遺跡に潜む影
石畳の街道を抜け、王都から半日の行程を経て――リオンたちは鬱蒼とした森の奥に建つ古代遺跡の前に立っていた。
苔むした石の柱が折れ曲がり、入口は闇に呑み込まれたように真っ黒に口を開けている。近づくだけで、空気は湿り気を帯び、どこか淀んでいるように感じられた。
「……嫌な気配だな」ガルドが剣を抜き、警戒を強める。
「瘴気が濃い。普通の魔物の巣じゃないわね」ミラが眉をひそめる。
リオンは無意識に胸のペンダントに触れた。冷たい石が、心臓の鼓動と呼応するように脈打つ。
◇
遺跡の中は暗闇に包まれていた。
セリアが手をかざすと、柔らかな光の球が浮かび上がり、周囲を照らす。
「……行こう」
足音が石床に反響し、奥へと進むたびに空気はさらに冷たく重くなっていく。
突如、影が揺らめいた。
「来るぞ!」ガルドの声と同時に、闇から飛び出したのは狼型の魔物だった。だがその瞳は赤黒く濁り、口からは瘴気が漏れ出している。
「影に侵されてる……!」ミラが息を呑む。
狼は狂ったように吠え、リオンへ飛びかかってきた。
咄嗟に剣を抜いたが、腕に重い衝撃が走る。
「くっ……!」
間一髪、セリアの光の矢が飛び、魔物を押し戻した。
「リオン、大丈夫!?」
「平気……だけど、このままじゃ!」
リオンの胸でペンダントが眩く輝き始める。
次の瞬間、彼の剣身に白い光がまとわりついた。
「これが……古代魔法……!」
剣を振り下ろすと、光が奔流となって狼を包み込み、影を焼き払った。断末魔の叫びと共に、瘴気は霧散する。
だが――。
リオンの全身に鋭い痛みが走り、膝が崩れ落ちそうになる。
「リオン!」セリアが駆け寄る。
「大丈夫……だ。ただ、力を使うと……体が……」
ガルドが険しい顔をした。
「こいつは代償持ちの力だな。無理すれば命を削るぞ」
リオンは唇を噛む。
確かに剣は強大な光を放ったが、代わりに自分の体が蝕まれるのを感じていた。
◇
その時、遺跡の奥から低いうなり声が響いた。
空気が震え、壁に刻まれた紋様が赤く光り始める。
「まだ奥に……もっと強い影がいる」ミラの声は震えていた。
セリアがリオンの手を握り、強く見つめる。
「無理はしないで。でも……あなたの力が必要になる」
リオンは彼女の瞳を見返し、息を吸い込んだ。
「わかった。みんなで、乗り越えよう」
四人は再び奥へと進む。
遺跡の闇の奥で待ち受ける存在は、彼らを試すかのように息を潜めていた。




