表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

束の間の休息

ギルドの扉を押し開けると、酒場のような賑わいが再び三人――いや、四人を迎えた。

 受付嬢が顔を上げ、にこやかに声をかけてくる。

 「おかえりなさい。依頼は無事達成されましたか?」

 ガルドが討伐した黒狼の証拠を机に置くと、彼女の目がわずかに見開かれた。

 「……これは。普通の狼とは違いますね」

 「影に侵されてた」リオンが答えると、受付嬢は小さく頷き、険しい顔をした。

 「最近、こうした異常個体の報告が増えているんです。ギルドでも調査を進めていますので、何か情報があれば共有していただけると助かります」


 ◇


 報酬を受け取り、ようやく安堵の表情を見せたガルドが声を張り上げた。

 「よし! 今日は祝勝会だ!」

 「もう……本当に飲むことしか考えてないんだから」セリアは呆れつつも微笑む。

 ミラはにやりと笑って、リオンの肩を軽く叩いた。

 「ねぇ、君も行こうよ。初依頼だし、盛大に祝おう!」

 「えっ、俺も?」

 「当たり前じゃない。主役の一人なんだから」


 こうして四人は近くの酒場に移動した。


 ◇


 酒場は木造の温かみのある内装で、香ばしい肉の匂いが漂っていた。

 大皿に盛られた料理を囲み、四人は笑い合いながら食べる。

 「リオン、意外と度胸あるじゃない」ミラが笑いながらグラスを掲げる。

 「い、いや……必死だっただけで」

 「でも、確かに強くなってるわ。光の魔法も前より安定してきた」セリアの言葉に、リオンの頬が赤くなる。

 「お前ら、若いっていいなぁ」ガルドが豪快に笑い、酒を一気にあおった。


 その瞬間だけは、影の脅威も忘れ、確かに青春のひとときだった。


 ◇


 夜。

 リオンは宿の窓辺に立ち、王都の夜景を見下ろしていた。

 「……本当に、ここに影がいるのか」

 街は明かりに包まれ、人々の笑い声が響いている。だがその奥に、黒い靄がうごめいている気がしてならなかった。


 不意に、ペンダントが淡く光を放った。

 「また……」

 光はすぐに収まったが、胸に残ったざわめきは消えなかった。


 「リオン、まだ起きてたの?」

 振り返ると、そこにはセリアが立っていた。

 「眠れなくて……」リオンが苦笑すると、セリアは窓辺に並んで立ち、夜空を見上げる。

 「影が迫っていても……私たちはきっと大丈夫。だって、一緒にいるから」

 彼女の言葉に、リオンは胸の重さが少し軽くなるのを感じた。


 ◇


 一方その頃――王都の裏路地。

 フードを被った数人の影が、ひそやかに集まっていた。

 「継承者は王都に入った」

 「ふん、愚かな。いずれ我らが手に落ちる」

 赤い瞳が夜の闇に浮かび、冷たい笑みを浮かべる。


 ――束の間の安息は、嵐の前触れに過ぎなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ