くらげ➓
「どう思う?」
「いやぁ⋯顔つきは似てないな⋯」
先生の後を追い職員室へ向かう途中今さっきのことをずっと二人で話している。もくずさんとくらげ双子とは全く想像できない。クール系とオタクでは月とすっぽん、いや月とザリガニほど違う。顔が瓜二つのひとでさんの方が双子に見えてしまう
「もくずさんに兄弟がいるなんて聞いたこともなかったし」
力哉の頭には一昨日のパパ活のことがよぎったので黙る。もくずさんはそのことをそんなによく思ってないように見えたので下手に言って、もくずさんを傷つけるのは避けるべきだろう
幸いにも教室から職員室は近いのでタイミングよくで話を終えることができた。
ほとんどの先生がすでにホームルームを終たようで職員室は賑わっていた。年を取り目的が生徒の監督となっても遠足は楽しみなのだろう。
「ほんじゃ、プリントは水田さんに渡しておきますね。道とかは前配ったパンフレットに書いてあるから、これはあくまで緊急の予備で。もしコピー取りたいとかなったら先生に言うように」
軽い返事で職員室を出る。そんな紙いつ配ったかなと不安げな俺とは違い瞳はただただ明日の遠足が楽しみなようだ
「あ、明日あの颯なんちゃらも一緒に回るつもりなの?」
「多分」
「えー来んのかよ」
「嫌なのか?」
「嫌じゃないけど、アホっぽいから疲れるんだよね」
聞けば去年クラスが同じだったらしく二三度話したそうだがそこまで合わなかったらしい。
どちらもテストの点は似たようなものなので案外合うと思うのだが。まぁそんなこと言えば「私がアホだと?はい力、ケツバットかおごり確定な」とか言われそうなので黙っておく
「じゃ私友達待ってるから。もういくね」
そういわれ、気づけばもうクラスに戻ってきていた。鞄をぶら下げ颯爽と教室を飛び出していく瞳と同じ時、もくずさんも荷物をまとめて出てきた。俺の荷物も持って
「力哉帰ろ」
ここ数日自然と二人で帰っていたので言葉にして誘われるのを新鮮に感じてしまう
「ありがとうございます」
受けとったリュックを背負い、校門を目指す。が何か忘れている気がする⋯
鞄は持ってるし、あーくらげか。
けど同じクラスでありながらくらげのことを一言も話さなかったことを考えると、聞いてよいのか迷ってしまう。ひとでさんのこととかで世間一般の家庭環境ちは異なるので、くらげとももしかしたら何かあるのかもしれない。熟考しながら階段を降り、二階の出口へ歩んでいく。力哉がそうしているせいで二人の間に会話は無かった。
校門を抜けたところでもくずさんが口を開き沈黙を破る
「覚えてる?お菓子買いに行くの」
「へ、あ⋯もちろん覚えてますよ。駅前のとこですよね」
⋯⋯⋯自分で誘っておいたのに完全に忘れていた。
「ならよかった」
反射的に忘却の音が出てしまったが、もくずさんには気づかれなかったようで、微かにうれしそうな顔をしている。今は遠足のことを考えようとくらげのことは置いておく。
大雨のよき以来のスーパー。やはり前は天気と時間帯のせいだったようで客層は普段どおりだ。けど主婦たちに紛れちらほら同じ学校に制服が見える。力哉と同じ考えの人は案外多いようだ
色とりどりの旬の野菜が並ぶところを通りお菓子が置かれている棚に進む
「力哉和菓子好きだったよね」
棚の入り口付近に並ぶ和菓子コーナーを見て言う
「えぇ。けど遠足には向きませんね」
遠足で重宝されるのは一個単位の饅頭よりは皆で分けれるよう複数個入った洋菓子などだ
力哉は和菓子が好きであるが別に洋菓子が嫌いというわけではない。わざわざ自分で買わないが食べる機会があればおいしく食べる。チョコ⋯いや行く途中に溶けてしまうか、ならクッキーにしようかと焼き菓子がかたまる方を探すとちょうどもくずさんが濃青色パッケージのクッキーを手に取っていた
「私これにしようかな」
月をイメージに作られたそれは、誰もが一度は口にしたことのあるメジャーなやつで共有するにはうってつけだ。
「それおいしいですよね」
「力哉これ好きなの?」
「最近は食べなくなったけど昔よく食べてました」
「じゃあこれにしよ」
もくずさんがクッキーを選んだ。同じクッキー類だと受けが良くなさそうなので、何か他に良いものを。
焼き菓子の隣にハイチュウが見えた。俺はすこし優柔不断気味なので考えてしまう前に何か選ばないと時間がかかってしまう。ハイチュウだけだと瞳がなんか言ってきそうなのであと何か一つ買おうと、周りを見渡す。特にこれというものは見えないがその代わり、もくずさんがぼーっと何かを見ているのが見えた
「珍しいものでもありました?」
「ううん。昔好きだったのがあったから」
目線の先にあるのは赤、黒、緑の繰り返し配列の歌舞伎揚げ。力哉は和菓子の中でも饅頭や団子などの生菓子が主に好きだけど、もくずさんはそれ以外の半生菓子、干菓子も好きなのかもしれない
「お姉ちゃんが好きで一緒によく食べたんだ」
懐かしそうに歌舞伎揚げじまじま見つめ、袋を手に取るがふと値札に目をやる
「370⋯」
もくずさんは瞳を下げ、そっと歌舞伎揚げを棚に戻した
「買わないんですか?」
「買おうかと思ったけどお金ないからいいや」
歌舞伎揚げの値段は210円と干菓子として妥当な値段。特段気にするようなほどじゃないと思うが、
「これとクッキーだと300円超えるし」
「そういうところきっちりしてるんですね。なら俺が買いましょうか」
力哉が買ってもハイチュウと足せば300円は超える。けど力哉やそこまで規則を重く見いてないし、何よりもくずさんの悲しそうな顔を見て買ってあげたくなってしまった
「いや、いいよ。力哉も超えてしまうし」
「なら二人で出し合って買いません?そうしたらどっちも300未満ですよ」
もくずさんは少し悩み、「じゃあ」と了承した
申し訳なさそうな顔の中にうっすら現れた喜悦に力哉も喜んだ




