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第8話 オタクがクラスメイトの美少女全員とデートするための唯一の方法

俺の名は〈神藤オタク〉。

苗字100点、名前0点の男だ。


名付けてくれた親には悪いが、あまりにも自分の子供に対する命名センスが無さすぎると思う。徹夜明けにゲームでもしながら適当に思いついたとしか思えない。


〈神藤君〉とは今までに一度も呼ばれたことがない。どこか字面がカッコよくてムカつくと思われているのか、俺にはもったいない呼称と思われているのか知らないが、女子達からは侮蔑を込めて〈オタク君〉と下の名前で呼ばれている。




そんな俺にも先日、オオカミ子さんという彼女ができた。訳あって俺に正体を明かせないということだが、それでも恋人は恋人だ。


一方で今日、黒沢さんとも別件で一悶着あった。

先程は彼女をなだめるのに精一杯で、最終的に有耶無耶になってしまったが、本当に俺の部屋で彼女と同居することになるのだろうか……。




同居……?

あの美少女と……??

あの人格破綻美少女と…………???




頭が追いついていかなかった。


〈黒沢メイ〉。

ビジュアル100点、性格0点の女だ。




……そういえば、俺がクラスの女子と同居することに関して、オオカミ子さんはどう考えるのだろうか。

俺は今日の出来事を、黒沢さんのプライベートに配慮しつつオオカミ子さんにチャットで伝えた。


「同居?いいんじゃないでしょうか」

「それで黒沢さんは救われるんですよね?」


オオカミ子さんは、拍子抜けな程あっさりしていた。

なんて懐の広い女の子だろう。




「ねえ、それよりオタク君、」


と、オオカミ子さんが話題を変えてきた。

彼氏が他の女と同居するよりも重要な話とは、一体何だろうか。




「デートしない?一緒に」




――――――




その誘いは俺にとって、本来ならば天にも昇るほど嬉しいものだった。

が、俺はいったんその感情を保留した。

より大きな疑問が生じていたからだ。


「オオカミ子さん、気が変わったの?俺に正体を教えてくれるってこと?」


「うーん、そうじゃないんだけど、

正体を教えずに会うって感じかな」


俺はその発言の要領を得なかった。

オオカミ子さんはわかりやすく教えてくれた。




「つまり、オタク君がクラスの女の子全員と1回ずつデートすればいいんだよ」




……え?……何だそれは?

むしろ疑問が増えた気がした。


「ねえオタク君、それでいい?」


「いいけど……」

俺はいいけどと送ってしまった。

クラスの女の子全員と1回ずつデートするなんて、いいに決まってるからだ。


「やったー!ありがとう……オタク君大好き!」


普通に考えたら、クラスの女の子達が俺とデートなんぞしてくれるわけがない。

だがオオカミ子さんは、まるでそれが実現可能かのような口振りでメッセージを送ってくるのだ。


よくわからないが、オオカミ子さんの流れに任せたことで、俺はクラスメイト達と遊び放題の権利を得たらしい……?

俺はつい口元が緩んだ。

想像するだけで心拍数が上がる。




「じゃ、クラスのみんなとは調整しとくね」


「わかった!よろしく!」

と俺は送った。

クラスの女の子達が俺とデートしてくれるよう、根回しまで彼女がやってくれるらしい。

……ああ、なんて素晴らしい彼女を持ったんだ。




直後、オオカミ子さんによって、俺はクラスのグループチャットに追加された。

以前から稼働していたようで、俺以外のクラスメイト全員が参加していた。オオカミ子さんすら既に参加していた。


そこにオオカミ子さんは、とんでもない爆弾を容赦なく投下した。


「みんな!オタク君からの連絡!

次の数学のテストの点数で彼に勝った人は、何でも1つ、10万円まで欲しいものをくれるって!!

服でもブランドでも現金でも……何でも!!」




……はい?

グループチャットは一時騒然となった。




「その代わり、点数で彼に負けた人は、彼と一緒に〈デート〉してあげてほしいの。

みんな、いいよね……??」




俺は顔から表情が失われ、思考が止まった。心拍数だけが高いままだった。


……今気づいた。おそらくこれは「黒沢さんと同居するかも」などと浮かれて相談してきた俺に対する、オオカミ子さんからの仕返しなのかもしれない。


ちなみに、グループチャットで反対する女の子は誰一人としていなかった。




……なぜなら、俺は〈数学〉という科目が絶望的にできないことで有名だったからだ。




――――――




次の日、案の定……俺はこの件について朱川さんを中心にからかわれた。

朱川さんは、一昨日の白パン事件の後の憔悴した姿がまるで嘘だったかのように、今まで通りの普通の彼女に戻っていた。


「じゃあ私は、クラスメイト料として10万円現金でもらっちゃおうかな?黒沢は?」


「…………。

……じゃあ、私もそうする」


「え、マジ?……意外と金に貪欲だね、黒沢」


俺は先日、黒沢さんの家庭が抱える事情の一端を知ってしまった。彼女が現金を欲する理由はよく理解できた。




「銀条院さんは……?」


「私は……お金はいいです。欲しいものもありません」


銀条院さん……なんて謙虚で優しい子なんだ……!!

俺は心から感謝した。

が、それは少し早計だったかもしれない。


「その代わり、私が勝ったら……」

そう言って銀条院さんは、ある意味で最も困難な要求を、俺に向かって突きつけた。




「私が勝ったら……

もう私の胸をじろじろと観るのをやめてください」




――――――




黒沢さんと朱川さんに10万ずつ渡すのはまあ良い。

もちろん、相当な痛手ではあるが、バイト等でやりくりすれば数年かけて何とかならないこともないだろう。


そんなのより、一番ヤバいのは銀条院さんだ。

正直言って、銀条院さんのおっぱいを見ないというのは無理だ。

この〈無理〉というのは

「頑張ればできないこともないが、気持ち的にイヤだ」

という用法の〈ムリ〉ではなく、もっと単純に不可能という意味だ。




……何らかの手を打たなければならない。


覚悟を決めた俺は、自分の席から重い腰を持ち上げ、ある1人の女子のもとへと歩いて向かった。

俺なんかが普段は絶対に近づかない席だ。歩みを進めつつ緊張が高まった。

周囲の女子達も、俺の向かう先に注目していた。




俺が足を止めると、そこには、不思議な雰囲気を漂わせる女の子が静かに座っていた。

眠いというわけでは無さそうだが、両目は常に半分閉じていて、口の表情はあまり動かない。

背丈は小さく、透明な水色の髪を持つ、妖精のような女の子、〈妖羽あやはねさん〉だ。


「あの、妖羽さん……」


彼女は無言でこちらを向いた。

髪に光が当たることで色が透明に近くなった。

初めて正面から彼女の顔を見たが、瞳は水面のように光を反射していた。




俺は、彼女の前で勢いよく土下座した。

「お願いします!!どうか、数学を教えてください!!」


周囲から俺に対する〈キャー!〉という悲鳴が上がった。

俺がこうして頼み込んでいるのは、妖羽さんが俺なんかと違い、めちゃくちゃ頭が良いことで知られているからだ。




妖羽さんは口元だけ少し笑って、小さく答えた。

「いいよ…………。

好きだよ、そういうなりふり構わないの」




俺は感激のあまり、床に頭を打ち付けて感謝の言葉を連呼した。

それを見た彼女はゆっくりと席から立ち上がり、傍らで土下座する男子学生の目の前にしゃがみ込んだ。

俺の頭に優しく触れ、彼女はそっと言った。




「大丈夫…………。

ぜんぶ……ぜんぶ私が教えてあげる。


だから……今日からテストまで、放課後うちに来て」




……え?

聞き間違いか?と思い顔を上げると、俺の鼻の先の10cmの所に、白と水色の縞々の布があった。

ので、それどころではなくなった。




普通にしゃがめば両足でパンツは隠れただろうに、彼女は女の子らしく、少し内股でしゃがみ込んでいたのだ。

そのせいで、太ももの裏側の肉と、その間を布1枚で覆う縞パンが、どうぞ見てくださいと言わんばかりに視界に広がっていた。


顔を見上げると、彼女は「なに?」と言いたげに首を傾げた。

周囲の女子に「妖羽さん、パンツ!」と教えてもらった彼女は、慌ててスカートを上から覆いかぶせるように引っ張り、パンツを隠そうとした。

しかし、スカートの丈から考えてもわかるように、実際はひざ小僧の上半分が隠れただけだった。

足を閉じるか立ち上がるかしないと意味がなく、彼女がそれに気づくまでのしばらくの間、もぞもぞと動く丸見えの縞パンを目で追わせてもらった。




「……もう……

……えっち…………」

彼女に額をつつかれて、俺はそう言われた。


この妖精さん……えっちなことには少し鈍いようだった。

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