第39話「引いてはいけない紙」
午後の部。
テンション最高潮。
放送が響く。
『次は借り物競走です!』
観客、ざわつく。
勇者「これは平和競技だろ」
魔王「そう思うか?」
嫌な予感。
スタート位置。
勇者と魔王、なぜか隣。
梓(遠くから)
「フラグ立ったね」
麗奈「立ってない!」
◆スタート
ピストル音。
ダッシュ。
机の上の紙を掴む。
勇者、開く。
固まる。
魔王、開く。
目が止まる。
二人、ゆっくり顔を上げる。
同時。
「…………」
観客席。
梓「え、なにその顔」
◆勇者の紙
『好きな人』
勇者「は???」
声に出た。
観客ざわっ。
麗奈「なに!?」
勇者、紙を裏返す。
もう一度見る。
『好きな人』
現実。
勇者「いやいやいや無理無理無理」
◆魔王の紙
同じく。
『好きな人』
魔王「……は?」
審判「早く連れてきてください!」
魔王(冷静を装う)
(誰だこんな地獄ワード入れたのは)
遠くで梓、口笛。
◆勇者パニック
勇者、視線が泳ぐ。
麗奈を見る。
目が合う。
即逸らす。
(無理無理無理無理)
(今は無理)
(体育祭だぞ!?)
◆魔王、静かに動く
魔王、ゆっくり歩き出す。
一直線。
観客がざわつく。
向かう先。
……麗奈。
麗奈「え」
勇者「え」
梓「うわ」
◆爆弾投下
魔王、麗奈の前で止まる。
一瞬の沈黙。
そして。
「来い」
超シンプル。
麗奈「はぁ!?」
校庭、悲鳴。
勇者フリーズ。
「ちょっ待て!!」
思わず叫ぶ。
魔王、横目。
「お前も同じだろ」
勇者「なっ」
バレてる。
完全にバレてる。
◆勇者、覚悟の瞬間
審判「時間がありません!」
カウントダウン開始。
5
4
勇者、歯を食いしばる。
3
「麗奈!」
2
麗奈、心臓爆音。
1
勇者、手を伸ばす。
「一緒に来てくれ!」
校庭爆発。
麗奈、顔限界突破。
「なんで二人とも私なのよーー!!」
観客大歓声。
梓、崩れ落ちて笑う。
◆結末
審判困惑。
「えー……どうしますか?」
魔王、冷静。
「同時提出でいいだろ」
勇者「それあり!?」
審判、協議。
結果。
「両者ゴール扱い!」
再び歓声。
麗奈、両側から手を引かれた状態。
「……地獄」
でも。
手は振りほどかない。




