宿る想い、残留思念
「ロンドさんよ、アーシェスの農地は再生できると思うけ?」
バロッツさんの問いにロンドさんは迷いなく答えた。
「ちゃんと蘇りますよ。 聖都に送ってたというだけあって土もいい」
「ありがとうございます。 確かロカムの野菜も聖都に渡ってるんじゃったな」
「えぇ、ですから復興してからは我々は良きライバルですな、ハッハッハ」
農作業なんて懐かしいな、今でこそその大切さわかるけど故郷にいた時は父さんや母さんにいやおや言われながらいやいややっていたっけ。
それにしても、こうしてみると私達が依頼として関わった人達が手を取り合うのはとても嬉しい。
こういう優しさから優しさへ連鎖する世界になればいいな。
「みんなの笑顔、これで戻りそうだね……ってどしたの?」
アーシェスが本当の意味で復興することを喜ぶ私の傍らでルーシーはいやに神妙な顔を浮かべていた。
「確かにこの村は新たな始まりを切れる、けど手放しに喜べない……なにを言いたいか2人なら分かるわよね?」
「実るまで何ヶ月もかかる……」
「ってことは豊作になるまでマーカスさんって人が頑張らなきゃいけないわけよね? まずいじゃないっ」
「場合によってはフェイス君のような境遇の人がまた生まれかねない……すぐに手を打つべきね」
その言葉の意味をすぐに理解できた。
新たに貧困から盗みに走る人が生まれる仕組みを潰すべきと。
その対策ができそうな人は、やっぱりあの人しかいない。
「この後イリスさんとこ行こう」
「そうね、あの人なら安心して任せられるわね」
社会的弱者を救うことが組織の原動力なら、私達が別の形でも救えるということを示せれば説得の余地もあるかもしれない。
セリガムさんがやりたかった善ってきっとこういうことなんじゃ……そんなことを思った瞬間それは起こった。
「ペンダントが……これは、セリガムさん?」
私の想いに応えるかのように青黒い明かりが灯っては消えてを繰り返している。
ただの霊素にしては妙な現象に私はルーシーの元へ駆け寄った。
「ルーシー、作業中なのはわかってるけどその……」
「なにか確かめたいことがあるんでしょ? 行ってらっしゃい」
「っ! ありがとっ」
さっきの現象が以前起こったのと同じだとしたら、もしかしたらあの場所でなにか掴めるかもしれない。
私は逸る気持ちを抑えながら足を進めた、リーナさんの眠る墓地へと到着した。
「リーナさんお久しぶりです。 今日はロカムの農家さんも手伝ってくれてのアーシェス再開拓に来ました」
手を合わせて祈ると不思議な感覚に包まれるのがわかる。
それはリーナさんの墓石とセリガムさんの処刑場からペンダントになにかが流れ込んできたのと全く同じもので一般的な霊素とは明らかに違った。
少し前にリュミアさんから言われた「お前さんの中に誰がいるんじゃ」との言葉を思い出す。
もしかしてこれって、残留思念?
またアーカイブに寄ってみるかぁ。
そんなことを考えながら私は新開拓の農地へと戻るのだった。




