第33話 開幕前夜
昼休み。
屋上。
麗奈がぼーっと空を見ている。
そこへ。
「見たよ」
背後から声。
麗奈、ビクッ。
振り向くと――梓。
「な、何を」
梓、にっこり。
「公園。月明かり。汗だく魔王くん」
麗奈、フリーズ。
「……は?」
梓、さらに追撃。
「勇者くんの夜ダッシュも」
沈黙。
三秒。
麗奈、爆赤面。
「な、なんで知ってるのよ!?」
梓、肩をすくめる。
「偶然。あと三バカ情報網」
遠くで三バカくしゃみ。
梓、じっと麗奈を見る。
「どうだった?」
麗奈、目を逸らす。
「別に……」
梓、近づく。
「どっちの背中が刺さった?」
麗奈「刺さるって何よ!」
梓、くすくす笑う。
「顔に書いてある」
麗奈、両手で顔を押さえる。
「うるさい……」
梓、少しだけ真面目な顔。
「ねぇ」
「体育祭、ちゃんと見るんだよ?」
「結果じゃなくて」
「本気」
麗奈、ゆっくり頷く。
梓、満足そうに笑う。
「楽しみだなぁ」
目が完全に策士。
下校後
◆勇者の部屋
夜。
包帯を巻いた膝。
勇者は天井を見つめる。
「……いよいよか」
拳を握る。
(勝ちたい)
(でもそれ以上に)
思い出す。
木の陰から見られていた気配。
(……見てたよな?)
少し笑う。
「明日、ちゃんと見せる」
立ち上がる。
最後の腕立て。
「絶対、勝つ」
◆魔王の部屋
静寂。
窓の外は月。
魔王、机に向かう。
種目表を見つめる。
(逃げぬ)
(誤魔化さぬ)
目を閉じる。
麗奈の声。
『ちゃんと見てるから』
心臓が静かに鳴る。
(ならば――)
立ち上がる。
黒オーラ、ゆらり。
「我は魔王」
「頂に立つ者だ」
だが小さく続ける。
「……見ているなら」
「応えねばな」
静かに拳を握る。
◆麗奈の部屋
ベッドの上。
体育祭パンフレット。
勇者の名前。
魔王の名前。
指でなぞる。
「もう……」
小さく笑う。
(どっちが勝つんだろ)
首を振る。
「違う」
(どっちが本気を見せてくれるか)
窓の外、星。
「ちゃんと見るから」
小さく呟く。
◆梓の部屋
スマホ画面。
【体育祭実況スレ準備完了】
梓、ニヤリ。
「さぁ」
「本番だよ?」
目が完全にラスボス。
夜が明ける。
体育祭当日。
校庭に朝日。
勇者、歩く。
魔王、歩く。
麗奈、見つめる。
梓、笑う。
三バカ、実況準備。
――戦いの幕が上がる。
ココまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。
次回から運動会編開幕です。その後は定番の修学旅行編、卒業編と続きます。三角関係の行方や如何に!
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