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リベレーター・元生贄と絶望から咲いた希望たち  作者: モッフン


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生まれ変わる農地、希望という種

「ノ、ノエルさんじゃありませんか」


「マ、マーカスさん?」


 農地に戻ると、種蒔きを残して作業はあらかた終わっていた。 村の外まで仕事に出ていたマーカスさんが、私の姿に気づくなり手を握りながら、心配していたとばかりの様子を浮かべる。


「裁判の件が耳に入り、ずっと身を案じていました。信じていましたとも、ノエルさんが罪に手を染めるわけがないと」


「えっと、なんか心配かけたみたいですみません」


 当たり障りなく言葉を返そうとするも、マーカスさんは構わずに続けた。


「心配しましたとも。なにせ新聞に大々的に『解放者が国家へ牙を?』と載ってたんですから」


「ちょっ、マーカスさんその、解放者とはどちら様で……」


「どちら様もなにもノエルさんのことでしょう。あの後サイラの街を救ったのがあなたと知った時はおったまげましたよ」


「いや、あれは仲間たちと力を合わせてできたことで、私一人では街は守れなかったです。ところで近況の方はどうですか?」


 誤魔化すように、というより誤魔化す魂胆増し増しで仕事の話を尋ねると、ルーシーが懸念した通りのことが語られた。


「実は、どうにか奮闘してはいますが、村代表しての資金繰りがもう厳しくなってます。収穫までにはまだ数か月かかりますし……」


 その言葉を聞き、私は断言せずにはいられなかった。


「安心してください。福祉について、とても頼りになる人を知っています。この村の人は、誰一人犠牲にさせませんから」


「ノエルさん……なにからなにまで、本当にありがとうございます」


 マーカスさんが安堵の表情を見せる中、彼は思い出したように、興味深い情報を含む話を語りだした。


「お礼にというわけではありませんがこれは土産話でして、同業者からは面白い話が聞こえてきましてね。

 西の亡国を調べるために動いてる『調査団』という団体が、有能な便利屋を探しにこの大陸に向かっているとか、 もしかしたらノエルさんにお声がかかりそうですな」


 こ、これは……面倒ごとが起こりそうな予感。

「そ、そうなんですねぇ……ガンバラナクチャデスねぇ……」


「ノエルさん?」


「失礼しますっ」


「エイミー、ルーシーっ」


 休憩がてらお茶をしている二人の元へ駆け寄ると、私に気づくなりギョッとした顔を見せた。なんとなくではあったけど、戦々恐々を顔に出していたのが自分でもわかる。


「どしたのノエル、そんな怖い顔して」


「怖いってひどっ……じゃなくて実はさぁ……」


 詳しい事情を話すと、二人はあっけらかんとした様子で答える。


「つまり、その『調査団』から依頼される可能性があるわけね」


「ってことはノエルちゃんの手がかりの範囲が広がるだけでなく大きいお金が動く。いいじゃない」


「よくないよルーシー、エイミーもなに冷静に分析してるのさー」


 調査団って名前からして、政治的もしくはそれに準ずる立ち位置だよね?  困るよそんなの、私ただ記憶と解呪の手がかりが欲しいだけなのに。


「取り乱し過ぎよノエル。まだその団体がこっちに来たわけじゃないんだし。それに、ガルムの巣穴に入らねばガルムは得られない……でしょ?」


 望むものを手に入れるには相応のリスクが伴う。それは確かにそうだ。 オルフィナさんの書から始まり、詠零術や奥の手も、危機的状況に置かれて得ることができた。ピオスで平穏な任務に明け暮れていたら、今もどうなっていたか……。


「覚悟しなきゃってことだよね。あーぁ、私死ぬまでに何回腹括るんだろ」


 途方に暮れボヤく私にルーシーは優しい言葉と共にティーカップを置く。


「何百回。私もそうしてきてるわ」


「そうなの?」


 ルーシーほど胆力のある人でもそうなのか、と意外な気持ちと共にどこか安心したのも束の間、返ってきた言葉で私は呆れ返った。


「お人好し店長のことだから、今月もきっと赤字。 だけどなんとかしてみせる……ってね」


「初めてルーシーのスケール感が小さく見えたよ」


「店の存続に関わるんだから大事なことよ?」


 規模が違うだけで大事なことは店も村も変わらないのかもしれない。

 

 ***


「今回はロンドさんのお陰で助かりました。 村の方もとても感謝してましたよ」


「よせやい、そりゃお互いさまって奴だろ?」


 こうして謙遜する振る舞いからロンドさんがいかにいい人かがわかると同時にこの後のルーシーがいかに抜け目ないかがわかる。


「そういうことなら困った時は優先的にウチにいらいくださいな」


「優先もなにも最寄りだろ? 自ずとそうなるさ」


「それもそうね、それじゃ」


「村のみなさんによろしくーっ」


 挨拶を済まし私達はピオスへと続く街道をあるく。 転移で跳べば一瞬だけどルーシー曰く「今日、もう、無理」らしい。

 畑整えるのは戦闘とはまた違った体力使うからその上4人での転移がキツいのも無理はないか。


「そういやモニカ、ティティアちゃんとなにか約束してなかった?」


 エイミーの問いにモニカが満面の笑みで答える。


「解放者さんの活躍もっと知りたいって言ってたからせんげんしたんだ。

 エル姉の活躍を小説にするって」


「モニカ、それ書くのは構わないけど私の名前は出さないでね?」


「え、なんで?」


「恥ずかしい以外理由なんてある? ところでルーシー、明日早速聖都に」


「そうね。 後手になるほど声は届きにくくなるから速やかに」


 イリスさんのことだから意見も通るし反対の声も出ないだろうけど、それが可決されるまでに何日かかるか……大丈夫かなと気がかりでいるといつものごとくエイミーが私の考えを見破ってきた。


「ノエル、もしや「村への救援、すぐ行われるかな?」とか1人で背負いこんでるでしょ?」


「う、当たらずも遠からず」


「あたし達が明日お願いするのは貧困に喘ぐフェイス君やノエルの冤罪を払う手立てしてくれたイリスさんよ? なにも心配ないわ」


 今思えばエイミーが断言する時は本当に希望が見えてる時が多い。

 だからだろうか、胸の内のつかえが自然と消えていく。


「エイミーが言うんだからきっと大丈夫だね、信じるよ」


「エル姉のこういう人間らしく悩むとこもせきららに書こうかなー」


「……やめなさい」

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