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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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調査隊、北の国からはるばると

 アーシェスの農地の再生から1ヶ月して1枚の通知書が届いた。

 封の内容は聖都からアーシェスへの物資提供が正式に決まり私達は安堵を覚えた。


 あれから私達は聖都でイリスさんにアーシェスの現状を話した。

 するとイリスさんは「すぐ動きましょう」と言い『損壊村民救済委員会』なるものを設立し、目算で余る分の物資は優先してアーシェスへ届けるという案が可決された。


 実はこれは厳然なる協議ではなくほぼイリスさんの独断で始まったと言ってもいいものだったりする。


 ***


「アーシェスの灰まで……流石は解放者さんというべきでしょうか」


「いえ、そこはノータッチで……」


 あまり持ち上げられるのは好きじゃない。

 それも解放者とか、私たいそれたことしてないのに。


「そんな謙遜しないでください……それはともかく、農地が復活したとはいえこれから数ヶ月1人の行商人に頼るのは確かに酷な話ではあります。

 ですのでこれはどうでしょう、この街に来る物資の毎月余る目安の量をアーシェスへ届けるというのは」


 イリスさんの言葉にルーシーは珍しく眉を動かす。

 誰1人置いていかない、ルーシーの想いは常にそこにあるからか迷いなく答える。


「合理的でいいですね。 では早速議会の方へ……」


 とルーシーが進言しようとしたところで耳を疑う言葉がイリスさんの口から聞こえてきた。


「それには及びません。 これは私の一存ですので」


 イリスさんの言葉にいつもながらエイミーが『珍しく敬語』で異を唱える声をあげる。


「ちよ、ちょちょちょ、さすがにイリスさんといえど個人の一存で決定を下すのはさっすがにマズイのではないかと……」


「大丈夫ですよエイミーさん、これを……」


 イリスさんはそう言いながら立ち上がり棚から『10法全書』なるものを広げると1ページ目にこう記されていた。


 *** 第1条1項 万に一つ大政法官が国民の意志や秩序に反することを独断で取り決めようとした際、周囲の者は為政者や市民問わず糾弾を示すことを義務とする ***

  

「イリスさん、これを制定したのは……」


「えぇ、他ならぬ私自身です。 自身の意見を通すからにはそれが理に適っていることが前提であり、そうでないなら人々から厳然たる指摘を受けなければならない」


 10法全書、それは絶対に覆せず従わざるを得ない法律書。

 そしてイリスさんを含めて大政法官が道をそれた場合は周囲の者が厳しく非難することをあえて『義務』としてる。


 大きな権力を有しながら自身を監視下に置くなんてルーシーでさえここまでできるか、なにが彼女をそこまでそうさせるのか……いや、今は詮索なんてしてる場合じゃないか。


「アーシェスを、お願いします」


「えぇ、職業こそ違えど便利屋精神は私も同じです。 後は任せてください」


 ***


「いやぁー、にしてもアーシェスがお先真っ暗にならずに済んで本当よかったわ」


「ほんとそう思う、マーカスさんやティティアちゃんの涙はもう見たくないもの」


「アーシェスの任務、本当の意味でこれで依頼完了ね……ってどうしたのロウさん?」


 ルーシーの問いに珍しくロウさんがわかりやすくふてくされて紅茶をすすっている。


「アーシェスなら私だって縁あろう。 なのに留守番とは、解せぬ」


「仕方ないわよ。 こないだの一件はロカムもまたいでの案件だったもの、転移がひっすだったわ」


「そういうことであるなら致し方あるまい。

 ん、客人か? 店長」


 ノックの音にロウさんが気づくと店長が開けるよう促す。

 今度はどんな依頼……かと思いきや武装をした男女3人が入ってきた。


 その目から交戦の意思はなく私は客人として対応した。


「こんにちは、便利屋ハート・ユナイティスです。 なにかお困りでしょうか?」


 細身の剣を腰に下げた男性は私をいちべつするなり確かめるように問いかけてきた。


「アンタか、開放者と呼ばれてる便利屋は」


「えっと、どうもー」


「街2つ呪いから救ったと聞いてどんなすごいヤツかと思って来てみたが……」


 彼の言葉に隣の女性が同調するように続きを述べた。


「ずいぶんと頼りないのね」


「あはは、どもー」


 彼等が私を値踏みする言葉を言い終えるのと同じくして机を激しく叩きながら立ち上がる音が聞こえた。


「なぁんですってぇーっ」


「ちょ、エイミー……」


 エイミーはまっすぐだ。 それ故ファミリーのことになると熱くなりがちなわけで……。


「誰だオメェ」


「解放者のマブよ、彼女のこと間近で見てないのによくそんなことしゃあしゃあと言えたわねっ」


「近くで見てたかの言い様だな」


「見てたわよ、ゼロ距離でっ」


 エイミーそれはさすがにウソ……とどうにか止めようとする私より早くロウさんが割って入った。


「やめんか2人ともっ。 私の先輩が失礼した。

 客人よ、なにやら気が立っているようだが話を聞かせてくれぬか?」


 ロウさんの対応に彼等は一礼した上で名乗りを上げた。


「礼を欠いた態度して悪かった、アンタの言う通り焦りで気が立っていた。

 俺はアゼル、そこの2人はシェスカとラウムだ」


「まぁ、頼りなさそうなのは本当で……」


「シェスカッ!」


「ごめん」


 このアゼルって方、第一印象はアレだったけど話が通じれば分別ありそう。

 様子を少し見るとアゼルさんが私のとこへ歩み寄ってきた。


「2度も礼を失して済まない。  解放者さん、俺達は元々西の大陸にいて5日前に北の大陸から渡ってきたばかりだ」


「はて、西の大陸……えっと、なにかの団体サマでしょうカ?」


 つい最近聞いた話と共通するものがあり妙なざわつきを覚えるのと同時にアゼルさんが胸ポケットから紋章が記された札を出した。


「ノーザンレイスからのスノーガリア共和国より派遣された国家調査小隊だ」


「こ、こここ国家ちょーさ、たいっ?」


「各地を騒がせてる組織『九つの希望』の引き起こした事件を2件、その他1件未知の事件を解決したという実績を見込み協力の進言をしたい、どうか頼む」


 うろたえる私を余所にアゼルさんは丁寧にひざまずいてのお願い、なんか思った以上に噂が一人歩きしてない?

 ど、どーしよおぉーーーーっ

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