初めての共闘
町の外れ。麦畑が広がるその先に、ぽっかりと口を開いた小さな洞窟があった。
「この辺りに魔物が住みついて、畑を荒らしてるらしいわ」
セリアが地元の農夫から仕入れた情報を伝える。
「依頼人は困ってたな。飯が食えなくなるのは一大事だ」
ガルドは大剣を背中から外し、肩に担いだ。
「よし、ちょうどいい腕試しだ。リオン、気合い入れろよ」
「う、うん!」
三人の初仕事――それは、町を悩ませる小鬼退治だった。
洞窟の中は湿っていて暗く、苔の匂いが鼻をつく。松明を掲げると、奥から甲高い声が響いた。
「ギィィッ!」
緑色の肌をした小さな影が、何匹も飛び出してくる。錆びた短剣や棍棒を振りかざし、奇声を上げた。
「リオン、下がって!」
セリアが素早く詠唱を始める。掌に魔力の光が集まり、炎の矢が放たれた。
轟、と音を立てて先頭のゴブリンが吹き飛ぶ。
「はっはっは! 派手だな、お嬢ちゃん!」
ガルドは豪快に笑い、大剣を横薙ぎに振るった。一撃で二匹のゴブリンをまとめて弾き飛ばす。
――その光景に圧倒され、リオンは立ち尽くしていた。
心臓が早鐘を打つ。手は震え、足が動かない。
(俺……何もできない……?)
そのとき、背後から影が迫った。
「リオン、危ない!」
セリアの声と同時に、ゴブリンの棍棒が振り下ろされる。
反射的にリオンは腕をかざした。
――瞬間、体の奥から熱が湧き上がった。
青白い光がほとばしり、目の前に半透明の壁が生まれる。棍棒が叩きつけられたが、バリンと弾かれ、ゴブリンが吹き飛んだ。
「……今の、俺が?」
リオンは呆然と呟いた。
「やっぱりな」
ガルドが口角を上げる。
「坊主、隠し持ってやがったな。防御系の魔法……いや、古代魔法の片鱗かもしれねえ」
「リオン、すごいじゃない!」セリアの顔がぱっと輝いた。
褒められたことで、リオンの胸に力が湧いた。
「……やってみる!」
次の瞬間、ゴブリンが四方から飛びかかってくる。
「リオン、前に出すぎるな! 俺が斬る!」
ガルドが大剣で前線を切り開き、セリアが後方から魔法で援護する。
「リオン、守りを展開して!」
「わかった!」
リオンは仲間の動きを見て、自分の役割を理解した。
前線のガルドを守り、セリアの詠唱を支える。
次第に、三人の動きが噛み合い始める。
やがて最後の一匹をガルドが大剣で両断し、洞窟に静寂が訪れた。
「ふぅ……終わったか」
ガルドが剣を肩に担ぎ直す。
セリアは額の汗を拭い、リオンに振り返った。
「リオン、すごかったわ。あの防御魔法、私たちを守ってくれた」
「……俺、本当に役に立てたんだ」
リオンの胸に温かな実感が広がった。
「当たり前だ。お前がいなきゃ俺の背中に穴が開いてたかもな」
ガルドがにやりと笑う。
「仲間ってのは、こうやって互いを補い合うもんだ」
その言葉に、リオンの心はじんわりと熱くなった。
初めて仲間と肩を並べて戦った――その喜びが、恐怖を上回っていた。
洞窟を出ると、空は茜色に染まり始めていた。
三人は並んで歩きながら、無言のまま達成感を分かち合う。
――これが、旅の始まりにすぎないことを、まだ彼らは知らなかった。




