24:山頂の戦火
24:山頂の戦火
山の尾根を越えようとしていたとき——
空の奥から、低く響くプロペラ音が鳴り始めた。
「……っ、あれ、ヘリ……?なんであんな低い高度で…」
リリコが見上げると、政府軍の紋章が刻まれた小型ヘリが空中に浮かんでいた。
次の瞬間、機体の側部から複数のロープが垂らされ、兵士たちが次々に降下を始める。
その数、五人。
身のこなしと装備の質から、精鋭部隊であることが明らかだった。
彼らは着地と同時に言葉もなく包囲を開始する。
「――来たか」
ロイスの呟き。
その声に、リリコの顔が青ざめる。
「まさか……あの端末のせいで……?」
ロイスは黙って頷いた。
ヘリが“捜索”ではなく“制圧”を目的としている。
その意図は明白だった。
◇戦闘のはじまり
銃声が響く。
政府軍の兵士が放った弾丸を、ロイスは寸前でかわし、瞬時に敵の懐へと踏み込む。
拳一つで相手の体を地面に叩きつけた。
「リリコ、動くな」
短く命じた声の直後、ジンが抜刀する。
鋭い鞘走りの音とともに繰り出された斬撃は、空気を裂くような速さだった。
その一撃で兵士の銃は弾き飛ばされ、相手は地に這う。
「……えっ……」
リリコは唖然とした表情で、その光景を見ていた。
ロイスの戦いは冷徹で、無駄がない。
ジンの剣術は流麗で、美しさすら漂わせていた。
だが、リリコには動けない理由があった。
兵士の制服、装備、声。
それらが、彼女に「彼らが自国の人間である」という事実を突きつける。
そして、彼らの目にはリリコが“救出対象”として映っている。
裏切り者ではなく、まだ「庇護すべき者」として——
(わたし……こんな……本気でぶつかれない……!)
◇戦闘の終結とリリコの動揺
戦闘は、数分と持たなかった。
ロイスとジンが、音もなく兵士たちを無力化していた。
しかし、その静けさの中で、リリコの胸には重たいものが残る。
「……どうして、こんなことに……」
ぽつりと呟いた声に、ロイスが視線を向ける。
だが彼は、何も言わなかった。
代わりに、ジンが無邪気な声で口を開く。
「強くなるしかない。迷ってる暇なんて、もうないんだよ」
その言葉に、リリコは小さく目を見開いた。




