第24話 魔王様、やきもちを焼く
放課後。
教室。
夕日が差し込む。
藤沢麗奈は一人でノートをまとめている。
そこへ。
「藤沢」
静かな声。
神崎凌。
麗奈、顔を上げる。
「あ、神崎くん?」
「この問題、少し確認したい」
数学のプリントを差し出す。
麗奈、嬉しそう。
「いいよ」
自然に隣に座る凌。
距離、近い。
二人、同じノートを覗き込む。
その様子――
教室後方。
山田次郎。
ペンが止まる。
(……何だあれは)
視界の端に映る光景。
麗奈が笑う。
凌が少し身を乗り出す。
距離が。
近い。
近い。
(近い)
魔王の内側。
ざわっ。
(これは)
(ただの学習だ)
(勇者は質問しているだけ)
(問題ない)
だが。
麗奈が言う。
「神崎くんってほんと頭いいよね」
ドクン。
凌、少し照れたように笑う。
「いや、藤沢の説明が分かりやすいだけだ」
麗奈、くすっ。
「何それ」
距離、さらに縮まる。
魔王、フリーズ。
(……おのれ)
ペンがミシッと音を立てる。
梓、後ろから小声。
「魔王様?」
「……」
「顔怖い」
次郎の背後に黒いオーラ
ゴゴゴゴゴ……
(我は魔王)
(動揺などせぬ)
(断じて)
だが視線はガン見。
勇者が何か囁く。
麗奈、笑う。
心臓が嫌な音を立てる。
(何を言った)
(何故笑う)
(我の時より笑っていないか?)
梓、面白がる。
「嫉妬だ」
「違う」
即答。
「ならあっち見ないで」
「見ていない」
がっつり見ている。
その時。
麗奈が凌の腕に軽く触れる。
「ここ違うよ」
パチン。
魔王の中で何かが弾ける。
(触れた)
(今、触れたな?)
(勇者に?)
ゴゴゴゴゴゴ……
机が僅かに震える。
梓「ちょっと本気で怖い」
次郎、ゆっくり立ち上がる。
椅子が引きずられる音。
教室が少し静まる。
凌が視線を上げる。
目が合う。
一瞬の火花。
麗奈「山田くん?」
次郎、歩く。
無意識。
二人の机の前に立つ。
沈黙。
凌「……何だ」
次郎、低く。
「問題は解けたのか、勇者」
麗奈「勇者?」
凌、察する。
(完全に焼いている)
「まだだ」
わざと冷静に答える。
麗奈「山田くんもやる?」
無邪気。
三人の距離が急接近。
魔王、内心。
(近い)
(囲まれた)
(心臓がうるさい)
「……貸せ」
プリントを奪うように見る。
凌が横から言う。
「そこはさっき藤沢が教えてくれた」
挑発。
魔王の眉が動く。
(勇者、貴様ー!!)
梓、小声で。
「黒炎出そう」
麗奈、きょとん。
「何?」
「何でもない」
魔王、問題を一瞬で解く。
「ここだ」
麗奈、目を輝かせる。
「ほんとだ!すごい!」
その笑顔。
魔王の殺気が一瞬で消える。
シン。
凌、気付く。
(……単純か)
次郎、顔が少し赤い。
「当然だ」
麗奈、楽しそうに言う。
「なんか二人とも張り合ってるよね」
凌と次郎、同時に言う。
「違う」
ハモる。
梓、爆笑。
夕日の中。
静かな三角形。
だが魔王の内心はまだ荒れている。
(勇者め)
(次は負けぬ)
恋と対抗心が絡み始める。
戦いは、別の形へ。
――続く。




