表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/51

20:兵士の矜持と眠る者

20:兵士の矜持と眠る者


夜の闇に包まれた、瓦礫と空き家の一帯。


風が吹き抜け、どこか遠くで鉄が軋む音がかすかに響いていた。


ロイスは、相変わらず静かに眠っていた。


——そしてその間、リリコは動いていた。


部屋の灯りはない。


暗闇の中、足音を殺し、呼吸すら抑えて、敵の影をひとつずつ追っていく。


銃声は、一発も響かない。


リリコは迷いなく、急所を狙って撃ち抜いた。


(……騒ぎになったら、もっと来る。だから一撃で仕留める)


闇に紛れ、床を這うようにして敵の背後をとる。


パンッ——!


消音器のついた銃が、小さく火花を吐いた。


敵は声を上げる間もなく崩れ落ちる。


数分も経たぬうちに、マフィアたちは全員沈黙していた。


リリコは、銃を下ろし、小さく息を吐いた。


部屋の隅には、回収した装備品と現金の束。


彼女はそれを見つめ、渋い顔をする。


「……最悪だ。私、いつからこんなことまで……」


本来、兵士とは“守る側”だった。


治安を維持し、命を守る立場だったはずだ。


だが今の自分は、追われる存在。


そうでなければ、ロイスと生き残ることすら叶わなかった。


【翌朝:目覚め】


瓦礫の隙間から差し込む朝の光が、眠るロイスの顔を照らしていた。


まるで「もういい」と囁くような、優しい陽の気配。


ロイスはようやく、まぶたをゆっくり持ち上げた。


「……ん、ん……」


最初に見えたのは、重たい顔でこちらを睨んでいるリリコだった。


隣には、マフィアから奪った銃や装備の束。


その空気を察したロイスは、ほんの少しだけ困ったように笑う。


「……なんか、悪かった」


「アンタ、また寝たら二度と起きないかもって自覚ある?」


「……はっきりは分かってないけど、そういう気はしてる」


ロイスはゆっくりと上半身を起こし、寝ぼけ眼のまま苦笑した。


「前も、一回……起きるまで三日かかったことがある。だから……使いすぎたら、戻ってこられなくなるのかもなって」


「だったらもっと慎重に使え。私がいなかったら今頃、誰かの荷物になってたぞ」


ロイスは、うつむき気味に呟いた。


「……ごめん」


その謝罪に、リリコはしばらく黙った。


彼女だって、極限状態だった。


人を撃ち、金を奪い、そうしなければ守れない命を背負っていた。


でも、それを誰かに責められるのは、ごめんだった。


「……礼の一つくらい言いなさいよ、バカ」


ロイスは少しだけ、微笑んだ。


「……ありがとう…」


その一言に、リリコは不意に視線を逸らした。


瓦礫の隙間から射す陽光が、ふたりを淡く包んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ