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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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悪への制裁と正義の境界

「あなた達の故郷、あとどれくらいで着きそう?」


 エイミーの言葉にシェスカさんが抑揚のないトーンで返す。


「急げば丸半日、なに、もうへこたれたわけじゃないでしょうね?」


「へーきよこんくらいっ。 けどヤバくなったら、そん時ゃフォローよろしくっ」


「わ、わかったわよ。 なんか調子狂うわね」


 2人の……というよりエイミーの変化に気づいたラウムさんが私に問いかけてきた。


「ノエルさん。 彼女、シェスカへの応対がだいぶ柔らかくなっているが昨夜なにか……」


「どうなんでしょう? わかりませんっ」


「そうか、なんにしても俺やロウさんの悩みの種が1つ解消されるのならなによりだ」


 不意に視線を送るとロウさんはなにかを悟ったかのようにフッと笑みを浮かべた。

 なにがあったか特定をしてはなくてもなにかあったってことは気づかれてるみたい。


 それにしても半日とはいえ到着する頃は日没との話だから急がないと。

 みんなしてペースを上げる中、シェスカさんも余裕が出たみたいで前向きな言葉が出た。


「いい感じね、この調子なら日没前には」


「魔物も今日は少ない、なんなら正午過ぎには……待て」


「ラウムさん?」


「嫌な気配がする……」


 その言葉に全員で周囲を見渡すと1人、2人と茂みの中から姿を現してきた。

 あるものは刃をチラつかせ、あるものは弓を構えながら。


 間違いない、野党だ。 その中のリーダー格の大男が前に出ながら口上を述べる。


「アンタら、旅団かなんかかい? それなら運がなかったねぇ……金目のもんと命を置いてきな」


 話で聞いてた以上どこかで遭遇するとは思ってたけど数は7人……アゼルさん達は軽装だから安全を確保したい。

 どうしようかと考えているとロウさんが袖から有り金と物資を手に男の前へ出た。


「わかった。 ではこうしよう、彼らはまだ若い、ゆえにどうか私の所持品と命で手を打ってほしい」


「考えてやらんでもない。 前へ出ろ」


「ロ、ロウさんっ!」


 私が叫ぶとロウさんは「気にするな」と言いながら男の前へ出る。

 ダメだ、どうにかしないと。 でもどうやって……動揺していたその時それは起こった。


「チェリャアァァァッ」


「ゴフッ!」


 一瞬のことだった。 地面に手をついたのと同時に風素を利用しての踵落としで大男を一撃の下に葬っていた。


「ボスッ、テメェっ!」


「罪なき者の物資のみならず生命も脅かすのなら、相応の覚悟できようなっ?」


 その勢いでロウさんは更に2人を絶命させた。

 その様子を見ながらエイミーが軽口を叩きながら後方からシェスカさんを狙う野盗に向けて弓を放つ。


「あちゃー、こりゃロウさん珍しくマジでキレてるわね……はいそこぉ」


「ぐぁっ……なぜ気づいた」


「あたしゃ狩人出身なの、アンタの狙いなんてお見通しよ。 その腕じゃもう弓持てないんじゃない?」


「赤毛さん、あなた……」


 エイミー、よかった。 シェスカさんに対する見方間違いなく変わってる。

 昨日アゼルさんが話してくれたのは無駄じゃなかった。


 ホッとしてるのも束の間、残党が3人で私に刃を向けながら距離を詰めてくる。

 詠零術あるから怖くはないけど、ここは調査隊のみんなと親睦深めなきゃね。


「アゼルさん、ラウムさん、できる限り高濃度の雷素撒いたら離れて」


「だとさラウム、巻き込まれんなよ?」


「誰に向かって言ってるんだ?」


 2人が安全圏へ下がったのを確認し、纏わせた熱素ごと剣を振ると焔の奔流が全ての雷素を巻き込んだ。 


 吹き飛ばされた男達はアゼルさん達より細い私に恐れ慄いていた……なんなんでしょうかね?


「な、なんだこの女。 こんな火柱、それも詠唱もなしにっ」


「こんなこと私は言いたくないですけど……先に手を出してきたのはあなた達です。

 2度と両腕が使い物にならなくなっても、恨まないでくださいね?」


 私の言葉を男達は侮ってるのか、3人で囲みこむように広がった。


「減らず口を、相手は華奢な女だ、全員でかかれっ」


「ノ、ノエルっ」


「大丈夫だよエイミー。 ロウさんの言うように相応の報いは与えるから……タアァッ!」


 地面に剣を刺し、意識を集中させながら広範囲に流動する泥を発生させた。

 私に男達が斬りかかろうとした刹那、液状のそれは拳へと硬化し、手にしていた凶器を一斉に弾く。


「解放者さんこれって、これも英霊術なの?」


「まぁ、そんな感じです。 さて、いいですかみなさん、お仕置きの時間です」


 私は記憶を頼りにリュミアさんのやり方を真似る要領で泥から無数の拳を生成し、3人の野盗を空中に打ち上げながら乱打を浴びせる。


 浮遊してる状態で殴られ続けるのは水中の渦を漂う無数の石に当てられるようなもの。

 無事でいられる保証はまず……ない。


「う、腕がぁっ」


「クソッ、なんだコイツバケモノかっ」


 男達は立ち上がる様子もなく両腕をダラりと垂らしてる。

 肩からの腱は絶った、その手が動くことはもうない。


「これがノエルの本気、ルーシーと手合わせしたのと全然違う」


「セリガムとのやりとりの際は時を止められたゆえ認識できなかったが、さすがと言ったところか」


 私が、というよりはこんなものを編み出したリュミアさんがすごくて仕方がない。

 水を求めたからとはいえ、生への渇望はここまでのものまで生み出すのかぁ。


 呑気に呆けることしばらく、野盗達が再び立ち上がることはない。

 よし、このまま当初の目的通り……と亡国跡地へ歩みを戻そうとするも、アゼルさんは短刀を引き抜きながら倒れ込む男達の前へ歩み寄った。


「ま、待って、いったいなにをっ……」


「なにって……こいつら殺すんだよ」


 制止するように呼び止める私へ振り返りアゼルさんは淡々と言い放った。



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