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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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冷たい仮面の過去

「ここなら安全そうだ、今日はここで夜を明かすとしよう」


 魔物の来ない安全であろう位置に目星をつけたアゼルさんは手早くテントを張った。

 その様子を見ながら私とエイミーはただただ感心してる。


「ずいぶん慣れてるのね」


「まぁな、北で調査隊なってからこういうのは珍しくなかった。

 場合によっちゃ野盗か魔物の活動域どっちかの近くで野宿っつぅ究極の選択もあったな」


「あたしは狩人出身だけあって魔物の活動域のがマシね」


「確かに、悪意ある人間より怖いものはないもんね」


 魔物はエイミーの弓術、そして今や詠零術があるから普通の魔物くらいなら……と思ってる横でラウムさんとシェスカさんが遮るように現実を口にする。


「そうとは言い切れない」


「そう、なんですか?」


「ああ、安心して寝るには罠を張らなきゃいけない、だがそれをかいくぐられたり破られては終わりだ」


「野盗に襲われかけてダメかと思った時でさえ罠を逃れた魔物のおかげで逃げおおせたってことも……なにが起こるか分からないものよ」


 漠然と旅に憧れてはいたけどこうして聞くと危険と隣り合わせという現実の厳しさが垣間見えた。


 それから私達は軽く食事を終え、交代で見張りをしてから眠りにつくこととなった。

 私の班はエイミーとアゼルさん、ロウさんの班はラウムさんとシェスカさんだ。

 

 班と休む順番が決まるなりロウさんが申し訳なさげに伺いを立てる


「2人とも、いいのか? 我々が先でいいのか?」


「いいのいいの気にしないで? きっとロウさんが一番疲れてるだろうから」


「エイミーの言う通りですよ。

 本当にまずい状況の時は起こしますからゆっくり休んでください」


 ロウさんは今回の任務のメンバーの中で最高戦力。 万一魔物や野盗が出ることを考えると備えとして万全を期しておきたい。


 私達、便利屋組と同じように調査隊の方でもラウムさんとシェスカさんがアゼルさんへ気遣いを示していた。


「じゃあアゼル、後は任せた」


「解放者さんと赤毛さんのサポートよろしく」


「わぁーってるよ。 安心して寝とけ」


 ロウさんを始め3人がテントに入り、私達は焚き木を囲みとりあえず腰を下ろした。


「さぁーて、見張り、頑張りますかぁっ」


「エイミー、こういう状況で一番息巻いてる人ほどうっかり寝ちゃうものだから気をつけてね?」


「平気よ、朝からずっと疲れた感じしないもの」


 元気アピールするエイミーにアゼルさんが珍しく砕けた笑みを見せた。


「そりゃ頼もしいな。 頼りにしてるぜ」


「まっかせなさいっ」


***


 見張りを始め約2時間、木を燃やす火がパチパチと音を立て、月が輝く空の下でテントの外で1人分の寝息が立っていた。


「寝ちまったな」


 小声で呟くアゼルに釣られて私もつい口走る。


「寝ちゃいましたね。 もぉーエイミーったらこれだよ」


 焚き木の暖かさに抗えなかったのか、見張りを初めて1時間でエイミーは案の定寝てしまっていた。

 き、気まずい、なにか喋らないと……と思うも調査隊のみんなとは知り合ってまだ3日、声をかけようにも言葉に詰まる。


 どうしたものかと夜空を見上げる中、沈黙を破ったのはアゼルさんだった。


「シェスカのこと、悪く思わないでやってくれ」


「悪く? ……あっ」


 一瞬なんのことかと思うも、それが初日のことだとすぐ理解できた。

 私を推し量る発言について深く気にしていたみたい。


「あいつ、元からあんなやつじゃなかったんだ。 元々素直でみんなに笑顔振りまくやつでさ」


「そう、だったんですね」


 意外、とも思いかけたけど今日ロウさんの前で見せた涙、あの姿は確かに根っこが素直でなければ表に出ないものだと理解できた。

 いったい彼等の過去になにが……と思いを巡らそうとするとアゼルさんは私を見てなにか感じたのか、重い口を開いた。


「原因は10年前だ。 新たに台頭した大臣の意向で税が全員一律という政策になった」


「全員一律のっ? そ、そんなの無理に決まってますっ!」


 彼等の故郷の過去に対し、政策の内容が内容だけに思わず大きな声を上げてしまった。

 そんな私の反応を想定していたかのようにアゼルさんは話を続ける。


「当然無理だ。 俺達中流の者や低所得の者は毎月の納付に喘ぎ、金持ちはいい思いをする。 そんな状況が続けばどうなるか、わかるな?」


「税すら払えない時が来る……?」


「あぁそうだ。 そして払えない者は役人に報酬額が高い代わりに地獄の様な労働に出されるかぶん殴られるか、亡命するかしかなかった」


「そんな選択、どっちにしても辛すぎます」


 今の話を聞くにシェスカさんだけでなくラウムさんの寡黙さもそれらの過去が要因であることは想像に難くなかった。


 アゼルさんは、自身達に起こった決定的な事件について話す決心を固めたのか、視線を焚き木から私へと移した。


「両親はやむを得ず高収入の仕事に希望を見出して家を空けるもとうとう帰って来なかった。  

 それから間もなくしてまだ幼かった俺達の身にも降りかかってきたんだ。 あの地獄のような日々が」


 今のアゼルさん達の人格を決定づけた過去。

 それは便利屋の仲間達しか知らない私にはあまりにも重く、悲しいできごとだった。

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