表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サッカー未経験の父親が少年チームのコーチになったら、想像以上にドラマがあった  作者: 岩田 ヒロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

応援席にイエローカード

少年サッカーの合宿に顔を出したユースケのパパ。お父さんコーチたちに勧誘されて、コーチとして参加するか悩むパパ。お父さんコーチの奮闘と奇跡のプレーを魅せる子供たちの熱い戦い。第三話、応援席にイエローカード

 次の週末、家の近くの新横浜小学校で市大会の予選があるというので応援に行った。コーチを引き受ける気は全くなかったが、先日のコーチ会で話題になったシステムや審判の動きに興味があった。


 横浜SCは4-3-3のシステム。ユースケはフォワードの左ウイングだ。ユースケは手は右利きだけど、足は左利きでレフティーと呼ばれている。なぜかサッカーを始めた時から左足で蹴っていたのだ。もうちょっと足が早ければと思うが、遺伝だ。ごめん、お父さんも足は早くはない。


 相手チームはYM新横浜。クラブチームで常勝チームらしい。システムは同じく4-3-3だ。コーチ会で髙橋コーチが、ポジションの役割が明確で、サイド攻撃がやりやすいと言っていたことを思い出す。案の定、YM新横浜は右のサイド攻撃で攻めてくる。横浜SCの左サイドバックと左センターバックが、左によって攻撃を阻止しようとするが、簡単にクロスを上げられ、相手フォワードのヘディングでシュートをゆるしてしまった。これは格が違い過ぎて、悲惨な結果になる予感。


 村上コーチが、

「これから、これから、下向かないで、いつもの練習どおり行こう!キャプテン、ユースケ、みんなに声かけて行こう!」と声をかける。そうだ、ユースケはキャプテンだったんだ。それにしてもフォワードのユースケは攻撃されているにも関わらず、いつくるかも分からないボールをハーフウェーライン近くで待ちながら、チームメンバーに声をかけている。私はディフェンスに加勢すればいいのにと思って見ていた。


 ピッピッピー、試合終了の笛。0対4で負けた。選手達がハーフウェーライン上で整列し、試合終了の挨拶をすると、相手チームの監督、コーチの前に横1列になり、「ありがとうございました」とユースケの掛け声で頭を下げる。そして選手たちは村上コーチ、浜田コーチを囲む。選手たちは悔しそうだ。


「相手はYM新横浜、失点を4で抑えたし、得点も惜しいところがあった。俺は次の試合の主審やるから、お弁当食べておいて。主審終えてから反省会して解散ね。浜田コーチ、お願いしますね」と既に審判服を着た村上コーチが言った。

「はい、あっちのゴール裏で試合見ながらお弁当食べよう。移動、移動」と浜田コーチが選手たちをゴール裏に連れて行く。


 ピッチを挟んで監督、コーチの反対側にいた応援のお父さん、お母さんもゴール裏に移動する。選手たち、応援の親たちも元気はない。浜田コーチがおにぎりを食べながら、各選手の声をかけている。あのパス良かったよとか、体はってディフェンスして良かったと褒めていた。徐々にお弁当も進み、少しずつ笑い声が聞こえてきた。


 村上コーチが主審をする試合が始まった。主審はプレーを妨げないようにしながら、ボールの近くに常に移動する。きっと選手の動きとかゲームの流れを予想しているのであろう。常に全体見ながら小走りに移動している。さすがだなと思った。


 二人の副審はピッチの半分ずつを分担していて、対角のタッチラインに沿って上下する。ボールが反対ピッチにあるときはハーフウェーラインで止まっていられるが、反対ピッチから攻撃されると副審はディフェンスの最終ラインとともに、タッチラインに沿って上下に移動しないといけない。反対ピッチからキラーパスが飛んで来たりなんかするとダッシュしなければいけない。これは最終ラインの選手たちと同じように大変だ。


 ボールがタッチラインやゴールラインから出たり、オフサイド(最終ラインと攻撃者の位置関係)をチェックし、フラッグを上げるのだ。見てて難しいかなと思ったのが、どっちがボールを出して、どちらのスローインだとか、コーナーかゴールキックを即座に判断しないといけない。走りながらよくプレーを観てないといけない。さらに危険なプレーがあれば、フラッグを上げる。主審の死角を補うのが副審だ。


 体力的には副審が大変で、主審はゲームの流れや経験が肝だなと思った。コーチ会に参加したおかげで、システムや審判の動きが理解でき、試合を見るのが楽しくなってきた。これまではユースケしか見てなかったことに気づいた。


 試合を見ていて気になることがあった。一点入れられて負けてる側のチームの応援が徐々に加熱し、

「行けー、xxxちゃん!」

「シュートだ!」

「ドリブルだ!」と応援のお父さん、お母さんの声が校庭に響き渡る。主審をやっている村上コーチもさっきからちらちら応援席に目をやる。少年サッカーでは選手たちの指示はチームの監督、コーチがするものであり、応援席からの指示は禁止されている。普通はコーチ達が応援席に向けて、そういったルールを事前に説明するのであるが、全くそんなルールを知らないかのように大声を出し始めた。そして、主審がファールをとると主審に対しブーイングしてきた。


 そのチームの監督やコーチが注意すればいいのにと見ていたら、

「ピー」と村上コーチが長いホイッスルを吹いた。緊張の空気が流れる。選手たちは誰がファールしたか辺りを見回している。


 主審が応援席までゆっくりと歩き、応援席にイエローカードを出した。

「応援席からの選手への指示は禁止です。監督やコーチの声が聞こえません。静かに応援してください」

 その場がシーンと氷ついた。お弁当食べてた選手たちも村上コーチを見つめ、固まっていた。


 主審はちょっとして試合をリスタートした。横浜SCの選手たちは、村上コーチ、かっこいいなぁと囁きあっていた。その後、応援席からの声は一切出ず、そのチームのコーチたちの指示がグラウンドに響き渡るようになった。そして、なんとそのチームは逆転し、勝利で試合が終わった。


 試合終了後、村上コーチはなにごともなかったように選手たちのところに戻り、反省会を行った。選手たちは村上コーチを尊敬のまなざしで見つめ、コーチの話を聞いる。村上コーチと浜田コーチは選手たちの良かったプレーを褒めた。選手たちは嬉しそうにして、ゲームで負けたことを忘れたかのようだ。 

 解散後、先ほどの勝ったチームの監督が

「村上さん、ありがとうございました。私も次から選手たちだけでなく、応援席のマナーも指導します」と言いに来た。村上コーチは、

「いい試合になって良かったです」と言った。


「サッカーを教える以外にもたくさん教えなければいけないことがあるんです」と言った村上コーチの言葉を思い出し、こんなコーチならやってみたいと思ってしまった。


 解散の後、横浜SCの代表監督、吉田さんが登場した。吉田さんは10年前に息子さんがサッカーしたいと言うので横浜SCを立ち上げた方だ。息子さんが卒業すると各学年の指導は各学年のお父さんコーチに任せ、コーチたちの相談役に徹している。村上コーチ、浜田コーチが代表に試合内容、結果を報告すると次の試合も頑張りましょうと二人を労った。そして、代表が私に、

「お父さんコーチお願いできませんか?」と尋ねてきた。

 村上コーチの主審、浜田コーチの選手たちのフォローを見た後で気分が高まっていた。

「はい、いろいろと教えてください」と答えていた。村上コーチと浜田コーチがよろしくお願いしますと握手を求めてきた。


 帰り道、ユースケに聞いた。

「なんでディフェンスに参加せず、ハーフウェーラインで待ってたの?」

「全員がボールに集まったら、カウンター攻撃出来ないから、あそこでスタンバイしてたんだよ。浜田コーチが次を考えて、ポジションしろって、いつも言うんだよ」

 村上コーチ、浜田コーチ、山下コーチに教わらなければいけないことがたくさんありそうだ。

「ユースケ、お父さん、コーチすることにしたから」

「えっ・・・」


読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。

コメント、感想、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ