第29話「黒幕、梓」
体育館。
歓声。
勇者と魔王がステージ中央。
麗奈は頭を抱えている。
その様子を――
二階観覧席から静かに見下ろす影。
梓。
腕を組み、満足げ。
三バカがこそこそ近づく。
「梓さん」
「ここまで広がるとは」
「天才です」
梓、にこり。
「ちゃんと段取りは組んだからね」
三人「段取り!?」
梓はスマホを見せる。
校内掲示板(非公式)。
匿名アカウント:
《勇者、魔王に宣戦布告》 《麗奈、両者に好意?》 《三角関係勃発》
三バカ、震える。
「最初の火種……」
「梓さん!?」
梓、平然。
「ちょっと面白そうだったから」
「背中押してあげただけ」
視線はステージへ。
勇者が真っ直ぐ立ち、 魔王が静かにオーラを纏う。
梓、くすり。
「ほら、あの二人」
「自分からは動かないでしょ?」
三バカ、納得。
「確かに……」
「魔王様は内心ぐるぐるだし」
「勇者は勢い任せだし」
梓、優しく笑う。
「だから舞台を作ってあげたの」
カメラが魔王へ。
黒オーラの中、内心。
(なぜここまで大事に……)
(我は魔王……)
(なぜスポットライトが当たっておる)
汗一滴。
(梓……貴様か……?)
なぜか気づく。
二階を見上げる。
梓と目が合う。
にっこり。
魔王、確信。
(黒幕だ)
勇者、小声。
「なんか気づいた顔してんな」
魔王、小声。
「背後に策士がいる」
勇者「は?」
その瞬間。
マイク音。
三バカ実況。
「なお本イベントは生徒会公認!」
「安全に配慮し開催します!」
体育館後方。
生徒会長が腕組み。
「面白いから許可した」
魔王、内心。
(世界は我の知らぬ所で回っている)
ステージ脇。
麗奈が梓の元へ。
「……これ、梓でしょ」
梓、笑顔。
「何のこと?」
麗奈、ジト目。
「絶対あんた」
梓、耳元で囁く。
「だってさ」
「麗奈、ちょっと嬉しそうだったし?」
麗奈、爆赤面。
「なっ……!」
梓、満足。
「ちゃんと自分で選びなよ?」
ステージ中央。
勇者、拳を握る。
魔王、静かに目を閉じる。
観客の熱気。
梓、小さく呟く。
「さあ――」
「本気、見せて?」




