隠された真実
フードの男が消えた夜。リオンは胸の奥に重石を抱えたまま、ほとんど眠れなかった。
翌朝、三人は再びギルドの資料室に集まる。
「昨日の男……ただ者じゃなかったな」
ガルドが低く唸る。
「ギルドに報告すべきだわ。放っておいたら、町全体に危険が及ぶ」セリアは即座に主張する。
しかし、リオンは首を振った。
「待ってくれ。……もし“継承者”って言葉が広まったら、俺は……」
「狙われるのは間違いない、ってこと?」
「ああ。ギルドの中にも、あの男と繋がってるやつがいるかもしれない」
リオンの言葉に、沈黙が落ちた。セリアの眉が寄る。
「でも、私たち三人だけでどうにかできる相手じゃないのよ」
「それでも……」リオンは唇を噛んだ。「俺のせいで誰かが巻き込まれるのは嫌なんだ」
その言葉に、セリアの胸がちくりと痛んだ。
(リオンはいつも、自分のことより周りを心配する……)
彼女はそっと息を吐き、少し柔らかい声で言う。
「……だったら、余計に一緒に戦わせて。仲間でしょ」
ガルドもにやりと笑う。
「坊主、覚えとけ。仲間を頼るのも勇気のうちだ」
リオンは視線を落とし、二人の想いを胸に受け止めた。
◇
その日の午後、セリアは巻物の文字を写し取り、古語の辞典と照らし合わせていた。
「……やっぱり“継承者”って言葉は特別な意味を持ってる。『古代の扉を開く者』……そう書かれてる」
「扉?」
「おそらく、どこかに眠る古代の遺産を指してるんだと思う。リオン、あなたがその鍵になる」
リオンは息を呑んだ。胸の奥で、ぼんやりとした記憶が揺らぐ。
――炎に包まれた村、泣き叫ぶ母の声、そして眩い光。
(あれは……俺が幼い頃に見た夢じゃなかったのか……?)
頭を押さえるリオンを見て、セリアは心配そうに覗き込んだ。
「リオン、大丈夫?」
「……ああ。ちょっと思い出しただけだ」
彼の曖昧な返事に、セリアはそれ以上追及できなかった。
◇
その夜。
ギルドの裏路地を歩く二人の影があった。
「奴は間違いなく“継承者”だ」
「ふん、ならば我らの主のために、早急に確保せねばなるまい」
その声を盗み聞いたリオンは、息を潜めて拳を握りしめた。
(やっぱり……俺は狙われている。だけど、もう逃げない)
決意の炎が、彼の瞳に宿り始めていた。




