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幻想戦記  作者: 竜影
第1章
11/170

幕間

最初に断わっておきます。完全オリジナルの異世界が登場します。そういったものが嫌な方はスルーしてください。あと、ルシファーとミカエルの性格は明らかに独自設定です。






〈天使たちが住む天界と悪魔たちが住む魔界。その狭間にある、人間たちが住む人間界。それと、もう一つ・・・・・・。かつて、天界を追放され、魔界に落ちた者たちがいた。俗に言う堕天使。一方、魔界の方にも、ほんのごくわずかであったが争いを望まない者もいた。だが、それを主張することは、大魔王ルシファーに逆らうこと。当然、追放されてしまう〉



〈天界から追放され、地上に行くことも、魔界に行くことも拒んだ天使。魔界を追放され、地上に出ることを拒んだ悪魔。通常では決してありえない、二つの存在が出会うという偶然が、天界でも、魔界でも、人間界でもない、新たな世界〈天魔界〉を創造させた。その天使と悪魔は共に暮らし、やがてたくさんの子が生まれた。天使と悪魔の血を合わせ持つその子供たちは、次第に増えて行った〉



〈やがて、天界と魔界から数多くの天使と悪魔たちが、天魔界に移り住んだ。だが、この事態を重く見た二つの世界の指導者は・・・・・・〉







この文の所で焼けた本は、炎に包まれた瓦礫の中にあった。その瓦礫の近くに、体の所々に墨がつき、目からはたくさんの涙を流して上を見ている少年がいた。その少年の視線の先では、一人の天使と一人の悪魔が戦っていた。天使は女で、悪魔は男。互いにやりきれないような表情で、剣を交えていた。

「お父さん!お母さん!やめて~!!」

その度に、少年が叫んだが、二人は戦いをやめようとしなかった。

「ディルト。これは天界と魔界の間で起きた戦い。たとえ相手が誰であろうと、どんな命令であろうと、私たち天使は天使長の命令には逆らえない」

「その通りだ。どんな命令であろうと、大魔王様の命令は絶対。我々が逆らうことができない、運命なんだ!」

二人は再び、武器を交える。

「俺たちが一緒になった時、いつかこうなることは覚悟しなければならなかったのだ」


ギィン!!


金属音がして、二人は再び距離をとって離れる。

「それが・・・・・・」と天使が武器を構え、

「我らの・・・・・・」と悪魔が武器を構え、

「兵士としての・・・・・・宿命なのだから!!」

そこからは、戦いのペースが上がった。天使が振り下ろした剣を悪魔がかわし、悪魔が振りかざした爪を天使が剣で叩き落す。まさに一進一退の攻防だった。その戦いはまさに、相手を倒すための闘い。響き渡る音は、涙を流す少年の心に一つ一つ、深く突き刺さっていった。

「(やめて・・・・・・やめて・・・・・・)」

やがて、天使と悪魔がお互いに武器を構えて突っ込んだ。少年は、その先に何が待っているか悟った。

「やっ―――」


ガスッ!!


鈍い音が響き、飛び散る鮮血。貫かれ、そして墜落する二つの体。爪と剣はそれぞれお互いの急所を、正確に貫いていた。即死だった。

「あ・・・・・・ああ・・・・・・・・・・・・」

駆け寄った少年は、冷たい現実を目の当たりにしていた。やがて、周りに響いていた爆音や金属音がしなくなると、涙を流すかのように、雨が降り出した。



                         ―※*※―



降りしきる雨の中、動かなくなった両親の体の側で、少年は涙を流していた。

「おい、こっちに誰かいるぞ」

不意に、後ろからそんな声がした。その後に、ガッ、ガッという瓦礫の上を歩く足音や、バサッ、バサッという翼を羽ばたかせる音がした。

「おい、天使がいるぞ!」

さっきと同じ声がした。するとさっきの足音が近づいて来た。いつの間にかそこは、大勢の武装した悪魔の兵に囲まれていた。

「動かないぞ。死んでいるのか?」

「近くにいるのは、子供?」

「この子供・・・・・・天使か」

喋りながら兵たちは、武器を構えながらだんだんと距離を縮めてきた。やがて、一人の兵が気付く。

「おい、こいつ、天使と悪魔の子供じゃないか?」

「おい、どうする?」

「どうするも何も、天使族は我らの敵。たとえ同族の血が流れていようと、容赦はしない」

三番目の悪魔兵が、苦しそうに声を出す。

「ってか、我らの天敵との間に子を成すなんて、馬鹿な奴もいたもんだ」

最初に来た悪魔兵があざけるように言った時、ドクン、と鼓動が鳴った。

「(・・・・・・ば・・・・・・か・・・・・・?)」

涙を流したうつろな目で、ディルトはゆっくりと顔を上げた。

「だが・・・・・・、一応は同族の血が流れている訳だし・・・・・・」

「連れて帰る、とでも言うつもりか?悪いがそれはできん。天使の血を持つ悪魔など、異端でしかない」

四番目の悪魔兵に二番目の悪魔兵が意見する。

「つまり・・・・・・、存在している意味がないんだよ」

再びあざけるように言った言葉に、ドクン、と鼓動が高鳴る。

「(意味が・・・・・・ない・・・・・・?)」

「おい・・・・・・」と、四番目の悪魔兵が諌めるが、その悪魔兵はあざけるのをやめなかった。

「要するに、馬鹿な親のせいで意味も無い命を授かった、馬鹿なガキってことだよ。ハハハハハハ・・・・・・・」


ドクン・・・・・・ドクン・・・・・・


「・・・・・・まれ・・・・・・」

ディルトが呟くと、悪魔兵が驚いて、ゆっくりと立ち上がる少年のほうを向いた。

「おいガキ、今なんて・・・・・・」

「黙れって言ってんだよ!!!」

ディルトが叫んだその瞬間、ものすごい魔力が放出された。やがてそれらは、永い封印を解かれた何体もの大蛇が、獲物を求めるかのようにうねりだした。

「なんだ、このガキ?俺たちとやりあうつもりか?」

「貴様・・・・・・・・・・・・」

ディルトは憎しみがこもった目で涙を流しながらも、親を侮辱した悪魔を睨んだ。

「―――を・・・・・・」

何かを呟きだした途端、魔力の一部がディルトの右腕に集まりだした。

「あん?」

「父さんを侮辱するな~!!」

激昂すると共に兵士の一人に突っ込むと、その兵士の体を何かが貫いた。それを見た他の兵士たちは騒然とし、武器を構えて警戒した。

「(ちっ・・・・・・初っ端からこんなに強いなんて、聞いてねぇぞ・・・・・・)」

己の誤算を悟りながら体を貫かれた兵士が倒れると、貫いた物の正体が明らかになった。それは、限界まで大きく広げたコウモリの翼のような形をした剣だった。ただ、返り血を浴びて紅くはなっているが、つばの部分には白い鳥の翼を模した飾りがあった。まるで、悪魔の翼と、天使の翼。二つを合わせたかのような形の剣だった。

「ああああああああああっ!!!!」


ブウン!!


音がするほどに剣が振られた直後、そこから悪魔兵たちの悲鳴が響き渡った。



                         ―※*※―



「なんだ?これは!?」

異変に気づいて駆けつけた、大勢の天使の兵が見たのは、無残にも切り裂かれた悪魔の兵と、返り血を浴び、血が滴る剣を握った、一人の少年の姿だった。その少年の目は、とても冷たいものとなっていた。

「この感じ・・・・・・天使の力と悪魔の力を合わせ持っている?異端児か?」

その言葉に、ピクッとわずかに顔を上げた。

「どうする?」

「たとえ同族の血が流れようと、悪魔の血を持つ者は敵でしかない。悪く思うな!」

二番目の天使兵の号令と共に、その場に駆けつけた天使の兵たちは、その少年に飛びかかった。返り血を浴び、冷たい目を持つ少年は一瞬、笑みを浮かべ・・・・・・。



                         ―※*※―



「ミカエルさま」

光り輝く、巨大なステンドグラスが飾られた一室に、ドミニオンが飛び込んできた。

「我らが天魔界に派遣した部隊が・・・・・・」

言い終わらない内に、「私は・・・・・・」とミカエルが呟く

「・・・・・・過ちを犯してしまったのかもな・・・・・・」

「は?とおっしゃいますと?」とドミニオンが首をかしげる。

「部隊は・・・・・・全滅か・・・・・・?」

「え!?あ、はい。しかし、どうしておわかりに・・・・・・」

ミカエルは「さあ・・・・・・ね・・・・・・」と溜め息をついた。

「どうなさいますか?援軍をお送りに?」

しばらく考え込んだ後、「いや、しばらくは様子を見よう」と言った。

「様子を・・・・・・ですか?」

「ウム。おそらく今は、ろくに調査もできまい」

「確かに・・・・・・。戦いの後で、荒れ果ててはいますが・・・・・・」

「違う・・・・・・。そう言う意味ではない」

ドミニオンは「は?」と首を傾げたが、ミカエルの言ったとおり、今の天魔界では調査は行えなかった。



                         ―※*※―



深き闇に覆われた万魔殿の一室、玉座とも取れる場所で、一人の大魔王が報告を受けていた。

「すでに我らが送った部隊は全滅しているとの報告が。ルシファーさま。どうなさいますか?」

「フム・・・・・・」と、ルシファーは玉座の片方に肘をつき、しばらく考えていた。

「戦闘状況は?」

「こちらの部隊が全滅したことにより、沈黙状態です」

「そうか・・・・・・調査隊を一個中隊で派遣しろ」

それを聞いたベリアルは驚いて、「ち、調査隊を・・・・・・ですか?」と聞いた。

「どうした?何を驚いている?」

「ハッ、すぐに編成いたします」

「あと、調査隊には護衛部隊を一個中隊ほど付けろ。そして・・・・・・」

一泊置いたルシファーは、真剣な面持ちで付け加えた。

「たとえ気のせいであっても・・・・・・少しでも殺気や身の危険を感じたら、すぐに撤退するように伝えろ」

「は?・・・・・・はっ、わかりました」

数時間後、調査隊が派遣されたが、出発してしばらくした後、万魔殿に戻って来た。理由は、ルシファーの言うとおり身の危険を感じたから。



                         ―※*※―



今、天魔界は、とてつもない殺気に覆われていた。その中で自由に動ける者は、天使、悪魔問わず誰一人いなかった。その殺気が覆っている間、両世界は十分な調査を行うことができなかった。それはまるで天魔界が、天界と魔界、両方を憎んでいるようだった。やがて、殺気が消えた天魔界で訪れた者が見た物は・・・・・・。




〈やがて、天界と魔界から数多くの天使と悪魔たちが、天魔界に移り住んだ。この事態を重く見た二つの世界の指導者は、いくつかの対策を検討していた。だが、出した結論は・・・・・・〉



〈『相手方の世界の情報を聞き出し、戦いを有利に進めよう』〉



〈やがて、光と闇の戦いが始まり、その戦いは狭間の世界を焼いた。人間界ではなく、天魔界の方を。しかし、この戦いは・・・・・・・・〉



〈世界に絶望を抱く、光と闇の力を持つ戦士を生み出すこととなる〉






「・・・・・・ん・・・・・・」

目を覚ました少年は、テントの中で寝袋の中に包まっていた。

「・・・・・・・・・またあの夢、か・・・・・・」

寝袋から出した手で寝ぼけ眼を擦り、少年は身体を起こす。

「・・・・・・妙な感じだ」

頻度が少なくなったとはいえ、いつも同じ夢を見る。少年にとっては何かの啓示なのか、それとも過去の傷なのか。

「おい、ディステリア!まだ寝てるのか!?」

「今日は起きてるよ。今日は・・・・・・」

気の抜けた声でテントの外の相手に答え、少年は起床した。






プロローグのつもりで書いたものを無理矢理ねじ込みました。違和感が大きいかもしれません。

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