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海中もくず  作者: 椎名 園学


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5/9

友達?❹

海中=もくず

成績 優秀 銘柄 可愛いラクダが描かれたやつ12ミリ

(すきー。)

昨日の大雨で朝から空気はジメジメしている。部活が休みだったので弁当を食べ終えると俺はすぐ帰路に着いた。瞳は毎日、富山の家から親に送って貰っているらしく、一緒に帰る友達も居ない俺は1人歩いている…いつもなら。そう、今、俺の後ろにはもくずさんがいる。

「もくずさんって部活入ってるんですか?」

「一応囲碁将棋部に籍はあるけど行ってない」

「意外ですね。女子サッカーとかやっとると思ってました」

もくずさんは高身長でほっそりしている。顔や雰囲気などモデルをやっていると言われても信じてしまうほどなのでこれは意外だった

「うち貧乏だから初期費用かかる部活入れなくて」

(触れづらい…)

「そ、そうなんですか。ならかからない囲碁将棋はピッタリですね」

「けど囲碁将棋部はキモチ悪いオタクの人しかいなかったから1回しか行ってない」

もくずさんとの会話は色々爆弾が多い。貧乏といい、今でたオタク。力哉はなかなかのアニメ好きであり、X(Twitter)で盛り上がるようなアニメは大体見たことがあるし、歌もボカロ以外ほとんど知らない。フィギュアまでは行っていないものの、推しキャラのクッションが出た時は家族にバレぬようコンビニ配達で買おうか真剣に悩んだこともある

「もくずさんはアニメとか見ないんですか?」

爆発寸前の質問を力哉は勇気を出して聞いてみた。アニメ好きな人ではなく、わざわざオタクと言う言葉を使う人であるので、力哉がオタクとバレれば引かれてしまうかもしれない、だけど話が合えば盛り上がれるかと思い、聞いてしまった。

「うちテレビ無いから何とかエモンしか分からない。えーと(とら)えもん…だっけ?」

オタクでは爆発しなかったものの、貧乏で爆発してしまった…もう何を言えば爆発しないのか分からずただ頭を回す。何も思いつかなかった

「あ、そうです。確か虎えもんです」

オタクだとバレぬよう、アニメなど知らないという立場を懸命に表示した


「そういえば言っていたこの後の用事って何なんですか?」

阿呆な瞳と違い、もくずさんは理由があり弁当を食べていた。本人が言った通り部活無し、貧乏から推測するにバイトだと思われるが、この学校はバイト禁止だ。見つかれば半年間停学となかなか重い。

見つかれば即退学のタバコをやっている時点でその程度怖くないと思うが

「お姉ちゃんが今日もHするからって。だから昼に帰れないからお弁当食べただけ」

(あー地雷ふんだ…)

数秒会話が止まる。というよりずっと力哉から話を始め、もくずさんが答えるという形式だったので俺が言葉を止めれば、会話が消えるのは当然であった

家までは長い、次に何を話そうか考える。趣味を封印された上で尚且つ地雷を避けなければならない。

この短期間思いつくことなど無かった

「君ってさ」

もくずさんが沈黙を破る

「好きな食べ物とかあるの?」

(聞いたことがある。GDPや平均所得など使い物にならない指標が蔓延る世界でその国が貧困国かどうかを調べる方法は「好き嫌いがあるかどうか」らしい。生きるのに飢えている国では「嫌い」という概念が無く、食べるか死なのでそんな感情がわかないのだとか。この質問はそれを少し変えて聞いているのか?好きな物がある=食べ物の中に1位をつけている=食材を選ぶ権利は保有している=私は無いけど。君は良いね、と言いたいのだろうか…)

わずか3秒の間熟考に熟考を重ねる。

「昔はありましたね」

昔はあった=今はあなたと同じく貧乏だよ=味方だよ

とも取れるし、ただの考えすぎであった場合

昔はあった=今はない=大人になったので全て美味しく食べます。と逃げもある一手。

返事を聞いたもくずさんは首を傾げるだけだった

「…そう。特に好きな物とかないんだ。確かに君はなんでも美味しく食べそうだね」

(これは良かったのか?……)

この後会話は一切なくただアパートへ向かった。水を含んだ土は少しベタついていた


「緑茶とほうじ茶あるけどどっちが良いですか?」

イチャコラで部屋に入れないもくずさんを外で1人放っておく訳にもいかず部屋に入れる。胡座をかいたもくずさんはゴソゴソと鞄を漁りラクダ柄のタバコを取りだした。

「緑茶お願いします。あと吸っていい?」

「どうぞ」

古く寂れた窓を開け、早季節の生ぬるい風が入ってくる。換気扇のおかげで風向きは大丈夫であるが…自由に鳴くカラスと共に、少々淫らな声が聞こえてきた

「え、!!」

勢いよく扉を閉める。もくずさんと目が合った

「すいません!!!」

「いいよ別に、こちらこそごめんね。彼女いるのに聞かせてしまって」

「いえいえ……へ?」

身の覚えにないことを言われ、キョトン顔になる俺を見て、もくずさんもその澄まし顔をキョトンとさせた

「俺彼女いませんけど?」

「え?」

「え?」

「瞳は?」

「ただの幼なじみです」

呆気に取られたようで口をぽかんと開け僅かな息を漏らした。

「…ラブラブだったから、てっきり彼女だと思ってた」

「瞳は仲良くなると誰にでもあんなんで」

「私も友達になれるかな…」

冷えた顔で煙を飛ばす。

「もくずさんなら絶対なれますよ。瞳は馬鹿ですけどいい人なんで」

「なれれば良いだ」

もう一度大きくタバコを吸い。かなり長く吸ったあと唇をとがらせふーっと換気扇向けて吐き出す。煙は換気扇に流れていく

「君って友達?」

これまた色々考える必要がある言葉が投げかけらた

もくずさんは話す時基本表情を変えないので何を考えているのか分からない。これで「そうです」と答えれば「そんなふうに思ってるんだ。自意識過剰だね」って言われて詰むし、もし「違います」と正々堂々言おうものなら「私は友達だと思ってたのに、そうなんだ」と言われて詰む。酷い質問だ

けれさっきの熟考はそんなの良い結果ではなかったので一か八かにかけ「俺はそう思ってます」と答えた。

もくずさんは何も言い返さず。俺を見つめる

(しくじったか…)

「そう、友達なんだ。じゃあこれからよろしく君…いや、えーと力正(りきまさ)だよね」

「力哉です」

「よろしくね力哉」

いつも通りの低い声でそう言う彼女の頬が僅かに上がっていた気がして。

意識を取られていると沸騰したお湯がグツグツガスコンロに跳ねていた

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