プロローグ
ここは、〈人間〉と、神秘の獣〈幻獣〉が共に存在する世界。
されど、その暮らしは『共存』とはほど遠い。
ほとんどの〈人間〉は、〈幻獣〉に畏敬の念を持ち、距離をとって暮らしていた。
人々は強大な力を持つ〈幻獣〉を恐れ、時に崇め、時に命を奪った。
それは〈自然〉への畏敬の念を込め敬う心であり、〈自然〉への挑戦に他ならない。
その中で〈人間〉は出会っていく。
人知を越える超上的な力を持つ獣―――〈幻獣〉は元より
森羅万象に宿る霊的存在―――精霊。
死して生物の肉体から放たれながらも現世に留まる存在―――霊。
時に願いを叶え、時に災いを呼ぶ存在―――魔神。
東洋における超常現象的存在―――妖怪。
人間とほぼ同じ姿の自然的存在―――妖精。
世界各地に生息し、その強さから『最強の幻獣』と呼ばれる―――ドラゴン。
異界における闇の住人。人間を誘惑しようと狙う存在―――悪魔
異界における光の住人。光に満ちた天より人間を見守る存在―――天使
やがて、それら全て超越する力を持つ〈神〉を見出し、崇めた。
自然の全ての事象は神々の起こす奇跡と考え、それらを崇める集まりを作った。
だが、時が立つに連れて〈人間〉は―――過去に見出した全てを忘れていった。
瓦礫と化した町。血を流して息絶えている二人の人影。それを見て涙を流し、たたずむ少年。空から降る、血の雨。炎により赤く染まった空の下、町は地獄絵図と化していた。
「・・・・・・!」
ベッドの上で、一人の少年が目を覚ます。窓からは朝日が差し、彼の顔とベッドの布団を照らしていた。
「・・・カーテンを閉めずに寝たのか・・・・・・。うっかりしていた・・・・・・」
そう頭をかいた少年、ディステリアは右手を下ろすと、下をうつむいた。
「(また・・・・・・あの夢・・・・・・)」
時々、彼が見る夢。あれがなんなのか、もっとよく知りたい。だが、知ろうとすればするほど、恐怖が支配する。思い出そうとすればするほど、同じように恐怖がわきあがった。
「・・・・・・・・・」
これ以上ここで考えていても仕方ないので、ディステリアは起きて着替えをすることにした。