言っておきましょう》

「我々もそれを信じております。では・・・・・・」

クトゥリアは断りを入れてから通信を切った。険しい表情をすると、机の上に置いてある資料を手に取る。

「さて、次だ。それにしてもあいつ・・・・・・」

苦い顔をして玉藻の資料を見る。そこには、『異世界から次元の壁を越えてやってきた』と、とても信じられない記述がされていた。

「こちらに頼むくらいなら自分でやれ、って言うんだ。完全にあっちの管轄だろうに・・・・・・」

「悪かったですね、職務放棄をして・・・・・・」

聞き慣れない少女の声がして、クトゥリアが顔を上げると入り口に誰か立っている。腰まで届く長い黒髪の少女で、薄い装甲のライトアーマーにレザースーツ、ハーフパンツとストッキングにブーツという姿をしていた。

「君か・・・・・・彼とは会えたのかい?」

「ううん。記憶を失って同じ時間帯にいるってことはわかった。だけど会えないわ」

「どうして・・・・・・会えば、彼の記憶が戻るかもしれないだろ」

暗い表情で黙り込む少女に、クトゥリアは首を傾げる。しばらく黙っていると、資料に目を通した少女が聞いてくる。

「聴取は終わったの?」

「あ、ああ。妖狐族にしては人間に関わるなと思っていたが、まさか異世界から来たとは・・・・・・」

それを聞いた途端、クトゥリアにとって完全に打つ手なしとなった。〈転移の門〉で行ける隣接世界の天界や魔界とは違う、パラレルワールドとも言える完全に別の平行世界。概念が無茶苦茶な上高等すぎるのか誰も理解できず、彼すらさじを投げる。ちなみの目の前の少女は、『世界なんてそういうもんよ。だから面白い』と割り切っているのだからすごい。

「出身世界はこちらで調査する。いいよね?」

「というか、そっちでしか調べられないだろ」

苦い顔をするクトゥリアに、少女はフッと笑う。

「ちなみに、規定によりこちらの戦いには参戦できない。こちらに矛が向いた時は別だけど・・・・・・」

「それは重々承知している。これは我々の戦いだ、君たちの力を借りるつもりはない」

「ご理解、感謝します」

目を閉じて礼を言った少女は、資料を持って立ち上がる。

「この資料はこちらで処理させていただきます。よろしいですか?」

「そのつもりで来たんだろ?提供されないのなら、武力で脅してでも処分するか?」

「そこまではいたしません」

少女はそう返す。異世界に別世界の存在がいたという記録は抹消されなければならない、というのが彼女の組織の決まり。記憶は消去しないのがせめてもの情けか。彼女らの実力は神界にいる神々のそれと遜色ない。尾ひれが付いた噂かもしれないが、もし真実ならぶつかれば自分らは確実に潰される。そうなってはデモス・ゼルガンクの思う壷だが、それはあちらも理解してるため、激突は避けようとする。

「では・・・・・・言う筋合いはありませんが、ご武運を」

「そちらの敬意として、受け取らせていただきます」



                      ―※*※―



「ということで、あなたの身柄はこちらが引き取らせてもらうわ」

「は、はい・・・・・・」

ブレイティア本拠地の廊下を歩く玉藻は、不安そうな声で少女に返した。

「本当に元の世界に帰れるんですか?」

「疑うのも無理ないか」

振り返って肩をすくめる少女に、「いえ、そんなつもりは・・・・・・」と玉藻が慌てる。

「世界がいくつも存在してるってこと知ってますし・・・・・・疑う余地なんて・・・・・・」

「あら、いいの?そんな簡単に信じちゃって」

少女に釘を刺され、「うっ・・・・・・」と黙り込む。

「まあ、論より証拠。実際見てから信じても遅くないわよ」

「使い方、間違ってますよ。絶対・・・・・・」

そう言って二人はブレイティア本拠地を後にする。そして、いるべき場所に戻るべく、この世界から姿を消した。






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