パパ活?❼
「えっ、お姉ちゃん?」
反射的に言葉が口からでてしまう
「お、この人が前言ってた男の友達?かなりセンスいいじゃん。こういう人はね、優しいよー」
噛み締めるようにうんうん頷くお姉さんをもくずは強く否定する
「そんなんじゃないから。普通に友達」
「この方がいつものお姉さん?」
もくずさんは恥ずかしそうやや頷く
「いつものって?」
「その…お姉ちゃんの声が聞こえてるから…」
「あらーごめんねぇ。やっぱりねえ、演技って思ってても込み上げてくるものがあるんだよ。どう、可愛かった?」
肯定しても丁寧に断っても下ネタが始まりそうな雰囲気が漂っているのでだんまりを決める。もくずさんとの間にそういうものを持ち込んでしまえばこれからうまくやっていける気がしない
「私鍵学校に忘れてしまったから鍵貸してくれない?」
「はいはーい。多分8時頃には帰るから。力哉君とハメ外しすぎるなよー。あと避妊」
「ただの友達だから」
鍵を受け取り路地を抜ける。陶器のように白い頬が微かに気まずさを帯びていた
「…さっきのがお姉様で」
「うん。パパ活…っていうか身売りやってて」
頬はすっかり元に戻り、普段通りのもくずさんに戻る。
「お金のためにお姉ちゃんがやってくれてるの。バイトもだけどそれだけじゃ高校の学費が払えないから」
うちの学校は私立で1人1台のタブレットの導入や広いグラウンドなど充実した設備が整っている分学費は高い。とてもじゃないが普通の家庭では無理だろう。ならなぜここに、と思ってしまったが、それを聞くのはなんだか失礼な気がして
「そういえば力哉今日ずっと私の事見てたよね?」
気づかれていた…。完全にバレてないと思っていたのに。
「その、もくずさんがパパ活やってるって噂聞いて、本当かなって思って」
「そう…さっきの通り私じゃなくてお姉ちゃんだよ。顔はそっくりだけどね」
もくずさん同様に女性にしては高い背丈で高偏差値の顔面とほとんど同じだ。強いていえば、甘い目が魅惑な雰囲気なとこと…………胸。体育の瞳の言葉を借りればダイナマイト・オブ・ザ・マグナム。妹には無いものを姉は持っていた
「ならなんでもくずさんじゃないって否定しないんですか?」
「私のせいでやらせてしまってるのに、自分じゃないって言うのはなんか違う気がして」
もくずさんの声がいつもより冷たく響く
「幻滅した?」
「いや、もくずさんの家の事情は知ってますから。というより」
軽く息を吸い語気を強め
「第三者がバカにできるようなもんじゃないと思います」
小さいころ親の方針で数多くの本を読んだ力哉は世間一般の人よりそういったリアルな生活を本で体験しているので偏見がだいぶ薄い。おかげで今日見たものを凝り固まった偏見無しで見ることができた
「力哉って…」
もくずさんの目を見る。見たものを怯えさせる狼のような鋭い目は幾らか和らぎ、そちらもまた力哉の目を見ていた
「いい人だね」
「よく言われますよ。いい人止まりだって」
「ふ、ふふっ。かもね」
無邪気な微笑み。言われて嬉しいことを言われた訳では無いが、もくずさんの無邪気な顔を見るとどうもこっちまで頬が上がってしまう。狼が子猫に変わるその顔は鋭い牙以上の攻撃力を持っていた
「なー、一緒にご飯食べよーぜ」
手を流れ落ちる水の音に負けないバカそうな声が隣から聞こえてくる。狙ったのかたまたまか、颯太郎が泡を左右の手で擦っているところだった
「一緒に食べる人いるから無理」
あれから数日、お昼ご飯は瞳ともくずさんの3人で食べていた。どうでもいいような瞳の話に、適当な相槌打つだけだがなんだがそれが楽しくて、気づけば今日のくだらない話か楽しみにしている自分いた。
「いいや、君は食べるよ。作戦があるんだ」
「作戦?」
「そろそろ遠足があるだろ。遠足と言えばカップル。その作戦会議をしようじゃないか」
「カップル」と耳にし気持ちが揺らぐ。正直ちょっと作戦を練りたい…。この方、魔法使い折り返し地点まで来ているので………いや、そんなことより普通に恋人が欲しい。電気を消して枕に頭を鎮める時、子鳥のさえずりと共に枕から頭を離す時、最近寂しさを感じてきた。去年までは自由を心から謳歌していたのたが、最近はやれることをやり尽くしてただただ人肌が恋しくなってきた。あんまり意識はしないが家で、もくずさんとしゃべることがあったため静かな時間を余計に強く感じてしまう
「……しょうがない。今日だけだぞ」
「さすが我が友。ほんじゃ7階階段で」
うちの高校は食事中移動禁止だが、そんなことは建前で皆机を合わせたり席を移動したりしている。暗黙の了解で他クラスへ行って食事をすることは無いが廊下にある椅子を使って食べる者もいる。そんな中で最近颯太郎から聞いた新たな食事場所が7階階段だ。7階から屋上に繋がる階段だが屋上は閉まっているので人が来ることがなく、ただ使われたいない階段だけがあるのだ。周りからは死角になっているし教室にも声は届かないはずなので良いとたまに勧めてきていた。
「悪いけど用事入ったから今日一緒にご飯食べれん」
「なんや女か?」
イライラ顔で俺を睨む瞳。その顔をは「彼女なし連合に入ってたのにいきなり彼女ができた」と言ってきたやつに向ける顔だけだろう
「普通に友達」
「あーね颯太郎か」
なんでわかったかはあえて聞かない。聞けば「だって力哉の男友達って颯太郎だけじゃん」と言われ心が壊れる可能性があるからだ
「あーあ、酷いねもくずさん。私たち置いてけぼりだって」
「「友達」となんだししょうがない」
「大人だねー。私にゃそんなことできないよ。ってことで力哉、明日なんか奢ってなー」
「金があればな」
「やったねもくずさん」
「いっぱい買って頂こう」
瞳と違って真顔でウンウンと頷かれるもんだから本当っぽくて怖くてしょうがない。何も言い返さず教室を後にし、廊下の椅子でご飯を食べている人を横目に見ながら7階の階段へ向かった
「よく来たな親友。まぁ飲んでけ」
手渡されたのはキリンレモン(ジュース)。玄人酒豪のように渡あいてくるもんだから一瞬お酒にも見えてしまう。開けるとプシュッと炭酸の弾けるが、少し音が小さい。量が少し減っていることからも飲みかけだろう、きっと買ってみて味がまずかったとかそこらだ
「それで作戦会議は?」
「明後日の遠足の場は金沢城公園。でかい城と兼六園が売りだ。学校的に地元の歴史に触れることも狙いのだろうが、んなことはどうでもいい。問題はだな、現地集合and現地解散なんだよ。時間さえ守れば誰と、どういうふうに来てもいいし、帰りにどこ寄り道しようがバレることはねぇ。つまり…女子だ!女子を誘って一緒に行けば金沢城公園の散策は自由行動だからそのまま回れるし、帰る時どこかカラオケでも行けばもうこりゃ間違いねぇよ」




