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影の追跡者

 山道を進むリオンたち。前夜の戦闘で疲労は残っていたが、三人は足を止めることなく歩いていた。

 「昨日の奴ら……ただの魔物には見えなかったな」ガルドが険しい顔で言う。

 「うん、あの動き……人間の兵士みたいに統制されていた」セリアが頷く。

 リオンは胸の奥に重いものを抱えながら、ペンダントを見つめた。

 (あの敵……もしかして、俺の力を狙って……?)


 ◇


 昼過ぎ、三人は断崖の道に差しかかった。足場は狭く、片側は深い谷底だ。

 「気をつけろよ、ここで落ちたらひとたまりもない」ガルドが先頭に立ち、ゆっくりと進む。

 その時だった。


 ヒュッ、と矢が空を切り、リオンのすぐ横をかすめた。

 「伏せろ!」ガルドの声と同時に、岩陰から黒装束の男たちが現れた。

 鎧を纏った魔物とは違い、明らかに人間。だが、その目は赤く濁り、まるで影に飲み込まれたようだった。


 「影の……追跡者?」セリアが震える声を漏らす。

 「なるほどな、俺たちを狙っていたか」ガルドが剣を構える。


 ◇


 矢の雨が降り注ぐ。

 リオンはとっさに両手を掲げ、青白い障壁を展開した。

 「ぐっ……!」無数の矢が光の壁に弾かれ、破片が周囲に飛び散る。

 「リオン!」セリアが叫び、炎の矢で反撃する。

 敵の一人が倒れたが、残りは怯むことなく突進してくる。


 「クソッ、数が多い!」ガルドが前に出て、二人を庇うように斧を振り回した。

 鋼と鋼がぶつかり合い、火花が散る。


 ◇


 混戦の中、リオンの耳に低い声が響いた。

 『継承者を捕らえよ。生かしたまま……』

 まるで風に乗った囁きのように、頭の中に直接流れ込んでくる。

 「……俺を、狙っている……!」リオンの表情が強張る。


 セリアが振り返り、真剣な目でリオンを見つめる。

 「だからこそ、私たちが守るの。あなたは一人じゃない」

 その言葉に、リオンの胸が熱くなった。


 「わかった……なら、俺も戦う!」


 彼の掌から再び光が溢れ、今度は障壁ではなく、敵を弾き飛ばす衝撃波となって放たれた。

 「ぐっ……!」追跡者たちが崖際まで吹き飛び、次々と谷底に消えていく。


 ◇


 戦いの後、三人は肩で息をしながら岩に腰を下ろした。

 「ただの魔物じゃねぇ……人間を影に取り込んでるのかもしれん」ガルドが眉をひそめる。

 「もしそうなら……この先、もっと強い敵が来る」セリアが呟いた。


 リオンは拳を握りしめ、決意を胸に刻む。

 (彼らは俺を狙っている。なら、逃げるわけにはいかない。守るために……強くならなきゃ)


 遠く、山を越えた先に広がる王都の光が、薄霧の中にぼんやりと輝いていた。


 ――影の脅威は、すでに彼らの旅路を覆い始めていた。

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