力の証明
「使用武具は模造剣、どちらかが1発でも当てたら勝負あり、さぁ始めましょう」
「なんか私の力を証明するためとか言いながら楽しんでない?」
「だってノエルちゃんのような子猫ちゃんと戯れるなんてなかなかない機会だもの」
トホホ、証明しろだなんて言うもんだからウチのお姉さんノリノリだよ。
けど私からしたらとんだとばっちり、恨みますよシェスカさん……にしてもルーシー今のは冗談が過ぎるよ。
「パフォーマンスだけど今のは言い過っぎっ」
単なる手合わせだし剣も殺傷性ないから思いきりいっちゃおうかな、お互い様ってことで。
「うりゃあぁーーっ」
「遅いわ」
「当たらないってっ」
真上から捉えてくるのは見え見えっと。
多段転移してこないあたり今のは軽い探り合い、それでも調査隊にとっては超次元な光景に見えたのかあれだけ私を値踏みしてたシェスカさんが一番に驚きの声を上げる。
「ウソでしょ? あの女性一瞬で違う位置へ、いやそれよりも解放者さん、なんであんなすぐ対応できるの?」
「不意打ちの定石は真後ろか真上ですから」
私の回答を確かめるようにラウムさんがアゼルさんに尋ねる。
「なぁ、今のアゼルなら避けれたか?」
「いや、見失った時点でジエンドだ」
意気消沈する2人にルーシーがドヤる。
「気に病まなくていいわよ、私が強すぎるだけだから」
「ほんと、詠零術つかってもこれだもん。 ルーシーは強いよ」
「こぉーらノエル、今ルーシー褒める場面じゃないでしょ。 アンタの実力測ってんだから全力出しなさい」
そんな風に私を鼓舞するエイミーをシェスカさんが奇妙な視線を送ってる
「ていうかアンタ解放者のなんなのよ」
「マブよっ、アタシとノエルの繋がりには親といつかできる彼氏さん以外割って入れやしないわっ」
「まさかの同性愛?」
そういうんじゃないって……とツッコもうとするもモニカの一言でまたややこしくなる。
「ねぇねぇシェスカ姉、どーせーあいってなに?」
「……あぁーーもうっ、アンタがモニカの前で余計なこと言うからややこしくなったじゃないのっ。
モニカ、こういうのは後10年知らなくていいんだからね?」
またいつもの茶番始まった。 まぁこのままじゃ私の実力とかも確かめようないよね。
「ルーシー、ここからは探り合いなしだよ?」
私の宣言にルーシーは「じゃあ、本気でいくわね」と答え姿を消した。
周囲を見渡す、後方かそれとも真上か、どちらを見てもその姿はなくあさっての方向からその声は聞こえた。
「いつから不意打ちは後ろからだけと勘違いしてたの?」
「っ! 危なっ」
どうにか皮一枚で避けるもすぐルーシーは姿を消した。 次が来るっ。
「隙ありっ!」
「一周回って後ろからっ?」
ダメだ、このままじゃ体制直す間に一撃もらう。 あまり披露したくなかったけどやるしか……っ!
「ふんっ」
どうにか回避できた、アクアストンプは跳びたい方向を狙えるから都合がいい。
今度はアゼルさんが信じられないものを見たかのように目を見開く。
「英霊術を、詠唱なしでだとっ? あり得ねぇっ」
「そのあり得ないことが俺達の目の前で起きている。 シェスカ、俺達は彼女を侮りすぎていたかもな」
侮ってたとか、それもそれで過大評価。
そんなに持ち上げられても……。
「困るってーのっ」
勢い任せで新たに水柱を垂直に噴射させて凍結させる。
それと同時に案の定ルーシーが転移で飛んできた。
「水遊び? 汗かいてきてたからありがたいわね」
「そっかぁ、じゃあ風邪には気をつけてね?」
ニンマリ笑いながら私の頭は下を向き、水氷で凍った水柱を蹴飛ばして重量を加速させる。
落下の速度は勢いを増し、互いの剣身が軋む。
「もぉ、ノエルちゃん重いじゃない」
「私が太ってるみたいじゃない……っの!」
「ふふーん、いらっしゃい」
「遠慮なくっ」
着地と同時に一度距離を取り、一気に接近するとルーシーは転移することなく剣を構える。
私が大きく振りかぶったのと同時にその姿が消える。
「かかったわね」
そう、さっきのはフェイク。 私はルーシーの罠にかかった……と調査隊は思ったに違いない。 けど……。
「気づいてるよっ」
振り返りながら振ると後方に現れたルーシーの剣を捉えた。
転移を見破るのは非常に困難……それが初見であるのならば。
「やっぱノエルちゃんには通用しないか」
「何回側で見てきてると思ってるの?」
この時私とルーシーは互いに加速と転移を組み合わせながら剣を弾き合う応酬となっていた。
その様子を見ながらアゼルさんが呆然とつぶやく。
「な、なにが起きてんだ……」
「なんてことないわ。 互いに剣を弾き合ってるだけ、それも素早くね」
「なに当たり前に言って……」
「当たり前のことよ。 あたしはその2人のすごさを間近で見てきたんだもの」
ルーシーとの模擬戦は私の力を推し量る域に収まらない熱量に達し、どちらが一本取るかともはや目的が変わってきていた。
「ノエルちゃん、これ以上は泥試合じゃない?」
「私も同じこと考えてた。 それじゃここらでおしまいにしようか」
「そうね、それじゃいくわよ……」
直後、ルーシーは右へ、後ろへ左へ真上へと次々と転移を繰り出し始める。
かく乱しての一打に懸けるつもりか。
彼女を知らない者ならなにもわからずやられるけど身内の私ならどこで仕掛けてくるかわかる。
私はルーシーの右半身だけに意識を向けて注視、その数秒後一瞬だけ右腕を曲げた状態の姿が視界に飛び込んできた。
「そこっ」
私は加速で回避と奇襲を同時に図り、そしてその剣先はルーシーの首筋に届かんとしていた。
心の中で確信する。 この試合、勝ったっ!




