審判4級試験
お父さんコーチたちに勧誘されて、コーチになったユースケのパパ。お父さんコーチの奮闘と奇跡のプレーを魅せる子供たちの熱い戦い。第6話、審判4級試験
次の金曜日の夜も、エンリコでコーチ会。村上コーチが今の4年のポジションを説明してくれた。
「今は4-3-3のシステムですけど、私は早く4-2-3-1のシステムにしたいんです。早く慣れさせたいと思うんですよね。高学年からでは遅い。今の日本代表もこのシステム使っているので、子供たちもテレビ観て真似できると思うんですよ」
村上コーチは熱くて、冷静だ。厨房から山下コーチも、
「今の4年生たちは頭良さそうだから、いいんじゃないでしょうか」と言う。
素人の自分に反論できるわけもなく、ただただ頷くしかなかった。
村上コーチのアイデアはこうだ。
トップ:トオル
トオルはドリブルでシュートが出来る選手。浜田コーチのお子さんで、お父さんは全くサッカー経験無いけど彼は天性のセンスがあり、メッシュのような選手らしい。
ミッドフィールダ:ユースケ、ヒョーガ、ユーメイ
ユースケは左ウイング、ユーメイは右ウイングで精度高いクロスを上げたり、ドリブルでエグることができる選手。
ここでユースケを褒められ、ありがとうございますと言うと訳が分からなくなるので言わなかった。コーチの時はお父さんであることは忘れようと思った。
ヒョーガはトップ下でボールを前や、右、左に蹴って決定的なチャンスをつくるファンタジスタ、視野が広い選手。
ボランチ:ワタル、マオ
ワタルやマオはしつこくボールを奪うことができ、奪ったボールを前にフィードするチームの要。
バックス:ゲン、ムラッチョ、マサト、リクト
サイドバックのゲンやリクトは相手に抜かれないメンタルの強さがあって、しかも、スタミナもあり、ユースケやユーメイにオーバーラップして攻撃参加もできる選手。
センターバックのムラツチョは守りの要で、最終ラインをコントロールし、いつもオフサイドトラップを狙っている選手。
彼は村上コーチの息子だ。村上コーチの公私混同しない解説は清々しく思えた。
もう一人のセンターバックのマサトは一番背が高く、守りではチームの壁、敵のヘディングシュートを防ぐ選手。
キーパー:アキ
アキは一年からキーパーで、いろいろなコーチから教えてもらっていて、これから体が大きくなると高いボールにも対応出来ることを期待されている選手。先週の練習でマオにループシュートを決められたことを思い出す。
サブ:リュージ、ソウ、ナオヤ
リュージはマサトと同じくらい背が高いのでムラツチョのサブか、トオルのサブ。
ソウはヒョーガのサブ。ヒョーガは右足だが、ソウは左足のファンタジスタ。
ナオヤはユースケのサブで、足の速さで左からドリブル突破する選手。
「村上コーチ、聞くと無敵に聞こえますが?」
「いやいや、わたしの期待、思いを込めて、ポジションを決めてるだけで、実際はまだまだです。石川コーチも練習見て、この選手をこう使いたいとかあれば言って下さい」
「そうですね。まずは選手たちの顔覚えて、どんなプレーするか見てみます」
「選手たちはクラブチームと比べる練習時間も短く、目の前に敵が来ると思ったようにプレー出来ません。うちの練習は週末だけ、クラブチームは週末は試合、平日の放課後ほぼ毎日練習です」
「それはかないませんね」
「だから頭を使った勝ち方を教えていきましょう。ゲーム開始時は0対0で始まるのですから」
ここで先週と同じように、6年の高橋コーチと吉田代表が合流する。
「ユーキが横浜SCやめるって、母親が言ってきました」と高橋コーチが残念そうに言う。
「先週の練習の時、ユーキの母親が来ていたので、私からスタメンの起用やサブの交代の方針を説明したのですが、全員が順番に試合出てはダメなんですかって言われました。高学年になって、勝ちにこだわるとなるとそうもいかないと話をしたのですけどね」と吉田代表が言った。
「ユーキは続けたいはずですよね。それとも本人も試合出れないからやめたいと思ってるのかしら?」と山下コーチが聞くと、
「親子の関係もあって、これ以上は我々が詮索しないほうがいいです。心配しないといけないのはユーキと残った選手たちの関係です。仲悪くなったり、イジメとかに発展しないようにしないといけません。チームの中でユーキのやめる理由を何というか?」と心配そうな吉田代表が言う。
「あ、ユーキの母親は中学受験を理由に辞めますと伝えてくださいって言ってました」
「まぁ、それが無難な理由でしょうね。そうか、ユーキは私立行く予定だったんですね。次の練習のタイミングで、高橋コーチから選手に伝えて下さい」
高橋コーチと吉田代表の会話を聞いて、たかが少年サッカーとは言え、いろいろな心配事があるんだと分かった。それでも選手たち、子供たちを第一に考えないといけないと言う吉田代表は立派だ。こういった問題は子供たちの成長にも大きく影響するはずだ。親たちがどこまで口を出してよいか考えさせられた。
「そう言えば石川コーチは審判免許はどうするのでしたっけ?」も山下コーチが聞いてきた。
「来月試験受ける予定です。ルールブック読みましたし、先週はミニゲームで副審やらせてもらいました」と答えた。
「四級試験受かると審判員の胸につけるワッペンと登録書、そしてイエローカード、レッドカードのセットがもらえます。ホイッスルと黒の審判ユニフォームはクラブのものを貸し出しますので、新しく買うものはありませんから」と村上コーチが教えてくれた。
「ほんと助かります。浜田コーチは自信がないから副審だけでと言ってるので、石川コーチが主審をしてもらうと助かります」と吉田代表が言う
「自分もまだまだです。普段のミニゲームから審判の練習していきますね」
「ラグビーと同じですよ」と吉田代表が言うが、全然違うと思った。あとで分かったが吉田代表もラグビーの経験者だったらしく、この先もいろいろとアドバイスをくれたのだけど、あまり参考にはならなかった。やはり技術的なところは山下コーチやナオキコーチに敵わない。戦略的なところは村上コーチ、親御さんの対応などのピッチ外の問題は吉田代表が頼りになるなと思った。
10月になり、免許試験を取りに行った。半分くらいは高校生で、後は自分と同じようなお父さんコーチのような方が多かった。ビデオを見た後、筆記試験。
こんな問題で4択のマークシートだった。
・スローインが正しく行われるために必要な条件はどれか?
・オフサイドとなる可能性があるのはどの状況か?
・直接フリーキックの反則に該当するものはどれか?
・ゴールキーパーが6秒以上ボールを保持した場合の再開方法は?
・副審の主な役割として正しいものはどれか?
時間内に二回は見直し出来たが、テストでこんな集中したのは大学受験以来だ。とっても疲れた、
僕含め、全員が合格したように見えた。とりあえずほっとした。発表の後、グランドで副審のフラッグの上げ方を練習し、最後に審判員のワッペン、登録書、イエローカード、レッドカードをもらって解散した。
よし、これで準備が出来た。後は実際やって覚えるしかない。早く審判に慣れたいと思った。それはラグビーもサッカーも選手たちがプレイをしているけど、実はゲームをスムーズに進行させるのは審判次第なのだと思っているからだ。試合を見ていると選手たちが審判を信頼しているなとか分かるときがある。国際試合でも信頼関係が出来ていない場合、試合が荒れたりするのだ。最初の数分で信頼されるような審判になりたいなと思った。最初の挨拶や最初の2、3回のホイッスルで選手たちは感じとるのだろう。
読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。
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