王都への門出
長い山道を越え、ようやく視界に広がったのは――城壁に囲まれた巨大な王都の姿だった。
「す、すごい……!」リオンは思わず息を呑む。
高くそびえる城壁、天を突く塔、門前に広がる人の波。旅の村々とは比べ物にならないほどの活気がそこにあった。
セリアも目を輝かせる。「これが……王都」
「よし、寄り道はなしだ。まずは冒険者ギルドに顔を出して、身分を確保するぞ」ガルドが現実的な声で二人を促す。
◇
王都の門をくぐると、雑踏の音が一気に押し寄せてきた。
行商人の呼び声、馬車の軋む音、子どもたちの笑い声。リオンは目を回しそうになりながらも、その熱気に胸を高鳴らせる。
「リオン、はぐれないで」セリアがそっと袖を掴む。
「わ、わかってる!」
そんな中、彼らの前に突然、一人の青年が立ちはだかった。
銀の髪を持ち、淡い青のマントを羽織った青年。どこか気品を感じさせるが、彼の瞳は妙に冷ややかだった。
「……君たち、旅人か」
「誰だ?」ガルドが警戒して斧の柄に手をかける。
青年は小さく笑った。「僕はエリオット。王立魔術学院の者だ。――継承者を探している」
その一言に、リオンの心臓が跳ねた。
「……なぜ、それを?」
エリオットは答えず、ただリオンの首元のペンダントに視線を向ける。
◇
重い空気が流れる中、セリアが前に出て声を強めた。
「私たちは、あなたに答える義務はないわ。行きましょう」
彼女の言葉にガルドも頷き、三人は人混みを縫うように歩き出す。
しかし、エリオットの冷たい声が背後から追ってきた。
「継承者を狙う影は、もう王都の中にまで忍び込んでいる。君たちが動かなければ、多くの人が犠牲になるだろう」
リオンは思わず足を止めた。
(影が……ここにも……?)
背筋に冷たいものが走る。
◇
冒険者ギルドにたどり着いた三人は、ようやく一息ついた。
ギルドは広々とした石造りの建物で、多くの冒険者が行き交い、酒の香りと笑い声が満ちている。
「とにかく、ここで依頼をこなして信用を得るんだ。それから情報を集めよう」ガルドが言う。
リオンは窓の外に視線を移した。
夕暮れの王都は美しく輝いていたが、その影はどこか黒く濁って見えた。
(……俺が継承者であるせいで、また誰かが巻き込まれるのか?)
セリアが優しく声をかける。「大丈夫。私たちが一緒にいる」
その言葉にリオンは小さく頷き、再び前を見据えた。
――王都の旅は、ここから始まる。




