練習、そして、ミニゲーム
お父さんコーチたちに勧誘されて、コーチになったユースケのパパ。お父さんコーチの奮闘と奇跡のプレーを魅せる子供たちの熱い戦い。第五話、練習、そして、ミニゲーム
ピッチが完成し、練習を始める前に村上コーチが選手たちを集めた。
「今日からユースケのお父さんさんかコーチとして参加します。石川コーチの方から一言お願いします」
事前に一言お願いしますねと言われていたので、予め考えていたことを言った。
「おはようございます。今日からコーチとして参加する石川です。自分は高校の時ラグビー部に入っていて、サッカーの経験はないので、自分も山下コーチに教わって、みんなと一緒に練習しようと思います」
チラッと山下コーチを見る。了解と頷いてくれた。
「そして、サッカーは教えられないけど勝ち方を教えてあげる。ラグビーの経験をいかしてね。村上コーチ、浜田コーチとどんな練習して、どうやって試合に勝つか相談して、みんなと楽しくサッカーしたいと思いますのでよろしくお願いします」
「よろしくおねがいしまーす」と元気な声が返ってきた。
「よろしくお願いします。石川コーチ。ラグビーじゃないからハンドは禁止ですから」と笑いをとってくれた。
「それじゃ、ユースケ、アップとブラジル体操ね」も村山コーチ。
「はーい、みんな丸くなって」とユースケがみんなとアップを始めた。
ブラジル体操の後はパス連だ。二人一組で、始めは10メートルくらいの間隔で、徐々に間隔を広げ、最後はピッチのタッチラインから反対のタッチラインまで離れてのロングパス。途中で山下コーチが集合をかける。
「試合中、パスが来るのじっと待ってたらどうなると思う?」
しばらくの沈黙の後、誰かが、
「敵に取られる」と答えた。
「じゃぁ、どうする?」
「敵より先にボールをうけとる」
「そう、そのためには?」
さっきより長い沈黙のあと、
「敵より前に出てボールをうける」
「そう、パス連の時も試合中だと思って、パスが来たら前に出てトラップしよう。そして、パスを出したら後ろに戻る。もちろん、トラップは自分が蹴りやすい近いところにボールを着地させて、パスは正確に相手の足元に出すように。前に出ながらトラップ、パスしたら下がる。いいね!」
「はい」と数人が返事すると、浜田コーチが、みんなで返事しようよと言うと、バラバラだが、全員が返事して、パス連を再開する。
前後に動くと、ちょっと上手くなったように見える。
「常に試合を意識して練習すると、みんな集中するんですよ」と山下コーチが小声で教えてくれた。
「次はリフティングね、ホイッスル吹いたらスタート。誰が最後まで続くか見てみよう。ボール落とした人は座って、うまい人はどんなリフティングしているか見てて。じゃあ、ピー、スタート!」
みんな一斉に始めたが、10回を超えると数人がボールを落とし、20を超えるあたりから半分くらいになり、50超えるとユースケとマオの二人となった。
マオは横浜SCのたった一人の女の子の選手だ。負けず嫌いで、一生懸命練習するらしく、ユースケが言うには男子よりもうまいらしい。90を超えたところでユースケがボールを落とした。マオは永遠に落とすことはないんじゃないかというペースで150を超えた。みんながすげーという目で見てると村上コーチが、
「マオ、もうオッケー、終了。みんな拍手」と言って、大きなさ拍手が響く。マオもうれしそうだ。
村上コーチが、
「ユースケとマオの違い分かった人?」と分かる人は手を挙げてのポーズ。ちょっとして、
「マオは無回転でボールを小さく上げてた。ユースケはボールが回転してて、最後は回転のスピードが上がり過ぎて、失敗した」と誰かが言うと、どっと大きな笑いがおこった。ちなみに、今日現在、自分は選手たちの名前と顔を数人しか分かっていない。
「そう、よく気付いたね、マオは無回転なんだよ。ユースケみたいにゆっくり縦回転も安定するけどゆっくりが早くなるとダメ。これもトラップでボールを無回転で自分の近くに置く練習になる。無回転かゆっくりの縦回転で続けれるように練習しよう。あ、横回転はもってのほかね、横にびよーんと飛んでいくから!」と村上コーチが言うとまたどっと笑いがおきた。
ちょっと練習すると、選手全員が30を超えることが出来た。そこに直輝コーチが現れた。直輝コーチは吉田代表の息子さんで、この横浜SC設立のきっかけを作った選手だ。今は大学生で、社会人のサッカーチームで活躍しているらしく、たまに山下コーチと練習に参加する。サッカーが上手く、まるでJリーガが現れたかのように選手たちは、
「あ、直輝コーチだ」と選手たちが騒ぐ。
山下コーチが、
「直輝コーチはどんな回転ボールもトラップ出来んるだよ」と言って、スパイクを履き終えた直輝コーチにわざと回転かけたボールを高く放り投げる。直輝コーチはすっと落下地点に移動し、足の甲で優しくトラップし、無回転になったボールを、目の前に着地させ、山下コーチパスを返した。選手たちの「おー」と言う言葉がグラウンドに響いた。
「今日の最後はミニゲームします。今日は誕生日順に並んで」と村上コーチが言って、
「先頭の人から数数えて、奇数と偶数でチーム分け。奇数はビブス着て。直輝コーチはビブチームに入って、山下コーチはビブ無しに入ってください。8対8のミニゲーム、ポジションはチーム内で決めて。私、主審するから、浜田コーチと石川コーチは副審お願いします」
早速、副審だ。最初だから間違ってもいいだろう。とりあえずタッチラインから出るボール、ゴールラインをから出るボール、オフサイドをチェックしよう。選手たちは8人制なので、キーパーを抜くと7人で、3-2-2のシステムで戦うようだ。11人制より選手が少ない分、一人一人のボールに絡む時間が多く、休む暇はなさそうだ。
なかなかシュート決まらず、一進一退で5分くらい過ぎたところで、ハーフウェーライン付近のビブスを着たミッドフィールダーのマオにボールが飛んできた。優しくトラップし、見事に足元にボールを着地させると、マオは一瞬ゴールを見た。そして、マオがボールをふわりと蹴り上げた。相手ディフェンスとキーパーの頭の上を綺麗な弧を描いてボールがゴールマウスに吸い込まれていった。
「ピー、ゴール」と主審の村上コーチがホィツスルを吹いた。ビブスを着た選手たちが口々に「マオ、ナイス、ループシュート!」とマオとハイタッチしている。ゴールを決められたキーパーのアキが触り込んでいる。
山下コーチが、集合をかける。
「マオ、ナイス、ループシュート。みんな。今のはマオのトラップがうまいことと、一瞬ゴール前が空いていると見て、思いっきり蹴り上げたのが良かった。今度の試合も、これ狙ってみようよ、マオ」
マオが頷く。
「アキ。今のはアキのミスじゃない。元気だせ。8人制は選手が少ないぶん、ボールが上がれば、キーパーも最終ラインと共に上がって攻撃に参加していいんだよ。全員上がって数的有利作った方がいいからね。今のはマオのトラップが神がかっていたから、あれは止められない。よし、じゃぁ、ブレー再開しよう、村上コーチお願いします」
「あ、マオ、俺からも一言、もし将来ナデシコ・ジャパンで試合に出れて、インタビューされたらさ、小学生の時、横浜SCのコーチにサッカー教わったって言ってね。コーチたちそれだけでビールがおいしく飲めるから」と村上コーチがふざけて言うと、他の選手が、
「なんでマオだけに言うの?」と言ったが、村上コーチはニコッとしながら、ゲームを再開したのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。
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