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第6話 黒沢さんの♡えっち♡な高時給アルバイト(希望編)

朱川さんの白パン事件の日、その放課後。


いつも騒がしい彼女が、その日は嘘のように誰とも口を聞かず、さっさと帰宅してしまった。




俺は今朝、煩悩というか誘惑に負けてオオカミ子さんの下着の色を指定をしてしまったが……

今はそのことを反省している。


今日の件は朱川さんの自業自得とはいえ、責任の一端が俺に全く無いわけでもない。


それにだ。

俺はオオカミ子さんと、いわゆるえっちな感じではなく、誠実にお付き合いしたいと思うのだ。

俺に会えないという彼女にどんな事情があるのかはわからないが、真正面から相手の内面に向き合えば、きっと事情も教えてくれるし、いつかちゃんと顔を向けて話してくれる。

そう信じているからだ。


そんなことを思いつつ、俺は自分の下駄箱をゆっくりと開けた。




「…………え、……えええ?!!」




そこには、俺が今朝指定した白いパンツが、靴の上にそっと置かれていた。




――――――




「お昼は返信できなくてごめんなさい。

寂しい思いさせたかなって思って……プレゼント」

とのことだった。


「あ、私のことは大丈夫。心配しないで。

帰り道は替えのパンツで帰りましたから」


何も大丈夫ではない。

しかし、このように実物を渡されたことで、結果的にオオカミ子さんへの信用は確実に高まったと言える。

彼女の一連の行動は、いたずらではなく〈本気〉だということである。


下駄箱に入っていたパンツは、数時間前にその辺で買ったと思えるような新品ではなかった。ちゃんと使い込まれた、マジのパンツだったからだ。


「私のパンツ、たくさん使ってくださいね♡」

俺はこのメッセージを無視した。


女の子は、人を強引に信用させるためにこんな手段が使えるのか、と思った。

もっとも、実際に実行に移すのはこの人くらいだろうが。




ここでふと、気になることがあった。

結局このパンツは、朱川さんが今日身につけていたものだったのだろうか。


朱川さんの白パンは、数時間前、あの瞬間にガッツリ見させてもらったのだが、如何せん目にした時間は1秒程度だった。だからどうしても、今目の前にあるこのパンツが、あのときのものと同じなのかどうか、確信が持てないのだ。


試しに引っ張ってみたり、拡げてみたり、腰を通す穴から両足の穴を覗いてみたり、化学でやるような方法で匂いを嗅いでみたりしたが、持ち主が朱川さんであるかどうかの判断は付かなかった。


……もしかして、本当に偶然だったのかな。




「いっそのこと、朱川さんのパンツだと思って好きにしちゃえば良いんじゃないですか?」


…………。

オオカミ子さんは時々、男子にとって〈良くないこと〉を言う。

確かに、これは朱川さんが今日履いていたものだと思った方が、俺の煩悩は強く刺激されるのだった。




俺はまたしても誘惑に抗えず、目の前のパンツを手に取り、自分のベッドに潜った。


「私が朱川さんかどうかは、教えてあげられませんが」

オオカミ子さんはそう一言添えた。




――――――




次の日。

前にも言ったように朱川さんは学校を休んだ。


普段は事あるごとにちょっかいをかけてくるやかましい奴だったが、いざいなくなると寂しいものだ。




昨日学んだこととして、俺たちが学校にいる間はオオカミ子さんとの連絡は取れない。

一方で、黒沢さんや銀条院さんも相変わらず俺を腫れ物のように避ける。


昨日の大波乱が嘘だったかのように、今日は何事もなく放課後を迎えた。




――――――




「これからアルバイトがあります。なので今夜はお話できないかもしれません……ごめんね」

オオカミ子さんから、そうチャットが来ていた。


俺は一度自分の部屋に帰り、私服に着替えて外出の準備をしていた。今日の夕飯を買いに行くためだ。

言っていなかったが、俺は実家を出て一人暮らしの身だ。部屋の間取りのタイプは、なんと、男子高校生1人では絶対に持て余す2LDKだ。

これは俺が金持ちだからというわけではなく、親戚のアパートの空き部屋を卒業まで使わせてもらっているからだ。




俺は自転車を飛ばし、ちょっと離れたコンビニへと入店した。

学校付近のコンビニでクラスメイト達と遭遇するのが気まずいからだ。


適当にカップ麺1つと、ふと目についたちょっと大人向けの雑誌を1冊手に取った。


今日はラッキーだった。

すごく美人の店員さんが、にこやかにお客さんの対応しているではないか。

そのレジの前に長い行列ができていた。


俺はそこに並んでいる間、

「ああ、黒沢さんもあれくらい愛想良ければいいのになぁ」

とか考えていた。

あの店員さんの可愛らしさと言ったら、うちの黒沢さんとは大違いである。


そんなこんなで俺の番が来た。

さあ、お会計をお願いします。美人の店員さん。




その店員は黒沢さんだった。




――――――




「……は?……なんで……?

どうしてお前がここに…………!」

黒沢さんは小さく震えた声を絞り出した。


いつもと比べて愛想が良すぎて、遠目では黒沢さんと気づかなかったのだ。


「いやちょっと……ご飯を買いにですね……」

「うっさい!!黙って金だけ出せ!!」

ピッ


俺の後ろの大行列が一瞬で捌けた。


黒沢さんはカップ麺に続き、この殺伐とした空気感に全くそぐわない、えっちな雑誌を手に取り、表紙を確認した。

チッ…………と舌打ちしてから、嫌な顔でバーコードを読み取った。




「支払い方法は?」

「現金で……」

俺は2000円を出した。


「細かいの持ってこいよ。

お釣りめんどくさいのよ。

てか、なんでそんな財布ジャラジャラさせといて札しか出せないのよ」

……すごい怖かった。


じゃあ、と俺が細かい小銭を出そうとしたら、もういいからと止められて、黒沢さんは無造作にお釣りを卓上にばら撒いた。


最後に黒沢さんは、もう2度と来ないでと俺に釘を刺した。




――――――




俺は追い出されるように店を出た。


そういえばオオカミ子さんも、今日はバイトがあると言っていた。

まさかオオカミ子さんの正体って……。


いや、あまりに早計か。バイトをしている高校生なんて大勢いるだろう。


そう思って帰ろうとしたその時、店の裏口の中からかすかに会話が聞こえてきた。




「黒沢さん、ごめんね。

一昨日みたいにまた深夜帯入れる?」

「すみません……やっぱり体力的に厳しそうで」




……一昨日、深夜?

そういえば昨日の朝、黒沢さんは珍しく眠そうにしていたっけ。

もしや……夜遅くまでバイトしていたってことか?

高校生が一体どうしてそんな無理を……?




「今日この後から新しいバイト始めるので……しばらくはそっちに行かせてください」

「そうなんだ。新しいバイトって?」

「はい、よくわからないんですけど高時給で、何か〈衣装〉を着て接客するらしいです!」




そう聞こえてすぐ、黒沢さんが裏口から走って出てきた。


俺はその〈衣装〉をまとった彼女が非常に気になるというか……いや、彼女がすごく心配だったので、黒沢さんの後を追うことにした。




10分後、彼女は、


〈夜のうさぎ達♡

ふわふわバニーガールズがお出迎え♡

今夜はバニーと遊ばない?♡〉


とどデカく書かれた店に到着した。

高収入の意味が今頃わかったのか、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、〈ふわふわバニー〉としての初出勤に遅れるわけにはいかないので、裏口から店内に入っていった。

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