第19話 「1点の王」
翌日。
教室。
英語小テスト返却。
空気が妙にピリついている。
御手洗梓はニヤニヤ。
(これは絶対面白い)
前の席。
神崎凌。
余裕の姿勢。
(まぁ満点ではないにせよ)
(悪くはない)
後方。
山田次郎。
静かに目を閉じる。
(我は全力を尽くした)
(あとは天命)
先生「神崎」
テストが返される。
パサッ。
凌、確認。
……
「39点」
一瞬、時が止まる。
梓「え?」
凌、無表情。
(……which)
一問落とした。
しかも麗奈が昨日説明していたところ。
後ろから小声。
「勇者、余裕とは?」
梓。
凌、無言。
次。
先生「山田」
紙が置かれる。
次郎、ゆっくり見る。
「40点」
沈黙。
一瞬。
教室が凍る。
次の瞬間。
椅子が鳴る。
山田次郎、立ち上がる。
ゆっくり。
そして。
高らかに。
「ふははははは!!」
全員、硬直。
「見たか!!」
腕を広げる。
「我の勝ちだ!!勇者よ!!」
完全にやってしまった。
教室、静寂。
チョークが落ちる音。
誰かが小さく言う。
「……何?」
凌、顔を覆う。
(やめろ)
梓、震えている。
次郎は止まらない。
「1点差といえど勝ちは勝ち!」
「これぞ魔王の力!!」
横田、小声。
「黒炎の人だ……」
坂田「やべぇ……」
堺、真顔。
「怖い」
麗奈、きょとん。
「山田くん……?」
ハッ。
次郎、我に返る。
教室全員の視線。
先生、ゆっくり言う。
「山田」
「……はい」
「40点は満点じゃないぞ」
現実。
空気がさらに冷える。
梓、爆発。
「っ……!」
机に突っ伏して笑いを堪える。
凌、小声で。
「魔王」
「何だ」
「39も40も変わらん」
静かな追撃。
次郎、固まる。
だが引けない。
「1点は天地の差だ」
真顔。
凌、ため息。
「なら次は勝つ」
静かな火花。
梓、小声で。
「低レベルな頂上決戦やめて」
麗奈、くすっと笑う。
「二人とも仲いいね」
同時に否定。
「違う」
「違う」
ハモる。
教室、ざわつく。
横田「やっぱ変な奴らだ」
だが。
次郎は静かに座る。
テストを見つめる。
40点。
赤い数字。
少しだけ、口元が緩む。
(勝った)
たった1点。
だが確実に。
勇者に。
凌も前を向く。
(次は負けん)
静かな戦い。
梓は呟く。
「魔王、点数でイキるの可愛すぎるでしょ」
その日の放課後。
黒炎の人は。
1点の王として語られることになる。
――続く。




